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第64話 特待生の内緒話

 



 マーク家に戻ってから数日経った頃、私は1人で再び学園を訪れていた。課題の調べ物と、魔法薬学の試験当日に使うハーブをどれにするか実物を見に来たのだ。


 もしローラン先生がいたら、ダメ元で少しだけ採取してもいいか聞いてみようとも思っている。……というのも、家にもハーブ自体はあるのだけど、試験当日に使うハーブは学園に植えてあるものに限定されているのだ。同じ条件下で成功するか、出来れば休暇中に試してみたかったんだよね。


「ひとまず、ローラン先生が学園内にいらっしゃるかどうかを確認しないとな」


 私はいそいそと飼育場へと向かったのだった。



「失礼します……ってあれ? ラウル君だ」


 室内飼育場の扉を開けると、そこには作業着姿のラウル君がいたのだった。


「アリス様! こんにちは、お久しぶりですねっ」


「久しぶり〜! ラウル君のお家って遠いんじゃなかったっけ? もうこっちに戻ってきたの?」


 キャッキャとお互いに手を合わせたところで、私ははて、と小首を傾げた。


 まだ夏季休暇が始まって1ヶ月程である。あともう1ヶ月は、休暇があるぞ?



 あっ、しまった! という顔をしたラウル君は、アワアワと私に耳打ちしてきた。


「あのですねっ? あんまり大っぴらにしてないらしいんですけど、実は特待生優遇というものがありまして。希望者は寮に残ったり、僕みたいに休みの途中から、寮を利用する事が出来るんです」


 ほうほう、と耳を傾けながら頷く私。


「そうだったんだ。確かにその制度、初めて聞いたかも。貴族の子まで寮で過ごしたいなんて言い出したら、キリがなくなっちゃうもんね」


「僕みたいに家が首都から遠いと、魔法関連の調べ物をしたりするのも、結構一苦労なので有難い限りです」


 ラウル君、さすがは特待生だ。


 勉強の事とか色々考えてて、偉いなぁ……


「しかもですねっ? アリス様、すごいんですよっ! 学園内のお仕事を手伝うと、ちょっとだけ賃金をいただけるんですけど、尚且つ食事も提供していただけるんですっ!」


 途端に目をキラキラとさせて、熱く語るラウル君である。


 待て待て。これ、内緒話なんじゃないのか。心なしかテンションも高いし、声も大きくなってるぞ。


 でもそれって所謂(いわゆる)(まかな)い付きのすごくいいアルバイト先だな。


「じゃあラウル君は、飼育場のお手伝いをしてる感じなんだ?」


「主にはそうですね。僕の場合は、ローラン先生から指示をいただいているので。あとは、ハーブ園のお世話もしてますよ」


「あ、そうだ。ハーブ」


 ハーブ園の話が出てきて、私は当初の目的を思い出した。ラウル君に、ここにやって来た訳を話すと、一緒に先生の所へ行ってくれる事になったのだった。




 ────────────────




「なるほど。沢山じゃなければ取っても構いませんよ。ただ持ち出しは許可していないので、今回は特別に、私の研究室で作業をしていってください。折角なので、ポトリー君もよかったらどうぞ」


「「えっ、いいんですか?」」


 私とラウル君は、ちょっと驚きながら声を揃えて返事をする。先生はそんな私達を見て、フフと笑った。


「休み中に生徒の作業用教室を開けるのは、ちょっと面倒なんですよ。マークさんとポトリー君なら特A生徒で、作業自体も問題なさそうですしね」


 すごい子は、何故かハーブを爆発させるんですよ……と先生が小声で呟いたのを、私は聞き逃さなかった。



 大丈夫です。私、流石にハーブは爆発させません。


「そうだ。それならついでに、私の分も少しハーブを採取してきていただけますか?」


「お安い御用です!」


 先生からハーブの名前が書かれたメモを受け取り、私とラウル君はハーブ園へと向かったのだった。まるで初めてのおつかいである。


「アリス様はどのハーブにしますか?」


「ん〜、一応試験で使おうと考えていたのは、カモミールと蜂蜜の香りなんだ。でもまさか、今日ここで作る事になるとは思ってなかったから、蜂蜜は持ってきてないんだよねぇ」


 まぁ蜂蜜は、家で練習する時に入れてみたらいっか。よし、今日はカモミールと相性の良さそうなハーブを、もう1つ選ぼう。


「ベルガモットもいいけど、あれは流石にないか……」


「ベルガモットって柑橘系の木ですよね? 確かありますよ」


 ラウル君が、こっちですよ〜と案内してくれる。本当に何でもあるんだな、この学園……


 私達は自分用のハーブを無事採取し、先生からの指示があったハーブも数種類採取して、研究室に戻ったのだった。



「ちなみに、お2人は試験で何を作る予定ですか?」


「私はアロマキャンドルです」


「えっと、僕は塗布薬の予定です」


「マークさんのキャンドルに必要な蝋は、ベーシックなものでよければ今在庫があります。ポトリー君の塗布薬に必要な材料も一揃いありますので、大丈夫だと思いますよ」


「うぅ、何から何まですみません……ありがとうございます」


 そうと分かれば、家から材料を持って来たのに、申し訳ない……


「いいんですよ。お2人が作る予定の物も知れたので、事前調査のお礼みたいなものです。私は皆さんに休暇明けで課題を提出してもらってから、そこに記載された必要材料を確認して、試験当日までに準備しなくてはいけないですからね」


 フフフ、とやや遠い目をした先生である。試験期間は、先生方も大変なのですね。


「毎年の事ですから、ある程度は予想して材料の発注を済ませてはあるんですけどね。あと、あまりに高価な物や稀少な物は、代替え品になる可能性もあったりします。あぁ……休み明けの事を想像すると、うんざりしてきますねぇ……」



 あっ、先生が闇堕ちしそうである……!


 皆、変に凝ったものに挑戦するのは、なるべく避けてあげてね……!?


 そう心の中で、思わず祈った私なのだった。




いつもありがとうございます(*´꒳`*)

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