第37話 初めての魔法薬学2
絵って、成績の評価基準に入るのか……? と、ふと疑問に思ったアリスティアです、こんにちは。
シェリの絵を見てちょっと驚いたけれど、サラもスケッチ出来たようなので、ひとまず図書館へ移動する事に。
図書館の自習スペースでは、既にクラスメイトの何人かが、教科書や薬草図表などを開いてレポート作成に取り組んでいた。私たちも空いている席に座り、本を広げてレポートに書き込みし始める。
えと、ペパーミントは先生が話していた効能以外にも、鎮静作用、麻痺作用、抗菌作用、胸焼けなどの症状緩和、それに……と、つらつらと書き込んでいて、はたと気が付く。これ、ミントの効能多すぎ問題だわ。ミント万能説ですね……
私は前世の記憶というか、ベースとなる知識が既に少しはあるので、初めて学ぶ皆よりも飲み込みは早いのだろう。多様な効能をふむふむと理解すると、スラスラと箇条書きにまとめていく。……これはある意味チートですよね、ごめんよ皆……
サラは、あまりペンが進んでいないようで、疲れた様子でグダッとしていた。
「よくスラスラとレポートが書けるな……」
「サラはあんまりこういうの好きじゃない?」
「魔法の勉強や実技は得意だが、こういう研究や座学は苦手だ……特にレポート作成な」
ペンをコロコロと無意味に転がすサラは、まるで宿題を嫌がる小学生である。
私は悪戦苦闘しているサラのサポートをしつつ、シェリから聞かれた事に答えたりしながら、レポートを仕上げた。3人とも無事、時間内にレポート完成である。
私達は、いつの間にか図書館に移動してきていた先生にレポートを提出した。先生がレポートにさっと目を通すと、少し驚いた顔をする。
「おや。マークさんは、ミントについてよくまとめられていますね」
「元々少しだけ知識があったので……」
専門の先生に、褒められるとやっぱり嬉しいものである。少しえへへと、照れた私なのだった。
先生はサラとシェリのレポートにも目を通したようで、シェリのレポートの絵を見たのか、ほんの一瞬だけ固まった。……が、さすが先生。何事もなかったかのように頑張ってまとめた事が伝わってきますと、褒めていた。
先生って、見た目は厳しそうだけど、意外と優しいんだな。
「そろそろチャイムが鳴りますね。授業時間内に間に合わなかった人は、今日の放課後まではレポートを受け付けますので、私の所まで持ってくるように。私は放課後、主に飼育場の建物内にある研究室に居ますので。それから次回の授業ですが、またハーブ園で行います。よろしくお願いします」
はい、解散。と先生が告げるのとほぼ同時に、チャイムが鳴ったのだった。
「ふー、机に向かうと肩が凝るよな」
そうボヤきながら、サラは大きく腕を上げて伸びをしながら廊下を歩く。
「サラったら……夏季休暇に入ったら、きっとレポート課題が沢山出るわよ?」
「そうそう。なにせ2ヶ月近くあるからね」
私も、シェリの言葉に相槌を打つ。ルルクナイツ魔法学園は『勉強する時はきちんと、でも休息はしっかりと』がモットーのようで、夏休みは2ヶ月間というのんびりスタイルなのだ。
まぁそれでも山程の課題があるから、遊びほうけている暇はそんなにないんですけどね……しかも特Aクラスだから、課題の難易度の事を考えると、今からでもゾッとする……
「うっ……そうだな。しかも夏季休暇が終わるとすぐに前期試験の期間に入るし……休み中は騎士訓練に力を入れるつもりだったのに……」
まぁまぁ、一緒に課題やりましょうよ、とシェリがサラを慰める。
私は夏季休暇と聞いて、近くにいたミレーユにふと思った疑問を問いかけた。
「ねぇねぇ、ミレーユは夏季休暇中どうするの? 2ヶ月もあるし、一度帝国の方に帰るとか?」
「そうね……私は折角だから、帝国には帰らずに、エタリオルの方で夏を過ごそうかなと思って。一応国を通しての留学生ということで、エタリオル王家が、休暇中の王宮滞在許可もくださっているのよ」
「え! じゃあ休みの間もミレーユに会えるの!? しかも王宮なら首都内だし近いね!」
私はテンションが上がって、わ〜いと、ミレーユの両手にハイタッチした。
「それなら私も王宮には定期的に行くから、休み中にも会えそうね」
「お、じゃあミレーユと一緒に、首都観光でもしようか」
「嬉しいわ。ありがとう、是非」
それにしても、王家は他国からの留学生に対して凄く丁寧な対応なんだな。でもそのおかげでミレーユとも休み期間中に会えそうだし、有難い。
「アリスちゃ〜ん。俺には休みの予定、聞いてくれないの〜?」
「わっ」
私の頭が、突然ズシっと重くなった。
「ルネ様……私の頭の上に顎を乗せないでください、背が縮みますっ!」
頭を押さえて、サッと避ける私。これ以上背が低くなりたくないんだ私は……!
それに何だって私の身近にいる美形は、過度なスキンシップを平然とするんだ……? 私の頭にフォルト様が浮かんだのは、言うまでもない。
「だって〜ちょうどいい位置に頭があったからさぁ。そんな事より、俺の予定知りたい〜?」
聞いて聞いてと言わんばかりのルネ様である。
「えぇ? いや、特には……」
塩対応の私にショックを受けたのか、ルネ様はみるみる悲しげな表情を浮かべる。待て待て、まるで私が悪者みたいじゃないか。
「知りたいな〜? ルネ様の夏のご予定〜」
周りにいたクラスの女子からの「ルネ様を悲しませちゃダメよ!」という圧力に負けた私である。もちろん棒読みだ。
「えへ。夏季休暇は帝国で用事があるから、ほとんどあっちで過ごす事になりそうなの」
そう可愛く小首を傾げながら、ルネ様はいい顔で笑った。
「いや、聞いた意味……」
クラスの女子は「えぇ〜残念ですわ……」と、ショックを受けていたが、私はそう呟かずにはいられなかった。
てっきり、暇だから遊ぼうとか言われると思ったのに、何だろうこの騙された感。というか、私がフラれた感があるの、ちょっと納得いかない。
むぅ……と不服な表情を浮かべていると、ミレーユが苦笑いをしながら、私にこう告げた。
「ルネ様はよっぽどアリスの事が気に入っているのよ。構って、イタズラしたくて仕方ないんだわ、きっと」
「おぉう……あんまり喜べないフォローをありがとう、ミレーユ……」
私はそう呟きながら、女子に囲まれているルネ様をジト目で見つめる。
「ほら、ルネの事は他の女子に任せて行こう。次は魔法石学だったか? 早く教室に戻らないと」
私はサラに言われてあっ、と次の授業の事を思い出したのだった。ルネ様の相手をしている場合じゃないや。
いつもありがとうございます(*´꒳`*)
 




