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第61話 特訓3rdは王宮で

 



 何だかダンスを踊っているみたいだな。


 クルクルと回る2人を見て、微笑ましい気持ちになっていた私は、すっかり忘れていた夏の恒例行事をポンッと思い出した。



 ダンス……ダンスっ…………!?


 ……夏季休暇中に、王宮舞踏会があるじゃないかー!!!


 なんなら休みに入ってすぐに、家で新しい夏のドレスの試着をしたし、調整もしっかり済ませてたよ私……!


 尚、私はデザインの流行や、何が自分に似合うのかをよく分かっていないので、ほとんどが母様とメイドのデイジーの見立てである。派手なのは好きじゃないって事だけは伝えてあるけれど、いつも似合う物を選んでくれるので、大変感謝しているのです。


 まぁお任せにしすぎたせいで、私の頭の中から舞踏会がすっかり抜けてしまっていたんですけどね……! あ、でもあと魔獣のせいでもあると思う。



 その後、王女様達と庭園を少し見学してから客室に戻ると、メイドさんから1通の手紙を受け渡された。貰った手紙をくるりと裏返すと、差出人はフォルト様であった。


「わざわざお手紙なんて、どうしたんだろう……?」


 レターナイフで開封してもらった手紙をピラッとめくる。内容は、前に約束した休暇中の実技試験の特訓についてだった。


 なんでも、この前使わせてもらった王宮の魔法特別室が、明後日の午後に使用する許可が下りたらしい。


 許可……となると、殿下に許可をもらったのかなぁ? つまるところ、特訓のお誘いだ。


「もう夕方になっちゃったけど、今日中に届くかな……」


 私は急いでペンとレターセットを取り出すと、サラサラと了承した旨を書き、手紙に封をして、メイドさんに託したのだった。




 ────────────────




「こんにちは、フォルト様」


 約束の日になり、フォルト様は私の客室まで迎えに来てくれた。ペコリとし、併せてお礼も告げる。


「あぁ。王宮で不便な事はないか?」


「全くないですよ? 逆に快適すぎて、困るくらいです。そろそろ帰宅命令が下るんじゃないかなって勝手に思ってるんですけど、殿下はどうお考えなんでしょうね……?」



 あれこれ王宮での近況を話している内に、私達は魔法特別室に辿り着いていた。


 パタンと扉を閉めると、フォルト様が口を開く。


「新魔法の件は、アリスティアの兄上からも、スムーズに手続きが済みそうだと伺っている。後は、もう1つの謎だが……」


「謎……? あ、強化土魔法の件ですか?」


「そうだ。その時アリスティアの目は、いつもと違って見えたんだよな?」


 そう言いながらフォルト様は、ズイっと距離を詰めてきて、真っ直ぐに私の目を見つめて観察し始めた。


 こ、これは中々、にらめっこ以上に辛い……!


「う、ぁ、ちょ、フォルト様? あんまりマジマジと見つめられてもですねっ……!」


「……ただアリスティアは、その時に放った言葉を覚えていないんだったか?」と、ようやく私から目線を外しながら呟く。


「は、はひ」


 返事をしながら、ちょっと息絶え絶えになる私。いくらキラキラ耐性がついたと言えど、至近距離はそうそう慣れるものじゃなかった……!


「そ、そうなんです。この前サラにも分かる範囲で思い出してもらって、断片的にこうじゃないかっていうのは書き出したんです。でもそれを唱えたり、単語を自分の考えた通りに繋げてみても、特に何も起こらなくて……」



 そう。サラがまだ王宮に滞在していた際に、私が魔獣に使った強化土魔法の謎を解こうと、あーでもないこーでもないと、サラと頭を捻りながら考えていたのである。


 結論から言うと、分からずじまいだったのだが。


「別に分からない事が悪い訳じゃないんだ。現に、アリスティアはその強化魔法を使えたのだからな。また使うべき時が来たら、その時は問題なく発動できるだろう」


 ユーグは勿論、陛下も皆分かってくれているから安心しろ、と励まされてホッとする。本当、皆さん優しいな……


「その謎を解くのも大切だけどな? アリスティアは休み明けの、実技試験の心配をした方がいいと思うぞ」


「うっ……! グレイ先生にも、攻撃魔法をもっと練習しとけって言われました……」


「森での実技試験では、何を求められるか分からないからな。念の為、自分の身を守るものとして、攻撃魔法と防御魔法は、すぐに発動出来る様にしておいた方がいい。……そうだな、風の攻撃魔法を練習してみるか?」


「風のですか? 学園でも使った事はほとんどないですけれど……確か風圧とかでしたっけ……?」


「風の攻撃魔法は、対象者がいないと分かりにくいものが多いが、風圧で対象者を跳ね飛ばしたり、あとは葉などを風速で飛ばして、刃のように切り刻んだり、見た目に反して効果は強いな」


「きっ……切り刻むっ……!? あ、あの! 順番に頑張るので、せめて初心者向けからでお願いします……!」


 ちょっとグロい想像をしてしまい、泣きそうになった私を見て、クスリとしたフォルト様。


「それなら初級の風圧の魔法から始めよう」



 ご配慮いただき、誠にありがとうございます……!


 分かりやすく、防御壁の前に丸太を1本立てる。これを的にするそうだ。


「怖かったら、最初は魔力量をほんの少しにして唱えるといい」


 そう前置きをして、フォルト様は防御壁から数メートル離れて立ち、手を前に突き出した。



『跳ね飛ばせ 疾風の唸り(ハウル・オブ・ゲイル)



 手から旋風が巻き起こり、ブォンと音が鳴ったかと思うと、すぐに風が音を追って、丸太へ一直線に向かった。丸太は風に体当たりされ、跳ね飛ばされた衝撃で、防御壁に思い切りぶつかったのだった。


 フォルト様の魔法は洗練されているから、元の魔法よりもスピードや威力が上がっているようだ。それにしても風の攻撃魔法って、意外と強いな……




いつもありがとうございます(*´꒳`*)

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