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第43話 振り回される令嬢達

 



 フォルト様に寄りかかっている、という誰かに見られたら誤解されそうな自分の状況に気づいた私は、ババッと慌てて離れた。


 ……まだ顔が熱い。


 私は恥ずかしさと、何だかよく分からない感情が入り混じって、とにかく赤くなった両頬を手で覆って隠したのだった。


「そんなにフラフラなら、アリスティアも抱えていこうか?」


「〜〜〜っ!」


 今でもこんなにいっぱいいっぱいなのに、更にお姫様抱っこですと……!?


 ククッと笑うフォルト様は余裕の表情で、なんだか悔しくなってきた。


「……今日のフォルト様は意地悪ですっ……もう復活しましたのでっ!」


 そう言って私は腰に手を当て、プィッとそっぽを向いたのだった。今度はドアップでも耐えてみせますもんだ。



 フォルト様は近くの壁に寄りかかって腕を組み、そんな私をじっと見ていたが、唐突に真面目な顔で呟いた。


「……(いじ)めてるんじゃなくて、可愛がってるつもりなんだが?」


「ぅっ……そ、そうでしたかっ……」



 そんな真剣な表情で言われたら、嘘じゃない気がしてしまう。そしたら私、いつまでも拗ねていられないじゃないか。


「じゃあ仲直りという事にして、寮に帰りましょうか……?」


 私は少し躊躇ったが、おずおずとフォルト様を見つめて、そう言ったのだった。



 ケンカした訳じゃないけれど、何だか私が結局折れて、負けた気分である。その後のフォルト様は、特に普段と変わらない様子だったので、まぁいっか……と思う事にしたのだった。



 フォルト様と別れて女子寮の玄関に入ると、ちょうどシェリの後ろ姿が視界に入った。私は、ててっと歩み寄って、ポンッとシェリの肩を叩きながら声を掛ける。


「シェリ〜、途中で抜けてごめんね。殿下に渡せた?」


「ア、アリス。いいのよ全然。クッキーはね、大丈夫、わ、渡せたわ」


 そう言って振り向いたシェリの顔は、真っ赤だった。何なら喋りもしどろもどろで、目線も合わない。


「もしかしてだけど、殿下に何かされた……?」


「……っ!? さ、されてないわよ!?」



 ……なるほど、されたんだなぁ。


 ポーカーフェイスが得意な公爵令嬢を、こんなに慌てさせるなんて、一体殿下は何をしたんだ。恐るべし。




 ────────────────




 夏季休暇までもう1週間をきったという事で、ついにやって参りました。


 スパルタグレイ先生の、実技魔法チェック……!



「おーし、んじゃ休暇前に、各自の課題点が改善できてるか確認していくぞ。お前ら、自分の直すべきポイントを思い出しながら、ちゃんと自主練してたか?」


 はい! と元気よく返事をする私達である。


 休み明けはすぐに前期試験となるので、私達も勉強に力が入るものだ。言うて特Aクラスですし、やっぱり好成績を取りたい。



 皆、順番に先生の前で魔法を発現させ、指導をしてもらう。順番が回って来たシェリも、個人練習で慣れてきた低級の光魔法を披露し、皆から称賛されていた。


 気がつけば、ラウル君まで順番が回って来ていたようで、先生の呆れた声が聞こえた。


「ポトリー、お前な……また飽きずに動物ばっか作って……」


 ……どうやらラウル君は、相変わらず動物愛に溢れているらしい。


「はいっ! 僕は魔力量が少ない事が課題なので、低魔力で可愛い動物が作れるように、その点を集中して練習しましたっ」


 ラウル君の純粋な笑顔に、流石のグレイ先生も、ウッとたじろいだ。


「お、おう。そのおかげか、ポトリーは魔力コントロールもだいぶ出来てるみたいだな。つーかお前、忘れそうになるけど、言うて特待生だもんな……何か才能の無駄遣いしてねぇか……?」


 そう、たまにうっかり忘れそうになるけれど、ラウル君は3属性持ちの特待生なのだ。


「ったく……折角3属性あるんだから、夏季休暇中は土魔法以外ももっと練習しておけよ? ほれ、次。マーク!」


「あっ、はい!」



 ええっと……私の課題は魔力コントロールで、魔力量の増減をきちんと魔法ごとに分ける事だよね。フォルト様とも一生懸命練習したし、頑張ろう。まずは低級魔法でほんの少しの魔力消費っ……


 私は心の中で、まずはなるべく小さな火でお願いしますっと祈った。



『灯せ ティーライト』



 ポゥッと私の指先1本に、ロウソクのような、小さなオレンジ色の火が灯る。


「うん、少量に抑えられているな。次、中級魔法」


 間髪入れずに、スパルタ先生から中級の指定をされた私は、魔力量の違いが目視で分かる魔法にしようと判断する。両手の手のひらを上にして前に伸ばし、イメージした。



『我を誘え 夏夜のキャンドル祭キャンドル・サマーナイト



 ポンポンポン、と私の周りに沢山のキャンドルが、オレンジ色の灯りを点しながらフワフワと浮かぶ。暗闇でやるともっと綺麗なんだよね、この魔法。幻想的な雰囲気に、ワァッと女子たちの歓声が上がる。


 これなら成功じゃないですかね……!



「よし、魔法はもう止めていいぞ。コントロールもほとんど問題なさそうだな。よく出来てる」


「ありがとうございますっ」


 私は先生からのお褒めの言葉に、顔を綻ばせながらそう返した。これも特訓のおかげだなぁ。


「そうだな……休み中は、もっと攻撃魔法を自主的にやるようにしろよ? お前、ビビってあんまり練習してないだろ」



 突然先生にサラッと指摘され、私は「何故それを知っている!?」という顔をして、思わず目を見張った。


「ふはは。先生はな、生徒の事が手に取るように分かる」


 ……ドヤ顔の先生を、私が何とも言えない表情で見つめたのは、言うまでもない。



 無事クラスの皆が、先生の厳しい魔法チェックを終えたところで、先生がまとめの言葉で授業を締め括る。


「じゃ、休暇中もしっかり練習しておくようにな。分かってるとは思うが、休み明けはすぐに前期試験週間に入る。森での実技試験もあるからな。学園内も、一定期間中は室内実技場や図書館、グラウンドの開放をしてるから、お前ら上手く使えよ〜」



 課題の多さと、休み明けの試験を考えると、ちょっとため息が出るけれど……


 何はともあれ、夏季休暇は目前なのだ……!



 

いつもありがとうございます(*´꒳`*)

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