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第51話 王宮のアイドル

 



「……ちなみに、それはなんて唱えて発動させたかは、覚えてるのかい?」


「はいっ! これはバッチリ覚えてます! 『標的(ターゲット)狙いを定めよ(ロックオン)』で紡いで、『太陽光の奇術サンライト・イリュージョン』で発動させました……!」


 ここぞとばかりに、殿下の質問にキリッと答える私である。怒られない為にも、答えられるものは何でも答えていくスタイルだ。


「それは、もう一度やってみろと言われたら出来そうか?」と、今度はフォルト様から聞かれる。


「ど、どうでしょう……集中力と想像力を凄く使った気がするので、正直微妙ですけど……頑張れば出来るかもしれないです、かね?」



 私が次の質問を待っていると、男子3人は集まって、何やらヒソヒソと談議し始めた。


 (しばら)くして談議が終わったのか、ふぅ……と殿下がため息をつくと、こっちを向いて微笑む。あ、やな予感が。


「アリスティア嬢は……あれだね? ちょっと皆より、王宮滞在が長引きそうだね?」


 あぁぁ、殿下の黒い笑顔が突き刺さります。


「は、はひ……ご迷惑をおかけします……」


 引き攣った笑顔で、なんとか返事をした私なのだった。ごめんね父様、当分家には帰れなさそうです……



「この事件は目撃者も多かったようだし、すぐにでも話が広まる事になるだろうな。前回の件もあるから、明日にでも王家から国内外へ発表するつもりだけど、問題はどこまで公表するか……」


「う〜ん……妥当なのは、偶然居合わせた魔法学園の生徒4名が、魔法で魔獣を足止め、戦闘不能にさせた。避難もできた為、国民への被害はなし。目撃者によると魔獣の出現は、闇魔法の魔法陣が使用されており、以前森に出現した魔獣も、同じ手口の可能性が高い……ってところかな」


「そうだろうなぁ。わざわざこの子らの名前を出すのは、あんま得策とは思えないぜ? 犯人が捕まった訳でもないんだし」


 ソファーに座ってグダッと(くつろ)いでいたニャーさんが(私は寝てると思ってました)割と真面目なアドバイスをしたので、ちょっと驚いた。私達の事を配慮してくれるとは、意外と優しい。


「ニャーさん。犯人といえば、あの魔法陣って近くにいないと発動できないものなんですか? 魔法陣が現れた時に怪しい人なんていたかなって、ふと思ったんですけど……」


「普通の魔法と同じで、本来なら近くにいないと出来ないもんだな。でもなぁ……俺も事件が起きた時、隠蔽の魔法使ってるやつ探したけど、見つけられなかったんだよな。待てよ……あ〜もし魔法陣の遠隔操作方法も犯人が生み出してたとしたら、滅茶苦茶厄介じゃね」


 そう言うと、ウゲーッと顔を思いっきりしかめた。いや、フードでほとんど顔見えないけど、絶対そうだと思う。



「まぁ犯人の特定ができない今は、君達の安全を優先して名前は公表しない方がいいね。ただ、ご家族には流石に伝えておかないとなって思って、カルセルク家とマーク家には、もう連絡してあるんだ」


 エヴァン様、毎度お仕事が早い。


「サラ嬢とミレーユ嬢は実家が遠いから、早急に王家から手紙を出す予定なんだけど、それで大丈夫かな? 特にミレーユ嬢は、留学生としてウチがお預かりしている来賓なのに、こんな事になってしまったから、もうこっちとしては平謝りするしかないんだけど……」


「大丈夫です。心配はすると思いますが、魔獣と対峙して他国の人を助けたと聞けば、誇りに思ってくださると思います。一応、私からも無事だと手紙を書いて、それを同封させていただけると助かります」


「そう言ってもらえると助かるよ。それは勿論。重要書類になるから、キチンとしたルートで送るね。サラ嬢の家はどうだろう?」


「私も問題ないかと。ナースズ家は血の気が多い事で有名ですから……この話を聞けば大興奮かと。ちょうど数日後には帰省するつもりだったので、帰ったら私の口からも直接説明しておきます」


「うん、よろしくね」



「皆、協力ありがとう、おかげで助かったよ。もう日も落ちて遅くなってしまったし、今夜はよかったら王宮に泊まっていってくれ。陛下からも今日はゆっくり休んで、謁見は明日以降で構わないとの事だから、気にしなくて大丈夫だから」


 お腹も空いたし、色々な事があってクタクタな私たちは、ありがたく殿下からの申し出を受ける事にしたのだった。




 ────────────────




 割り当てられた来客用の部屋は、私とシェリ、サラとミレーユの2人部屋となった。


 夕食をいただき、各々の部屋に戻ろうとお喋りをしながら廊下を歩いていると「いやですぅ〜」「まだ寝ないのです〜」と、言う声が聞こえてきた。あれ、この声はあの子達では?


「あら? 今の声ってもしかして?」


 ミレーユがサラに問いかける。


「そうだな、噂の王宮のアイドルじゃないか?」


 てちてちっと廊下を走る軽い足音がして、ぴょこっと王族専用エリアから現れたのは、小さな天使2人である。



「「あ〜っ! シェリちゃまですっ!」」


 そう言いながら、ギュッとシェリのドレスにしがみついたのは、エタリオル王国第1王女のレティアーヌ様と、第2王女のリリアーヌ様だった。今年で4歳になる、歳の離れた殿下の双子の妹である。


 見分け方としては、金髪に茶色の目が姉のレティアーヌ様、金髪に黒色の目が妹のリリアーヌ様だ。目の色が違うだけで、容姿は瓜二つである。


「シェリちゃま、今日お泊まりなのです?」


「絵本読んでくださいですー!」


「もう、分かったわ。でも絵本の後は、きちんと寝るお約束ですよ?」


「「はーい!!」」


「ちょっと行ってくるわ。皆は先に休んでいてね」


 天使2人は私達に「おやすみなさいですー!」と元気よく言いながら、手を振ってくれた。王宮のアイドル、癒されます。




 ────────────────




 私は先にお風呂をいただき、王宮仕様のふかふかベッドに、ころんと横になる。疲れからか、すぐに眠気がやって来た。


「あら、アリスもう寝るの?」


 シェリが少し遅れて部屋に戻って来たようだ。王女様たちの寝かしつけは、無事終わったのかな。そう聞こうと思ったけど、私はもうこの時点で半分ほど夢の中である。


「んんん、眠気に勝てない……」


「今日は大変だったものね、お疲れ様。ゆっくり休んで」


「シェリも、おつかれさま……おやすみぃ……」


 私はふにゃ、と笑って目を閉じた。



「……アリス、貴方が1番の功労者よ。私たちの魔法をサポートしてくれて、そして皆を助けてくれて……本当にありがとう」


 シェリがそう言って涙ぐみ、微笑んでくれたのも、既に夢の中だった私は知らなかった。呑気にすやすやと、朝まで眠った私なのである。




いつもありがとうございます(*´꒳`*)

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