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第70話 不思議な出会い

 



 アリスとフォルトがダンスを踊っている同時刻。


「なっ……どういう事ですのっ……!?」


 踊る2人を見つめながら、驚愕の表情を浮かべるレベッカ。それを、ルネは冷めた目で見ながら悪魔のように微笑んだ。


「ほ〜んと、表面上でしかアリスちゃんの事を知らないんだね、キミ。今日の夜会での令嬢としての振る舞い方、アリスちゃんは完璧だったよ? ていうか、そもそもダンスを見れば一目瞭然でしょ」


「う、嘘よ……」


「才能や家柄は、ひけらかすものじゃないよね? ここぞというときに、自然と滲み出るものなんだから、ねぇ?」


 顎に手を当てながら、そう言ってクスクスと笑った。


「……っ!!!」


 ルネの言葉を聞いて、何も言い返せなかったレベッカは、行き場のない怒りの感情からか、カッと顔を真っ赤にする。ルネをキッと睨み、更には踊る2人の姿を鋭い視線で見つめると、何も言わずに勢いよく方向転換し、足早に去って行ったのだった。


「え〜挨拶もなし? あの子、まじ超怖い」


 言動とは裏腹に、とても楽しそうな表情のルネである。



「さ〜てと。アリスちゃんには黙ったままで悪いけど、俺もちょっとここから離れさせてもらっちゃおっと」


 そう呟き、フラッと人混みに紛れていったのだった。




 ────────────────




「今日の舞踏会は、私史上1番楽しくて、有意義かもしれません……」



 無事ダンスを終えた私たちは、飲食ブースへ戻ってきていた。私はプチスイーツが綺麗に盛られたプレートを見つめて、はわぁ……と感嘆のため息をつく。


「アリスティアの満足度のほとんどを占めているのは、王宮料理だろうな」


 フォルト様は、ちょっと揶揄うようにそう言うと、プレートに乗っていた小さなショコラを、喋ろうとした私の口に、ヒョイと入れた。


「ん!? んぐ、こんな所でお行儀悪いですよっ……!」


 王宮スイーツは、流石の美味しさですけども。私はモグモグとしつつ、口に手を添えながら、何とも言えない表情でフォルト様を見た。


 ……これはあーんという行為でして、普通は公共の場でやらないものなんですけど、ご存知ですかね……!?


「皆、ダンスや会話に夢中だ。誰も見てないなら、問題ないだろ?」


 そうしれっと言いながら、私が勧めた鴨のコンフィを食べるフォルト様であった。


 おぅ、見られてなければいいスタンスとは、中々肝が据わっていますな……?


 私の場合、もし見られていたらフォルト様を狙ってる女の子に、後ろから刺されるかもなんですけどね?



 何とも言えない複雑な表情で、スイーツに手を伸ばす私なのだった。




 ────────────────




 フォルト様と王宮料理を堪能した後、私は一度、メイク直しとお手洗いに、パウダールームへやって来ていた。


 諸々が済んで出てきた私は、突然肩をポン、と触られ、背筋が一気にピーンと伸びる。さっきフォルト様ファンに後ろから刺されるかも、なんて考えてたので、尚更驚いたのであった。


「ひょわー!?」


「あっ……ご、ごめんなさい……驚かせてしまいました……」


「はわ、いえっ、こちらこそ、変な声をあげてすみません」



 ……あれ?


 この方、シェリとレベッカ様に続く、3人目の殿下の婚約者候補のステファニー・フィゾー様だ。確か私と同じ侯爵家のご令嬢だったはず。


「あの、最近は体調があまり良くないと伺ったのですが、お身体は大丈夫ですか?」


 体調が安定しない為、学園も休んでらっしゃるんだよね。そっとステファニー様の様子を見つめると、病的な青白い肌をしているし、顔色もよさそうではないので、心配である。


「……はい。今日はどうしてもお会いしたい方がいて、少し無理を言って来てしまって……」


「会いたい方……殿下ですか?」


 フルフルと軽く首を横に振ると、「もう済んだのでいいんです」と、ほんの少しだけ微笑んだ。


 私が小首を傾げていると、そっとステファニー様が近くに寄り、私の耳元でこう囁いた。



「 森に気をつけて 」



「え?」


「すみません。もう迎えが来ているので、お先に失礼しますね」


 私がポカンとしている内に、ペコリと頭を下げて、足早に出口へと向かっていったのだった。


「どういう事……? ステファニー様って、もしかして預言者……?」



「そんな奴いる訳ねーだろ?」


 横から呆れた声が聞こえて、私はえっ?と横を向いた。


「ニャ、ニャーさん……ですよね? 潜入捜査でもしてるんですか、その格好」


 よぅ、と軽く手を挙げて、私の声に答えたのは、ウェイター姿の、恐らくニャーさんである。


 そもそも私は、普段フードですっぽり顔を隠しているニャーさんの素顔を、ちゃんと見た事がない。今は黒髪黒目の、あまり特徴のないウェイターになっているが、これも変装してるから素顔という訳でもないのだろう。


「舞踏会の特別警備っつー事で、特殊メイクも使って変装中なんだよ」


「なるほど、お疲れ様です。でも何で皆、気配を消してこっちに近づくんでしょうかね……」


「あの女の気配は、別に普通に分かったけど? あーさんが鈍ちんなだけじゃねぇの?」


「それは否めないですけどね……! それより、ステファニー様の不思議な発言の方が気になります……『森に気をつけて』なんて、わざわざコッソリ伝える意味があったのかな……」


「何かあの女、やけに距離が近いなと思ってたけど、あーさんそんな事言われてたのか」



 少し思案したニャーさんは「あーさんに関係した森っつったら、実技試験で行く森の事じゃねぇか?」と、呟く。


「確かにステファニー様は私の1個上の先輩ですから、実技試験で森に行く事もご存知だとは思いますけど……じゃあたまたま会ったから、アドバイスをくれたって事ですかね?」


「にしては、なーんか意味深な感じなんだよな……とりあえずあーさんは、気にしすぎない程度に気にしとけ」


「……どっち!?」



いつもありがとうございます(*´꒳`*)

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