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第46話 アイスココアと夏の夜

少し長めです〜!

 



 私達4人はテーブルを囲って、3時のおやつタイムにする事に。お茶のお供は、私の持ってきたレアチーズタルトだ。


「よしっ! では、首都観光の計画を立てましょ〜」


 私は率先して紙とペンを手に持つ。今日の書記担当は私なのだ。


「ミレーユは何処か行ってみたい所はある?」


 そう話す司会進行役は、シェリである。


「そうねぇ……1番気になってるのは、やっぱり【サン=エピナル大聖堂】かしら。一度でいいから、実際に現地で見てみたかったのよね……」



 サン=エピナル大聖堂は、首都ポルタットの観光名所として凄く有名である。私も入学前に属性検査をしに行ったんだよね。あの時は全然見学出来なかったし、是非ともリベンジしたいと思っていたのである。


「あとは……案内するなら、メインストリートの【アンジェリッカ通り】かしら? 首都の流行の物なら、この通りでほとんど揃うだろうし」


「そうだねぇ。あ、シェリ、確か最近通りに出来たお洒落なカフェもあったよね。えーと……たしか【メゾン・ド・シャロン】だっけ?」


「お、そこ知ってるぞ。首都の中でも特に創作ケーキが美味いって評判の店だよな」


 意外と甘党なサラも、そのカフェに行ってみたかったようである。


 ひとまず大聖堂の見学と、アンジェリッカ通りのウィンドウショッピング。それからお洒落カフェでお茶をする計画を立てた私達なのだった。あんまり観光感はないかもだけど、ミレーユが楽しんでくれたらいいなぁ。




 夕食の時間になり、シェリの父様であるフキロ公爵が戻られ、食事をご一緒する事になった。


 サラとミレーユは、ものすごく恐縮した様子で挨拶をしていたけれど、一見厳しそうに見えるフキロ公爵、実はとても優しいのだよ。仕事は鬼の様にこなしているらしいけれども(父様談)


 無表情の顔は雰囲気がフォルト様に似ていて、親子だなぁとしみじみ思う。


 ……というか、夕食がそろそろ終わろうとしているけど、フォルト様が居なくないですか?


「フキロ公爵。あの……フォルト様はまだ王宮にいらっしゃるんですか?」


「うむ。学園が休暇に入ってからは、殿下の公務の手伝いが忙しそうで、帰りが遅くてな」


「折角の休暇なのに大変ですね……」



 私は心の中でお疲れ様です……と合掌したのだった。




 ────────────────




 お風呂から上がった私は今、いそいそと人様のお家のキッチンで、アイスティーの準備をしている。普通の令嬢なら自分でそんな事はしないと思うけど、夜遅くにわざわざメイドさんを呼んでお仕事を頼むのは、庶民の血が騒いでちょっと気が引けるのだ……


 フワフワと、動く度にシフォン素材を重ねた寝間着の裾が揺れる。私はシェルピンク色の寝間着に、ホワイトのストールを肩に掛けていた。女子会なので、今日は女子力高めの格好である。


 グラスに紅茶を注ぐと、氷がカランと小さな音を立てた。シロップを入れてマドラーでクルクルと回し、仕上げに輪切りのレモンを添える。夏はサッパリしたものをついついチョイスしがちかも。


「あ、でもアイスココアも意外といいなぁ……」



 ふむ、牛乳を拝借しようかな……と思案していると、カチャ、と後ろから音がした。


 私が誰だろうと振り向くと、ちょうどフォルト様が扉を開けて入ってきた所だった。フォルト様は私の姿を視界に入れると、少し驚いた顔をしていた。


 そりゃ自分の家のキッチンに、他所の令嬢がいたらビックリしますよね……すみません。


「アリスティア?」


「あ……フォルト様。お帰りなさい」


 殿下の公務のお手伝い、ご苦労様です……!


 そんな労いも込めて、私はフォルト様にニコッと笑った。


「ただいま」


 私の笑顔なんて確実に敵わないレベルの微笑みに、思わずピシッと固まる私。たたたたただいま……!? いや、フォルト様にとっては実家だから、ただいまで合ってるけど……!



「すみません、間違えましたっ! お、お邪魔してますっ……」


 自分の家じゃないのにお帰りなさいとか、何を口走ってるんだ。慌てて訂正するけれど、手にはよそ様の家の牛乳瓶を抱えていて、人の家に無駄に馴染みすぎている。


「いや、全然構わないんだが……」


 まじまじと見つめられ、私が何だろうとキョトンとしていると、フォルト様は自分の服をチョンッと指して、ニコリとした。


「可愛い格好のアリスティアに言ってもらうと、疲れも吹き飛ぶな?」


「うぁ」


 ……じ、自分の格好の事、忘れてた……!


「でも、そんな薄着でフラフラしないように」


 そう言うと、私の肩からズレていたショールをフワッと掛け直してくれた。


「はい……」


 先日の急接近があってからの今日だという事に気づいてしまった私は、ちょっぴり警戒する。この美形、突然ドキドキさせてくるんだもの。


 それでも、疲れて帰ってきたフォルト様に何かしてあげたいなと思い、アイスココアを作ってお渡ししたのだった。頑張ったな、私。




「ごめんね、お待たせしました〜」


 少し遅れて、私は飲み物を持ってシェリの部屋にお邪魔する。


「ううん。ありがとうアリス」


 皆はそう言いながら、私からグラスを受け取った。


「何かキッチンの使い勝手が分からない所でもあった?」


 シェリが不思議そうに小首をかしげるので、私は帰ってきたフォルト様にたまたま出くわして、ちょっとお話していたと白状する。


 ほほぅ……? と、ミレーユの目が眼鏡の奥で、キラリと光った気がした。


「ねぇ、最近思ってたのだけど、アリスってカルセルク様と仲良いわよね……? どういう関係なのかしら?」


「んぇっ!? いやいや、妹の幼なじみっていうよしみで、気にかけてもらってるだけ!」


 私は慌てて顔をブンブンと横に振った。シェリとサラからも、何故か生温い視線を感じるが、スルーさせていただく……!



「そういうミレーユはどうなの? 帝国に婚約者の方とか、もしくは学園でいいなって思う人いないのっ?」


「私、好きな人って今までいた事がなくて……親同士が決めた婚約者の方は一応いらっしゃるけど、お互いに乗り気じゃないのよ」


 私から恋愛話を振られたミレーユは、あまり動じた様子もなく、ふぅ、とため息を漏らしながら言葉を続ける。


「だから、学園とかエタリオル国内で、そういう運命の出会いがあったらいいなとは思ってるわ」


 キャ〜! と、小声で盛り上がる私とシェリ。


「へぇ、意外とミレーユって情熱的なんだなぁ」


「サラはどうなのよ? 騎士志望の方と一緒に練習してるんでしょう? 気になる人とかは?」


「学園の騎士志望の奴らねぇ……」


 サラはチラリと私とシェリを見つめると、フッと笑った。え、何だ何だ。


「別に、自分より強い奴を好きになる気はあんまりしないな。憧れはするだろうけど。そもそも自分自身が強くなって、守る側になりたいから」


「そういうカッコイイ事を言うから、サラは女子にモテモテなんだよ……?」



 私の言葉に、シェリとミレーユがこぞって頷いた。


 そうして恋愛トークは尽きず、夜は更けていくのだった。




いつもありがとうございます(*´꒳`*)

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