表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/160

第54話 新魔法、トライアゲイン

 



「アイツ、このままだと自分の属性を当てられると察して逃げたな」


 逃げ去った扉の向こうを見つめながら、フォルト様がため息をついた。


「いくら何でも当てられないのに……ニャーさんって意外と怖がりなんですねぇ……」


 そんな会話をしながら窓に視線を向けると、差し込んだ陽の光が目に入った。あ、そういえばあの時は、私が魔法を使う前に、サラが太陽の魔法で先に太陽光を強化してくれていたんだっけ……



 ……ん?


 なら、同じシチュエーションでやってみる価値はあるのかも?


「あの、どなたかと一緒に火魔法を使って、もう一度だけ試させてもらえないでしょうか?」


 そう切り出して、私は自分が思う見解を皆に説明した。


 今いる中で火属性持ちの人……きょろっと辺りを見渡す。


 そもそもサラとミレーユは、王女様方のご指名でお茶会に参加中の為、不在である。ちなみに私とシェリも誘われたのだが、この確認案件があったので、申し訳ないが今回はごめんなさいをしている。



 シェリとフォルト様は火属性持ちじゃないしなぁ。エヴァン様は、土属性って聞いた事があるし……


 あれ? そうなると、もしかして残るのって……ギギギと、私は壊れたロボットかの如く、ぎこちなく後ろを振り向いた。


「今は僕しか居なさそうだね」


「ワァ、ホントデスネェ……」


 殿下直々の補助を頼むとか、ほんとおこがましくて、すみません……


「サラ嬢が使ったのは、どんな太陽の魔法なんだっけ?」


「ええっとですね……本物の太陽光を擬似化して、光を生み出して、更にその光を強くする魔法です。んと、サラは何て唱えてたかな……」


「なるほどね。それなら、これじゃないかな?」



 殿下は私の拙い説明でも、すぐにピンと来たようで、窓の近くへと向かった。太陽に向かって手をかざすと、魔法を唱えた。



煌めき(きらめき)強化 太陽光を模造せよサンライト・イミテーション



 パッと殿下の手から、太陽光に似せた、眩しい陽の光が放たれる。


 さすが殿下、1回で成功させるとは……私も見習って、しっかりこなさないと……


 私は放たれた太陽光の位置と、反射の関係を考えて、防御壁に当たるように自分の立ち位置を変更する。



 ここで合ってる、はず……よし、集中。


 的があれば狙いは定められるでしょ、私。


 集中する為に一度閉じていた目をパッと開けて、前を見据えた。



標的(ターゲット)狙いを定めよ(ロックオン) 太陽光の奇術サンライト・イリュージョン!』



 パァッと私の手のひらから、魔獣の時と同様に鏡が出現した。殿下の放つ光を線状に伸ばして反射させ、それは無事に防御壁の一点へと跳ね返った。


「ようやく成功しました……!」


 私はホッと胸を撫で下ろした。よくやったな、と言わんばかりに、フォルト様も頭をポフポフと撫でてくれた。


「アリス、すごいわ! あの時と全く同じね!」


「これが新しい太陽の魔法なんだね。すごい……発想が斬新……」


 エヴァン様はメモを取りつつ、とても興味深そうに考察されている。


 まぁ、斬新ですよね。だって前世の知識から引っ張ってきましたから……ありがとう理科の授業。



「ユーグが唱えた太陽の魔法と、魔法古語のイントネーションが少し似ているんだな」


「確かにフォルトの言う通りだな。模造(イミテーション)奇術(イリュージョン)か……アリスティア嬢は、元々その意味も汲んでいたのかい?」


「いえ、サラの魔法と似せようとは特に思ってませんでした。本当にパッとイメージして出てきた単語を、即座に使っただけなので……」


「うーん……専門の研究者に聞かないと、詳しくは分からないけれど、恐らく先に模造(イミテーション)の魔法が発動していないと、アリスティア嬢の奇術(イリュージョン)の魔法は使えない、っていう制限がかかっているんじゃないかな?」と、エヴァン様は自身の考察を述べる。


「そうだな。それに、アリスティア嬢が使った魔法は、成功するとそこそこの魔力量を消費しているのが分かった。僕の放った魔法も、元々上級魔法だ。アリスティア嬢の新魔法も、この魔法と対になると仮定するならば、きっと分類は上級魔法に当てはまるだろうな」



 魔法が成功する事も分かったし、エタリオル魔法研究開発機構にも研究を依頼するか……と殿下が話していると、扉の外にいた護衛の王宮騎士様から声が掛かった。


「クリストフ・マーク様がいらっしゃっております」


「あ、僕が呼んだんだ。アリスティア嬢の事だし、機構に所属している優秀な魔法研究者でもあるからね」


 なるほど。エヴァン様、いつも有難いご配慮、感謝です。


「失礼致します」


 クリス兄様、と私はててっと駆け寄った。


「アリス、昨日は大変だったな。事情は聞いたけど、皆すごく心配してたんだぞ? まぁ、父上が特にな……」


 そう言いながら、フッと遠い目をしていた。


「あぁ……父様には、さっき公務中に抜け出したみたいで王宮内で会ったよ。会うなり散々大丈夫か、痛いところはないかって質問攻めにあったんだ……」と、私も思わず遠い目をした。



「それよりも、私がまた可笑しな事をしたせいで、皆に時間をもらってるのが申し訳なくて……クリス兄様も、お仕事忙しいのにごめんね」


「気にしなくて大丈夫。これも兄様の仕事の一環だからね。殿下、アリスの新魔法は発動可能だったのでしょうか?」


「結論から言うと発動は可能だった。まずは、エヴァンがメモを取ってくれているから、それに目を通してもらえるかい?」


「分かりました」


 兄様は頷くとエヴァン様から書類を受け取り、一読する。段々と文字を追っている目が、驚きの表情へと変わっていった。


「2つの魔法で対になるという可能性がある……? そもそも太陽の魔法は種類が少ないという特徴があったが……相乗効果なのか、はたまた研究を繰り返せば独立した魔法にもなりえるのか……」


 チラリと兄様が、私の方を向いた。


「……とにかく、新魔法は魔法認定の手続きを取った方がいいですね。アリス、忙しくて申し訳ないけれど、今度は僕の職場に出向いてもらう事になるよ」



 クリス兄様の職場って事は……あの巨大な魔法研究所と噂の、エタリオル魔法研究開発機構……!?




いつもありがとうございます(*´꒳`*)


来年もどうぞよろしくお願いいたします(*´꒳`*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ