第3話 マーク侯爵家
「うぅん………?」
目が覚めると、自室のふわふわベッドの上でした。
待て待て、外がもう真っ暗なのですが……? 私はベッドから窓を見つめて、外の暗さに驚いた。
「え、お昼前には神殿に居たのに……まさかの夜?」
ひぇ、さすがに寝過ぎだわ……
というか、15歳にもなって気絶とか、恥ずかしすぎる。
そもそも突然の情報量の多さが問題なのだ。私だってそんな病弱体質とかじゃないもの。二大ドッキリのせいです、絶対。
ふむ、と私は少し考える。まぁ思い出した前世の人格は、幸いにも今の自分と重なるところがあると思うから、その内問題もなくなるだろう。
でも前世の知識がこの世界で使える物なのか、はたまた異端になってしまうのかは……まだよく分からないから、とりあえず一旦保留でいこう。前世でそんな秀才とかじゃなかったし。ザ・平凡だったから、大丈夫大丈夫。
うんうん、と1人でベッドに座りながら頷いていると、コンコンコンと小さなノック音が聞こえた為、はい、と返事をする。
「お嬢様!? お目覚めになられましたか!?」
私の返事があった事に驚いたようで、メイドのデイジーが慌てて入室してきた。
「うん、もう大丈夫。心配かけてごめんね」
「そんな事ないです! お嬢様の意識が戻ってよかったです……私、旦那様たちにお声がけしてきますね!!!」
デイジーが再び慌てて退出していくと、すぐに父様たちが様子を見に駆けつけてくれた。
「アリスゥゥゥゥゥッ!!!」
「ぐぇ」
父様のトライアタックに、思わず私の口からは潰れた声が漏れた。心配してくれたのは嬉しいですけど、ちょっと、いやかなり苦しひ……
「おっと、すまんすまん。具合はどうだ? 痛い所とかないか?」
パッと手を離し、心配そうにそう話すのは、子煩悩で有名な父様のオリバーだ。マーク家現当主であり、前世の言葉で表すなら農林水産大臣の職につく父様は、仕事はバリバリこなす完璧人間なのに、娘が好きすぎて暴走する点がたまに傷である。
「うん、父様。心配かけてごめんなさい。むしろ魔法検査という大切な時に気絶なんて、恥ずかしすぎて穴があったら入りたいくらいで……」
私は眉を八の字にして、へにゃと情けない顔になる。
「いつも元気なアリスが倒れるなんて、よっぽどの事だって皆心配したのよ。神官長様に伺ったけれど、検査の時に基礎属性が4つ全て発現したって……本当なの?」
私の頭を優しく撫でながら、そう話すアイヴィー母様に、私は静かにコクンと頷いた。
まさか自分が4つの基礎属性を持っているなんて、思ってもみなかったから、本当にビックリした。マーク家自体も、先祖代々優秀な家系ではあるが、4属性持ちは今までいなかったのである。そもそも4つ適性があるという事はとても稀で、エタリオル王国内で確認されている数は、わずか10数人だと言われている。
ちなみに、その中でも特に有名なのが、エドワード・エタリオル陛下とその息子、ユーグ殿下の2人だ。
私の前世の記憶が甦った事と、4つ適性があった事は何か関係があるのかな……?
う〜ん、と首を傾げている私に、兄様であるクリストフが心配そうに近寄ってきて、話しかけてくる。
「アリス、どうした? 大丈夫か?」
「クリス兄様」
「急にこんな事になって驚いただろ? 頭とか痛くないか?」
「うん、大丈夫。ありがとうクリス兄様。……なんで私が4属性持ちなんだろうって考えてたの」
「そうだな……うちの家系では4属性持ちはいなかったらしいし、不思議だよな。魔力量もかなりあったそうだから、魔法が使えるようになれば、アリスに困る事にはならないと思うけれど……」
「父上、この件は王家にも、早めに伝えるべき事案ですよね?」と、クリス兄様はくるりと向きを変えて、父様に向き合い、そう話す。
「うむ、そうだな……4属性持ちは希少である故に、王家への報告義務もある。懸念すべき点も多々あるしな……とにかく明朝にでも、私が国王への早急な謁見を申し出ておくよ」
おぅ……大事になってきたぞ……?
もうこの流れでは「前世の記憶も、ついでに甦ったんですー!」なんて言えないし、そんな空気じゃないよね。
信じてもらえるかも分からないし、今こんな事言ったら、倒れた時に頭でも打ったのかと心配されそうだしなぁ……
うん、とりあえず黙っておこう、そうしよう。
いつもありがとうございます(*´꒳`*)