第5話 氷の騎士様
光属性って……
私の4属性持ちよりも、もっと希少なやつでは……!?
もう一つの特殊属性である闇は、光よりは発現が多いと聞くし、光は国内に2、3人いればいいほうだって話だったはずだ。
いや、さすがシェリーナ。もう見た目からしてピッタリである。リアル女神様降臨だなぁと、私は心の中で拍手喝采していた。
「一応、光属性の他に水属性も発現してね? 光ほど強くはないみたいなんだけど……」
「更にまさかの2属性持ち!? すごい!」
パチパチと、思わず私は現実でも結局拍手喝采した。私の親友はやっぱりすごい。
そんな中、シェリは頬に手をついてため息を1つ零した。
「光なんて、それこそ私が扱えるようになるのか心配よ。でもアリスも同じように心配してるのが分かったから……仲間がいて少しホッとしたわ。」
「うん! 複数属性持ちなら同じクラスになれる可能性も高いし、一緒に頑張ろう! 私もシェリが一緒ならって思ったら、気が楽になったよ」
へにゃっと笑う私の頭上に影が差した。私が「ん?」と思ったのと同時に、少し低めの声が頭上から響く。
「シェリ、アリスティア」
「あら? お兄様、今日は王宮でユーグ殿下の護衛じゃなくて?」
シェリーナの兄、フォルト様はカルセルク公爵家次男で、殿下と同い年の17歳である。同い年という事もあって、側近の護衛魔法騎士として、学園や王宮で殿下に付き添っているのだ。
耳の辺りまであるサラサラの銀髪は片方だけ耳にさっと掛け、透き通った藍色の瞳を持つこのお方。17歳にして既に身長175cm以上はあると推測される、美青年である。
整ったお顔を持ちながらも滅多に笑わない事から、別名『氷の騎士』と巷では呼ばれている。ご令嬢達には、そのクールさが大人気で『氷の騎士様』ファンが絶えない。
はたまた本人は女性嫌いなのか、私は婚約者の話も聞いた事がないので、不思議に思っている。縁談自体はひっきりなしに来ているのよ、とシェリもついこの前話していたし。ご令嬢がよりどりみどりなのになぁ。
よくファンのご令嬢達に、フォルト様との関係を疑われるけれど、私は昔からほっとけない妹ポジションだしな……と、しみじみしながら脳内回想を終える。
そんな私を、訝しげにフォルト様は見つめていたけれど、脳内回想中だった私はその視線に全く気づいていなかった。
「2人とも、王宮から呼び出しがかかった。急だが、これから向かうぞ。父上とマーク侯爵とも向こうで落ち合う予定だ」
ひぇっ……ついに王家に呼ばれてしまった。
元々そういう場での立ち振る舞いは得意じゃなかったけれど、前世の庶民感がひょっこり記憶から出てくるから、お偉い方に会うのはさすがに緊張が増しちゃうなぁ……
「うぅ……久し振りの王宮が、まさか自分の事の報告になるなんて……」と、ぺたりと項垂れる私。
「アリス、大丈夫よ。私も一緒だし、そもそも何も怒られるような事してないわ。それに4属性持ちなんて、むしろお褒めいただける位だと思う」
「ありがとう……」
私が覚悟を決めて行くか……と椅子から重たい腰をあげた所で、横にいたフォルト様とパチリと目が合った、と思ったら頭をポンポンされた。
……何故に女子が羨むキュン仕草をなさるのだ。もしここに他のご令嬢がいたら、私は目線で殺されるから、外では気をつけていただきたい所存である。
「ユーグもアリスティアの4属性について『喜ばしい事だ』と話していたから、そんなに気負う事ない。勿論シェリについても同じだ。2人とも安心しろ」
なんだかんだ励ましてくれるフォルト様は、皆が言う程冷たくなくて優しいし、妹大好きな方なんですよね。それに便乗してついつい甘えちゃう私も私だが、心強い2人のおかげで謁見も頑張れそうだ。自然と笑みが溢れる。
「フォルト様、ありがとうございます」
ふいに笑った私に、ほんのちょっとだけ目を見開いたフォルト様なのだった。
いつもありがとうございます(*´꒳`*)