第59話 滞在延長中です!
王宮滞在も早いもので3日目となり、今朝、サラとシェリは家に帰る事となった。
「結局事件があってからは、全然皆で遊べなかったね……」
「まぁな? でも学園が始まる少し前には戻ってくるから。その時に会おう?」
しゅん……としょげる私の頭に、サラがポンッと手を乗せた。
「うん、今度は家にも遊びにきてね……!」
「シェリも帰っちゃうのは寂しいわね」
「本音としては、王宮に残ってこのまま2人と一緒に過ごしたいけれど……婚約者候補として、1人だけ理由なく王宮で待遇を受けるのも、他のご令嬢の心象が良くないから」と、ちょっと困った様に微笑んだ。
「なるほどね……てっきりシェリが婚約者に確定してるものだと思ってたわ。殿下も今は色々と根回しを頑張っている所なのかしらねぇ……」
やや驚きつつも、納得した様子のミレーユである。私もそんなミレーユの隣で、うむうむ、と同意する。
王宮というか、貴族の人間関係も複雑そうだから、諸事情でまだ確定できないんじゃないかなぁ……
ちなみに殿下の婚約者候補は、シェリの他に2人挙がっている。確かそのお2人も高位貴族の方だったし、どうなる事やら……
まぁ今は王家も、魔獣事件の方を優先してる感じだろう。とにかく、事件の早期解決を願うしかないよね。
サラとシェリが乗った馬車を見送っていると、マーク家の馬車が入れ違いで入ってきて、王宮の正門前に止まった。馬車の扉が開き、父様が出てきたなと思った時にはもう既に、私に毎度お馴染みのタックルをかましてきたのだった。クッ……今日も避けれなかった……
「おはようアリス! 元気にしてるか!?」
「げ、元気でーす……」
今、軽く意識飛びそうになったけどね……!
ていうか父様と、なんだかんだでよく会ってるな、私。
「まさか王宮に来てすぐ、アリスに会えるとはなぁ。ちょうどよかった、クリストフからの伝言があってな? 急で申し訳ないが、今日の午後2時にもう一度研究所に来てもらいたいそうだ。予定は空いてるか?」
「うん、大丈夫。そもそも、今回の王宮滞在はその為にさせていただいてるものなんだから。ちゃんと何度でも出向くつもりはあるよ」
「うっ……! アリスは本当にいい子すぎる……父様感動……!」
泣きそうになる父様をどうどうと宥め、背中を押して仕事に向かわせる私。
尚、そんな私達親子のコントのような流れを、ミレーユが珍しい物を見るかのように見つめていた点に関しては、怖くて触れられない私である。
うぅ、エタリオルの侯爵家が全部こんな感じじゃないからね……っ!?
ああ見えて、お仕事はキチンとこなす父様だから……!
あうあう、と弁解をしたそうにしている私に気付いたミレーユは、私と目が合うとクスッと笑った。
「アリスのお家の方は賑やかで楽しそうよね。私もマーク家に是非遊びに行きたいわ」
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ふむ、午後に出かける事を、早めに伝えておいた方がいいかな。
一旦部屋に戻った私は、メイドさんに声を掛けた。
「すみません、今日の14時に研究所の方へ急遽行く事になりまして。王宮騎士様に、案内をお願いしたいんですけれども」
「ご案内ですか……」
ポツリと呟くと、メイドさんはそのまま動かなくなった。何か考え事をしているのだろうか……?
「あ、あの……?」
「……っ失礼致しました。お時間に間に合うように、騎士様を1名、扉の外に控えていただきますね」
そう言うと、メイドさんはいつもと変わらずに微笑んで、頭を下げられた。
「はい。よろしくお願いします」
「氷の騎士様は……今日は休暇を取ってたわね! これは争奪戦になるわ……!」
……涼しい顔でアリスの部屋を退出したメイドは、すぐさま慌てた様子でそう呟くと、早足に去って行ったのだった。
そしてその後、争奪戦という名のジャンケン大会が開催されていた事も、勿論アリスは知らないのであった。
「ミレーユは夏季休暇中、王宮に滞在してるじゃない? 何をして過ごしてる事が多いの?」
午前中はミレーユとともに、王宮図書館で課題を進めていた。課題も無事にひと段落し、今は2人で昼食をいただいている所である。
「わ、この冷製パスタすごく美味しい」
美味しい昼食に、思わず自然と笑みが溢れる。王宮の食事はいつも美味しすぎて、ついパクパクと食べすぎてしまう私なのだ。う、これは運動しないと後にマズイ事になるぞ……
「あら、本当美味しいわ。そうねぇ……私は割と図書館に入り浸らせてもらってるわね。元々本を読むのが好きで、エタリオル語を学んでからは、エタリオルの本も沢山読めるようになったから」
「ここの図書館も、学園に負けないくらいの本の数だもんねぇ」
「そうなのよ。見た事のない本も多いから、ついつい長居しちゃうのよねぇ……」
フゥと頬に手を当てて、嬉しいような困ったような表情をするミレーユなのだった。
昼食後。私が支度を終えて部屋の扉を開けると、既に騎士様が待機してくれていた。クリス兄様くらいの年齢の、若い騎士様である。
「お待たせしました。ありがとうございます」
騎士様と目が合った私は挨拶し、ニコッと軽く微笑んだ。
「お忙しいのにすみません。近いので、1人でも大丈夫だとは思うんですけど……」
侯爵令嬢の身としては、1人で王宮内をフラフラするのはよくても、外に出る時は流石にNGだろう。そう思って騎士様をお願いしたのだが、道案内の為だけに呼ぶのも、中々申し訳ない気持ちになるものだ。
そんな気持ちで呟いた私の言葉を、騎士様は遮る勢いで、ブンブンと首を横に振った。
「いいいいいえ! 自分がしっかりとご案内させていただきますので、お任せください!」と、ピシッと宣言される。
「よ、よろしくお願いします……?」
そんなに意気込む程の距離はないんだけどな?
私は疑問が浮かびつつも、再び研究所へと足を運んだのだった。
いつもありがとうございます(*´꒳`*)




