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第68話 再会

 



「あ、でも待って。アリスティア嬢1人じゃ危ないから……」


「は〜い。俺が一緒にいますよ〜」


 エヴァン様の声を遮るように、横からピョコッと手を振って現れたのは、お久しぶりのルネ様である。今日は夜会仕様なのか、いつもの1つ結びではなく三つ編みにして、光沢のあるリボンを一緒に編み込んでいる。


「え〜アリスちゃん、夜会のドレススタイルも超可愛いじゃん。今日の舞踏会は、紫とピンクの妖精がいるって噂で持ちきりだよ〜?」


「あ、ありがとう? というか、もう帝国での用事は終わったんだね」


「うん。ずっと帝国にいても、課題が終わらなくて困るからね。向こうでの用事はさっさと終わらせて、昨日こっちに戻ってきたとこ〜」


「お疲れ様でした〜 じゃ、久しぶりのエタリオル料理を一緒に食べよう! エヴァン様、もしシェリが私を探す事があったら、ルネ様と飲食ブースにいるとお伝えいただけますか……?」


「……あ、うん、分かった。聞かれたら伝えておくね」


「ありがとうございます、よろしくお願いしますっ」


 エヴァン様にペコリとお辞儀をして、私とルネ様は飲食ブースへと移動したのだった。



 ────────────────



「えぇと……帝国の同級生男子は、セーフ? アウト?」


 エヴァンは、近くに控えていたウェイターからグラスを1つ受け取り、ほんの小さな声で呟く。


「フォルトにしてみりゃ、どれもアウトだろ?」


 黒髪のウィッグをワックスでまとめた、どこにでもいそうなウェイターに変装していたティーグル(ニャーさん)は、軽く頭を下げながら、横を通り過ぎるエヴァンに小声で返事をしたのだった。



「しゃーねぇな。めんどいけど、一応それとなく見とくかぁ」


 チッと舌打ちすると、ティーグルはクルリと向きを変えて、移動し始める。


 気配を消しているのか、ウェイターが舌打ちをしてそんな事をボヤいているのに、周りは誰も気がついていないのであった。




 ────────────────




 夜会の飲食ブースは、毎度の事ながらほとんど人がいない。こんなに美味しそうな食べ物が沢山あるのに、なぜ皆食べないのか……勿体ないと思うのです……


 まずは、プレートに少しずつ載せてもらったピンチョスや、サーモンのマリネなどの前菜を頂く。んんん、やっぱり王宮の料理はどれも格段に美味しい。


「そうだ。ミレーユも参加してると思うんだけど、もう会った?」


 コクンとリンゴジュースを飲み込んだところで、私はルネ様に問い掛けた。


「あ〜、エタリオルの研究者の方とのお喋りに夢中だったみたいだよ? ミレーユ嬢は真面目だからな〜 俺はご令嬢達とお喋りしてたんだけど、アリスちゃんとエヴァン様をたまたま見つけたから、こっちに来ちゃった」


「ルネ様はその内また、すぐご令嬢に捕まると思うよ……? それまでの猶予時間で、ご飯を食べといた方が賢明だと思う」


 はい、と私は前菜のプレートを渡す。ちなみに私はローストビーフに進んでおります。



「あ、捕まるのはもう確定なのね……? まぁ可愛い子は大歓迎なんだけどさ、パワフルな子はちょっとねぇ〜」


「パワフル……物理的に強いって事?」


「サラ嬢みたいな強さじゃなくてだよ〜? こう、恋愛気質って感じの、グイグイ強気で来る子って意味なんだけど……って、そういえばサラ嬢は?」


「サラは実家に帰ったから、舞踏会には参加してないの。実家が遠いからね……って、ん? もしかしてサラ、舞踏会に参加したくなくて、その前に実家に帰った……?」


 可能性あるなぁ……


 ただでさえサラは、ドレスも帯剣出来ないからって理由で、あまり着たがらないし。


「そっかそっか。あ、ほらあの子だよ。殿下の婚約者候補なんじゃないの〜? 俺にもだったけど、色んな男に絡んでるじゃんね?」



 ルネ様の視線の先には、金髪の髪を豪華に巻いて、普段以上に華美なドレスアップをした、レベッカ様だった。わぁ、いつも以上に眩しい。


「んん? レベッカ様、珍しく赤のドレスじゃなくて青のドレスだ。でも、やっぱり要所要所は金色で刺繍してる……」


「あの子、原色好きそうだもんねぇ」


 妙なところで納得するルネ様である。というかそれ、偏見なのでは……?


「レベッカ様と目が合うと、(最終的にはルネ様が)取って食べられる恐れがあるから、私はご飯に集中するね?」


「なになに? 蛇とカエルみたいな感じ?」


「私、つい最近もレベッカ様に出会う機会がありまして、冷たい視線をいただいたもので……わ、この鴨のコンフィすごく美味しい。食べやすくカットもしてくださってるから、いくらでも食べれちゃうな……」


 私がニコニコと料理の感想を告げると、ありがとうございます、と料理人の方も微笑んでくれた。



 暫くほのぼのと、ルネ様と一緒にビュッフェを楽しんでいたのだが、少し離れたところから、よく通る声でレベッカ様に名指しを受ける。


「あらマークさんたら、こんな人気のない場所にいらしたの? ダンスの1曲くらい、そろそろ踊られたらいかがかしら?」


「え、ちょ、まだデザートに進んでないんですけど……」


 ここからが大事な局面なのに……としょげる私。


「アリスちゃん、気にするところそこなの? ていうか最初にアリスちゃんが踊ってた事、あの子知らないんだね。ま、あのダンスを見てたなら、あんな強気で声なんて掛けられないと思うけど〜」


 女の子には優しいと定評のあるルネ様が、珍しく顔をしかめている。


「ん〜、遅れてきたんじゃない? なら殿下とシェリのダンスも見てないって事だから、火種は少なくて済みそう……」


 よしよし、と1人頷く私を、ルネ様は横目で見つめながら「本当変わってるんだよねぇ、アリスちゃんって」と、割と真剣な様子で呟くのだった。



「じゃ、折角だし俺と踊ろうよ〜」


「え? ルネ様と?」


「そそ。俺、言っとくけどリード上手いよ?」


 ありがたい話だが、エヴァン様に、フォルト様が来るまでは、ダンスを控えておいた方がいいと、謎のアドバイスを貰ってるからなぁ……


 でも今踊らないと、レベッカ様の気も済まないだろうし、どうしよう……



「アリスティア」


 悩んでいた私の後ろから、聞き慣れた声が響いたのだった。



いつもありがとうございます(*´꒳`*)

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