表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/160

第67話 舞踏会の妖精

 


「あれ?」


 私は瞬きをして、入場してきたシェリのドレスを見返した。


「え……? このドレスって、シェリと色違いっ!?」


 シェリのドレスは、ほとんど私と同じデザインで、色がほんのりと赤みのあるピンク色だった。よくよく考えたら、私がラベンダーでシェリがピンクって、お互いの目の色じゃないか。


「いいわねぇ〜シェリちゃんも結局ピンクにしたのね。アリスとちょうど対になっている感じが、尚更可愛いわ〜」


 そう母様が呑気に話している横で、私は何とかご令嬢スマイルを保ちつつも、心の中は早くシェリと話したい気持ちでいっぱいなのだった。



 招待された貴族全員の入場も済み、陛下のご挨拶をもって、舞踏会は無事開幕した。


 尚、この舞踏会を開催するにあたり、首都魔獣出現の一件も加味されていて、今まで以上に王宮警備は手厚くなっているそうだ。魔法師の方も来ているとの話もあり、さすが王宮である。



「アリス!」


 シェリがニコニコとしながら、こちらに歩いてきた。


「シェリ! ドレスの事知ってたの? 私、何にも知らなくて、すごいビックリしたんだけど」


「もう。アリスったら、普段からドレスの事は全然気にしないものね。私は母様から聞いていたわよ?」



 どうやら母様とナディアナ様(シェリの母様)が、同じタイミングでドレスを作るなら、お揃いのデザインにしようと提案し始めたらしい。母様とデイジーの意味深な発言が、ようやく腑に落ちた私なのだった。


「ね、でも色はピンクでよかったの? 殿下の色を入れた方がよかったんじゃない?」


 私はコソコソとシェリに小声で問い掛けた。


「私はいいのよ。この色、アリスの瞳の色にそっくりでしょう? 今まであんまり試した事のない色だったけれど、すごく気に入ってるの。それに……今日はあの方もいらしてるし、なるべく火種は撒きたくなくて」


「おぅ……」


 あの方ってレベッカ様の事だよね。


 もう1人の婚約者候補の方は病弱との噂で、あまりお見かけしない方だしね……



 そんな話をしている内に、ダンス用の音楽が流れ始め、会場の中心となっているダンスホールに少しずつ人が集まり始めた。


「こんばんは、シェリ、アリスティア嬢」


 夏仕様の正装に身を包んだ殿下とエヴァン様が、私たちの所へ歩み寄ってきた。私とシェリはお辞儀をして、挨拶を返す。


「こうして2人が並んでいると、本当に花の妖精みたいだねぇ。フォルトも早く見たがってると思うよ」


 エヴァン様はそう言いながら、感心したように私たちの格好を眺めた。


「そういえばフォルト様って、今日は殿下のお側にいらっしゃらないんですね?」


「王宮警備が増えたという話をさっきしたろう? その関係で、ちょくちょく現場に駆り出されちゃってね。交代制だから、また後で会場に戻って来たら、その時には会えると思うが……」と、私の疑問に殿下が答えてくれた。


 なるほど、フォルト様も大変だなぁ……せめて美味しい料理をチェックしておいて、戻って来た時にオススメしてあげよう。



 私がビュッフェを見つめながら、そんな事を考えている内に、殿下はやっぱり最初のダンスのパートナーにシェリを選んだ様子であった。


 それは勿論、当然の流れだとは思うけれど、そんな2人の様子を見て、レベッカ様はどんな表情をしてるんだろうか……そう考えると、恐ろしくて顔を見れない私である。


「火種はたしかに撒きたくないだろうけど、シェリの場合は火そのもの(殿下)が自らやってくるからなぁ……」


 殿下にエスコートされて、ダンスホールへ向かうシェリに笑顔で手を振り、私はそう小さく呟いたのだった。



 2人を見送ったあと、周りから何となくチラチラと視線を感じる。何なら隣にいるエヴァン様からも、遠慮がちな視線を感じるのだ。


 あ、分かります、分かりますとも。


 お前は踊らないのか、何なら踊れるのかって事ですよね?


 実際のところ、舞踏会といえど必ずしも全員が踊らなくてはいけない、というルールはない。基本的には男性の方から女性を誘い、OKを貰ったらダンスへ、という流れになるのである。


 今までの私はというと、誘われる前にそそくさと帰っていたのがほとんどで。誘われても何かと理由をつけて、お断りしてたんだよね。


 そんな事を繰り返していたら、そりゃ私のダンスの腕前なんて、誰も知らないに等しいだろうなぁ……もしかしたら、どうしようもない位に下手だと思われている可能性大だ。


「……えーと、エヴァン様? 私のダンスについて既に変な噂があるかもしれませんが、私、人並みには踊れます。大丈夫です。滅多なことがない限り、足は踏みません」


 私が真顔でそう説明すると、エヴァン様はブフッと軽く吹き出した。


「……っ失礼しました。では本日は、ダンスにお誘いしても?」


 そう言って、おどけながらエヴァン様が手を差し出してきた。私も今年で15歳だし、この世界では大人の仲間入りだ。子どもだからという理由はもう通用しないだろうしね。


「はい、よろしくお願いいたします」


 差し出してくれた手を取って、それまでの脳内葛藤は何処へやら、なんて事はないかのように、私はダンスホールに立ったのだった。



 ゆったりとした曲調のワルツが始まった。エヴァン様のリードに身を委ねて、私はふわりふわりとドレスの裾を揺らす。ターンの時は足取りを軽く、舞うように心がける。


 1つ1つの所作を丁寧に、柔らかく行うのが私のダンスのモットーだ。ガチガチにポーズを決めるより、自然体が1番だと思うから。


 会場内では、至るところからほぅ……と感嘆のため息が漏れる。


 私はご令嬢の微笑みを崩す事なく、ターンをする。殿下とシェリのダンスに華を添えられたら、今日のダンスミッションは、クリアといっても過言ではない……!


 ……驚くことなかれ。方向音痴で鈍臭い私だけど、ダンスはそこそこ得意分野なのである。


 まぁ、段々疲れてくると元々の鈍臭さが出てくるという問題点が、実はあるのだけども。なので終盤では足を踏み外さないように注意が必要なのは、ここだけの話である。



 曲が緩やかに終わりを迎え、私とエヴァン様は、お互いに向かい合ってお辞儀をする。


 周囲からは、溢れんばかりの拍手が鳴り響いた。やっぱり殿下やエヴァン様、シェリが踊ると、会場は盛り上がるよね、と1人頷く私である。


「アリスティア嬢は、これからキチンと毎回夜会で踊った方がいいと思うよ? 皆の目の保養の為にもね」


 エヴァン様は周囲をチラッと見回すと、困った様に笑いながらそう話したのだった。


「えと……? これから精進します……?」


「あ、でもフォルトが来るまでは、上手く断っておいた方がいいかも。ていうか、フォルトを差し置いてアリスティア嬢と踊っちゃった僕、大丈夫かな……」


「? じゃあ私は、ひとまず戻ってくるフォルト様を待ちつつ、ビュッフェに勤しんできますっ」



 私はエヴァン様のアドバイスに疑問を浮かべつつも、返事をしたのだった。


 とりあえず……王宮ビュッフェ、楽しみだ……!




いつもありがとうございます(*´꒳`*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ