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第55話 エタリオル魔法研究開発機構

 



「ならフォルト、アリスティア嬢とクリストフ殿に付き添ってやってくれるか?」


「分かった」


「わざわざすみません、ありがとうございます」


 私達兄妹はペコリとお礼をしたのだった。



 でも……あれ? 


「あの、そうなると……事情を知っている火属性持ちの方がいませんよね? 新魔法を使う時、どうしたらいいですか?」


「あぁ。それは大丈夫。一応信用のある奴が後から行くから、安心して」


「へ? あ、はい……?」


 後から誰かが来てくれるって事ですかね……?


 私は首を傾げたが、クリス兄様とフォルト様と共に、ひとまずエタリオル魔法研究開発機構、通称【研究所】へ向かう事にした。


 研究所は王宮に併設されている為、位置的には隣なのだけれど、いかにせん巨大な建物なので、割と王宮から距離があった。辿り着いた研究所は、見た目はアンティーク調の巨大な博物館、といったような感じである。


 何だかんだで、ここに来るのは初めてだ。緊張感よりも、ワクワク感の方が勝ちそうな私なのだった。


「そうそう。アリス、新魔法は全く生まれない訳ではないんだ。研究所でも新魔法の開発がされているし、突然知らない魔法が使えてしまった、なんて相談が研究所に来る事もあるから、安心して?」


「そうなんだ。稀な事をやらかしちゃったかと思って、ちょっとヒヤヒヤしてたよ……」


 ほっと安堵のため息をつく私。


「ん〜まぁ稀は稀なんだけどなぁ……ただ、アリスの新魔法の発現した経緯があの事件だから、あんまり大事には出来なくてね。こっそりやる事になっちゃうんだ」



 はい、ここだよとクリス兄様が【魔法開発室 1】と書かれた扉を開けてくれる。入室すると、中の造りは王宮魔法特別室と、ほとんど変わらないようだった。


「さてと……認定にはまず、王家からの許可を得ている研究員と、王族又は王族より委任された者の目視確認が必要なんだ。アリスは既に、殿下の目の前で魔法を成功させているから、後は僕の前でもう1回魔法を成功させれば、その点はもうクリアだね」


 ふむふむ、と私は相槌をうつ。


「その後は少し聞き取りをさせてもらって、魔力量の確認と、魔法の危険度合い。あとは……まぁ諸々を僕たち研究員がデータ化して、書面にまとめて提出すれば、1ヶ月後くらいに申請が通っておしまい、かな?」


「ぅ……話を聞く限り、大変なのは研究員の方々なんだね……?」


 完全に、余計なお仕事を増やしてますよね……! がっくしと項垂れた私なのだった。



「アリスティア。ほら、アイツが来たぞ」


「え?」


 フォルト様の指差す方向に目を向けると、シュンッとニャーさんが現れた。あ、さっきぶりです。


「んだよ、ユーグも人使いが荒いよなぁ」とボヤきながら、ポリポリと頬を掻く。


「お前、魔法を使いたがってたんから、丁度よかったんじゃないのか?」


「まぁな? でも結局、俺バラす事になるじゃんか。ユーグもどういうつもりなんだよ……」


「……ユーグからの伝言だが『いい加減、僕も公務で疲れがピーク。シェリと2人っきりでお茶でもして癒されたい。お前の事だから、どうせ魔法バレとかすぐするでしょ。気にせず僕の代わりに頑張って』……だそうだ」


 フォルト様は、同情の目でチラリとニャーさんを見た。


「あんの色ボケ殿下ァァァッ!!!」


「……この部屋、防音でよかったね」


 やや呆気に取られながらも、そう呟くクリス兄様。


「ほんとに。殿下との関係性を知らない人が聞いたら、これってかなりの不敬罪だよね」


 クリス兄様の言葉に、私もうんうん、と頷いたのだった。



「ええっとですね……ニャーさんが火属性を使える助っ人の方、という事でよろしかったでしょうか……」


 不貞腐(ふてくさ)れてしゃがみ込んでいるニャーさんの元へ歩み寄って、私もしゃがんだ。


「そうだよ。俺がユーグに売られた、火属性持ちの間諜だよ、文句あっか……」


 お、おう……めちゃめちゃ喧嘩腰だ。


 目が見えなくても、こっちを睨みつけているのが何となく分かってしまう……!


「は、はい! 私、殿下がニャーさんは信用のおける奴だって言ってるの聞きましたっ! つまり火魔法も相当腕が立つって事ですよね?」


 私の言葉に、ピクッとニャーさんの身体が動く。


「……ま、まぁ? 俺くらいになると、火だって上級魔法とか余裕で使えるし?」


「わ〜! やっぱりそうなんですね! 私ニャーさんの火魔法も是非見てみたいなぁ……一度だけでいいので手伝って貰えたら、私はすごく嬉しいんですけど……」



 そう言いながら、おずおずとニャーさんを覗き込んだ。顔は見えないですけど、ウズウズしているのが何となく伝わる。子どもみたいに分かりやすい……そもそもこの人何歳なんだろうな……


「……そこまで見てぇって言うならしゃーねぇな! 俺様の火魔法は貴重だぞ? 1回きりだかんな!?」


「わーい! ありがとうございます!」


「……アリスティアのあれも、才能の1つなのかもしれないな」


「我が妹ながら、扱いが上手いなと感心しちゃいましたよ……」


 きゃっきゃとしている私とニャーさんを見つめる2人は、何とも言えない顔をしていたのだった。




 ────────────────




 無事に新魔法の認定も終えた私は、クリス兄様に見学許可証を貰って、フォルト様と研究所内を歩き回っていた。


 勿論、守秘義務が必須の研究内容もあるので、一般公開されている所だけなのだけれど。魔法石を付与した便利グッズの展示や、魔法古語の歴史を辿れるので、まるで科学資料館みたいで中々面白い。



 ニャーさんはというと、「一足先に戻って、ユーグに終わったって伝えとくわー!」と言いながら、颯爽と王宮へ戻っていった。機嫌が直るのも早ければ、帰るのもお早いですこと……


「んん?」


 通路に、何だか見たことある方がいらっしゃる……私は誰だろう、と目を凝らした。


「え……ローラン先生?」


 私の声に反応して、目線をこちらに向けた先生は、私を見つけると、少し驚いた顔をしていた。


「おや、マークさんじゃないですか。それにカルセルク君も。こんな所で会うなんて奇遇ですね」


「こんにちは。先生はこちらにご用事で……?」


「私が獣医として、魔獣の研究もしていると話した事がありましたよね? 学園長経由で魔獣の調査依頼が来たんです」


「あ、なるほど……」



 そういえばローラン先生は、魔法薬学の先生だけど、獣医として動物と魔獣の関係性の研究を続けていると言ってたっけ。


「あなた方はどうしてここに……あぁ、マークさんのお兄さんが、確かこちらの研究員の方でしたね。今日は見学ですか?」


「えーっと、そんなところですっ!」



 新魔法の認定をしてもらいに来てました!


 ……なんて流石に言えない私は、ざっくりと先生に返事をしたのであった。




いつもありがとうございます(*´꒳`*)

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