表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/160

第31話 見習い騎士様、応援します!

気が付けば長くなってました……!(当作比)

 



「でも王国騎士団の方達って、改めてすごいなって思ったよね」


 そう私がラウル君と話していると、サラが私たちの席のところにやって来た。


「ん? アリスもラウルも騎士に興味を持ったか?」


 話が聞こえたのか、ニコニコと嬉しそうにしている。興味はあるけれど、興味の意味合いがサラとちょっと違うのですよ。


「サラ、私はね? ものすごい運動音痴なの。騎士様のような動きが出来たら、それはもう世紀末だよ」


「僕も運動はそんなに得意じゃなくて……」


「そ、そうか。でもよかったら、これを機に騎士見習いの訓練風景でも見に来ないか? 2人が来たら、きっと場の士気も高まると思うんだが」



 この学園では、騎士志望の子や騎士科の先輩方が、放課後に集まって自主訓練に励んでいるらしい。サラも入学して、すぐに参加していたそうだ。部活動みたいな感じなのかな。


 私が行ったところで場の士気が上がるとは思えないんですけども……? まぁ、ラウル君なら確かに老若男女問わず、癒しを与えられると思うけど。


「う〜ん、見習い騎士様たちの士気を上げるなら、シェリが適任だと思うけど……あ、折角行くならシェリも誘う?」



 私が顎に手を当てて考えながら話すと、教室にいた見習い騎士の男の子達が、ピクリと肩を動かした。……お?


 サラがそれを見て、ニヤリと笑う。


「よし、シェリも誘おう。友達が見に来てくれるのも嬉しいし、訓練にも力が入っていい事ずくめだな」と言いながら、サラは足取り軽く、シェリの元へ向かうのだった。


 フットワーク、軽いなぁ……


 あっという間に、シェリに放課後の約束を取り付けたサラなのであった。




 ────────────────




 放課後、私とシェリ、ラウル君は教室棟から出てすぐの、屋外グラウンドに足を運んだ。


 グラウンドは室内実技場の屋根なしバージョンのような形で、コロッセオ風の造りである。


 既に訓練は始まっていたようで、木刀を使った打ち合いが行われていた。私たちはひとまず、階段状になっている観覧席の、1番前の見えやすい席に座って見学する事に。私たち以外にも、女の子の見学者が結構チラホラときているみたいだけれど、なんでわざわざ士気云々の話を、サラはしてたんだろう……?


「わぁ……迫力がありますね……」


「うん。木刀だけど、音もすごいね……」



 グラウンド場内に、木刀の打ち合う音が響く。やっぱり普段から鍛えている人達は違うなぁ……と、私とラウル君は感心しっぱなしであった。


「あら、あそこにいるのがサラかしら?」


 シェリが見つめる方向に、サラらしき赤髪ポニーテールの後ろ姿が見えた。顔は面を付けているので分からなかったが、きっとあの髪型はそうだろう。


 サラは、驚く事に男の子と互角にやり合っていた。いや、なんなら優勢である。あの辺境伯ナースズ家で鍛えているだけの事があるなぁと、私は感心した。



 しばらく訓練を眺めていると、ひと段落ついたのか、休憩時間になったようだ。私たちは席から立ち上がり、観覧席の前にあるフェンスに手を掛けて捕まりながら「サラ〜〜〜」と、グラウンドに向かって声を掛ける。


 声が届いたのか、サラが面を取って頭を払った。こちらを振り返り、「アリス、シェリ、ラウル」と、片手を挙げて笑顔で答えてくれる。


 あ、その仕草はかっこいいわ、サラ。


 と、私が思ったのも束の間。近くに座っていた女の子たちの「キャアッ!」という黄色い悲鳴が上がった。


「サラ様ぁー!」や「はぁ……素敵ですわ……」などの声も、後ろから沢山聞こえて来る。


 もしかしてこの女の子たち、ほとんどがサラのファンなのでは……?


 私は士気を上げるの意味が、何となく分かった気がしたのだった。他の見習い騎士様、ご愁傷様です……



 ふとグラウンドを見渡していると、同じクラスの男の子と目があったので、労いも込めて「頑張ってください〜」と手を振る。


 男の子はたちまち顔を赤らめたかと思うと、ものすごい勢いで、ペコッとお辞儀を返してくれた。私の応援なんかでやる気を上げてくれるのなら、是非とも応援させていただこう。


「よしっ! シェリもラウル君も、見習い騎士様を応援しようっ?」


「えっ! ぼ、僕もですかっ!?」


「ふふっ、今日は騎士様たちへの応援デーね。頑張って応援しましょ? 私もラウル様に笑顔を向けられたら、心が休まるもの。騎士様方の疲れも、きっと吹き飛ぶと思うわ」


 これぞセラピーラウル君だ……!


 シェリにもそう褒められ、ラウル君も「そ、それなら頑張りますっ!」と言ってくれた。


 私たち3人はよーし、と意気込んで、笑顔で応援をしたのだった。




 ────────────────




 アリス達が観客席に腰を下ろしていた頃。


 グラウンド場内では、実はこんな会話が飛び交っていた。



「お、おい! あそこに座ってるのって特Aクラスの有名な1年生じゃないか?」


「うわっ、カルセルク公爵家のシェリーナ様だ! やっぱりすごい美人だな……お美しい……」


「真ん中にいるのって、アリスティア・マーク嬢じゃね? え、めちゃめちゃ可愛い」


「ちょっと待って、その隣はラウル・ポトリー君じゃない!? 平民だけど貴族からも愛されるザ・天使! やだ、浄化されちゃう!」


 ちなみにこれは、騎士科のお姉様の発言である。


「ふふふ、先輩方? あの3人は私の友人ですけど、騎士に興味を持ってくれて、見学しに来てくれたんですよ」


 サラがドヤ顔でそう話すと、グラウンド内がざわついた。


「ちょ、おま……あれだけ女子ファンを捕まえておきながらも、あんな美人たちとも友人って、羨ましすぎるだろ……」


「友人になったのはたまたま気が合ったからですけどね。先輩方が、士気を上げたいってボヤいてたじゃないですか、だから見学に誘ったんです。私も友人が見に来てくれたらやる気も上がりますし。更には場の士気も上がって、いつも以上に鍛えられて最高ですよね」


 サラの発言を聞いた先輩は、死んだ目でジトッと見ながら「お前も一応辺境伯のご令嬢なんだから、戦闘狂ってあだ名付けられないように気をつけろよ……」と忠告したのだった。



 騎士科の先輩の有り難い忠告は、全く聞こえていないフリのサラなのである。




 ────────────────




 おまけ


 〜アリスが同じクラスの男子に手を振った時〜



「……っ!! マーク令嬢、俺の事覚えてくれてたんだ、うわー嬉し!」


 手を振られた男子は、赤くなった顔をパタパタと仰ぐ。



「お前、同じクラスでまじ羨ましいな……」


「俺もパタナーシュ様みたいに、アリスちゃんって呼びたい……」


 近くで見ていた男子達は、そんな事を思い思いにボヤいていたのだった。



いつもありがとうございます(*´꒳`*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ