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第71話 新学期

   


 久しぶりに寮で1人朝の支度をしていると、学園が始まったんだなぁと実感するものである。約2ヶ月あった夏季休暇も終わりを迎え、今日から新学期だ。


「おはよう、ラウル君〜」


 教室に入って前の席のラウル君に声を掛けた。もはや、朝の恒例になりつつある。


「おはようございます、アリス様っ」


「課題はどう? 多かったけど、無事終わった?」


「はい。皆より早く寮に戻ってこれたので、バッチリ終わらせる事が出来ました」


 そう小声で囁くと、えへへと笑ったラウル君なのだった。



「アリス、ラウル。おはよう」


 声の聞こえた方を振り向くと、サラとミレーユが一緒に登校してきたようで、 こちらに向かって歩いてきていた。


「2人ともおはよう。サラは頑張って仕上げた課題、ちゃんと持ってきた?」


「あぁ、勿論。あの残り1週間のラストスパートは、当分忘れられそうにない……」


 ふ……と、遠い目をしながら笑ったサラである。


「サラ様は課題、そんなに苦戦されたんですか?」


「ラウル様、聞いてくださる? サラったら、休みが明ける少し前に、こっちに戻ってきたはいいものの、課題が全然終わってなかったのよ?」


 ミレーユが呆れたように、全くもう、と言いながら話す。


「実家に帰ると、つい騎士訓練の方に集中してしまってな……いやー、皆に手伝ってもらって助かったよ」


 サラがこちらに戻ってきてから、シェリとミレーユと一緒に慌ててサラの課題を手伝ったのは、いい思い出になりつつある。



 その内にシェリも混ざって、あれこれ休暇中の話をしていると始業のチャイムが鳴った。


 ガラッと教室の扉が開き、グレイ先生がポリポリ頭をかきながら、眠そうな様子で現れた。


 ……先生、さては休みボケしてますね……?


「ふぁ〜……よぅ。2ヶ月ぶりだな、お前ら。元気にしてたか? まずは整列して、始業式に行くぞー」



 新学期という名の、後半戦がスタートである。




 ────────────────




 始業式を終えて教室に戻ってきた私たちは、グレイ先生からテストの日程表を渡された。


 うぅ、分かってはいたけれど、来週からすぐテスト週間になるのか……



「紙は後ろまで行き渡ったか? 来週から前期試験がスタートだ。テストについての詳細は、各科目ごと今週の授業の時に話があると思うから、それをしっかり聞いとけよ〜」


 ふむふむ、と先生の話を聞きながら、私は日程表をペラッとめくった。


 筆記試験のみが【歴史学】【語学】【魔法学 入門】、実技試験のみが【魔法学 実践】、筆記と実技のどちらもが【魔法薬学】【魔法石学】のようだ。



「俺の担当する魔法学実践の実技試験は、お前らも1番気になってるやつだろうな。本来なら授業時間中に説明するもんだが……ま、担任だし先にザックリ伝えとくか。森での実技試験は、チーム制で行う」


「チーム」


 先生の言葉をポツリと繰り返す私。ほうほう、個人戦じゃないんだ。


「6人で1つのチームになってもらう。んで、チームの皆で森の中の決められたルートを歩いて、無事帰って来い。以上」


 ……本当にザックリですね?


 それだけ聞いてると、もはや、ただの肝試しになっちゃうんですけど……?


 クラスの皆も「え、それだけ……?」と、少々混乱気味である。あの、あまりにも情報が少なすぎます、先生。


「グレイ先生? あの、つまりクラス内でチームを組んで、森の決められた通路を歩いて戻ってくるだけでいいんですか? 魔法はどこで使うんでしょうか?」と、ミレーユが挙手をして質問する。


「お、いい質問だな。ルールの1つとして、各チーム1人1回は必ず魔法を使わないと失格だ。まぁ、使わなきゃ到底無理な場面に出くわすから、そんな事(失格)はないとは思うけどな」


 わぁ。使わなきゃいけない場面に、絶対出くわすのかぁ……


「先生、チームはどうやって決めるんですか?」と、クラスの子が質問する。


「あー、たしか各クラスごと、担任が決める事になってる。属性で偏りが出るのもよくないから、バランスを考えてチーム分けをするように言われてんだよな。どこのチームだから有利だ不利だ、がないように配慮しろと、上からのお達しだ」



 なるほど……じゃあ、好きなメンバーでチームを組めるっていう訳ではないのか。いつものメンバーで組めたら変に緊張しすぎなくていいと思ったのに、残念である。


「アリス様、同じチームだといいですね……」


「うん……でもラウル君と私って属性の数が一緒だから、可能性はかなり低いよね……」


「……はっ!? たしかにっ……」


 絶望的な状況に、あぅ……と、項垂れる私たちなのだった。先生はそんな私たちを見ながら、ニヨニヨとしている。


「ちなみに俺はまだチーム分けやってねぇから、頼みたい事があれば、それなりの姿勢で話に来いよ?」


 ま、それが叶うかどうかの保証はないけどな〜と、カラカラと笑う先生は、魔王か何かなのかな……と思うレベルであった。機会があったら学園長にリークでもしようかな、この先生……


「そういえば、マーク。お前、このオリエンテーション終わったら、1人ちょっと残れ」


「え? あ、はい」



 突如魔王に居残りを命じられた私は、オリエンテーションが終わって、皆が教室を出て行く中、ポツンと残る事になったのだった。


 シェリ達には、先に帰って大丈夫と伝えておいたからいいんだけど、一体何の用事だろう……


 そんな事を考えながら待機していると、グレイ先生は私の方を振り向いて、不思議そうな顔をした。


「お前、休暇中に何かしでかしたのか? 学園長が直々にお呼びらしい」


「が、学園長がですか!? な、何にもしてないですっ! 犯罪とかにも手を出してませんっ!」


 ブンブンと思いっきり頭を横に振る私である。……が、一瞬休暇中の魔獣と新魔法の件が頭をよぎった。もしかして、学園長の耳にも既に入ってらっしゃるのか……!?


「それ、完全に犯人側が言うセリフだぞ……ま、学園長室に行けば何の用事か分かるだろ。んで俺はお前が場所分かんないだろうから、案内してやってくれと頼まれてんの。ほれ、行くぞ」



 学園長と一対一で話すなんて、心の準備が出来てないですけど……!


 まさか新学期早々、学園長との面会が始まるとは、全く思ってもみなかった私なのだった。


 

いつもありがとうございます(*´꒳`*)

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