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第24話 謎めく保健室

 



「よっと……じゃあ行きますか〜」


 ラウル君を背中におぶり、歩き出すルネ様の後を、私は付いていく。


 保健室は本棟内にあるので、ここからだと少し距離がある。私は、背が高いけれど細身なルネ様がちょっと心配になった。



「人って重たいって聞きますけど、ルネ様大丈夫ですか?」


 私、途中交代しますよ、と声を掛ける。



「いやいや、流石にご令嬢の背中に男は乗せられないよ〜 アリスちゃんって本当面白いよねぇ〜」と笑って返された。


 わりと本気だったのになぁ……



「……ていうかアリスちゃんもいい加減、敬語はなしにしてくれていいんだよ? ミレーユ嬢の事も名前呼び捨てにしてたし〜俺もせめて敬語はなしにして欲しいなぁ〜?」



 あれ、そうか。ルネ様に対してはなんだか敬語が抜けきらなくて、そのまま喋っていたのかと、言われてから気が付いた。



「う〜ん……じゃあ慣れるまでにたまに敬語も混ざっちゃうと思うけれど……頑張る」


「はい、よろしく〜」



 この人、本当に貴族の家柄の方なのかと疑ってしまうのも、私は悪くないと思います。


 私は気を取り直して、道案内しようとも思ったが、迷子になった前科があるから役に立たない。うぅ、私が付いてきた意味がまるでない……あ、怖い(かもしれない)先生対応があったか……



 そうこうしている内に、着きました。噂の保健室。


 この扉の向こうに、一体どんな先生が……?


 私はラウル君をおぶっているルネ様に代わって、保健室の扉をノックする。そっと扉を開いて「失礼しま〜す……」と言いながら、ちょこっと覗いてみた。



 保健室の中は、前世でいうところの、学校の保健室とほとんど同じ造りのようだ。


 ただ、部屋の中は思っていたよりも広く、部屋の奥にはカーテンの仕切りがあるベッドが何台も置かれている。手前に診察台は勿論の事、ちょっとしたローテーブルとソファーの応接室セットも置かれ、沢山の薬品棚が壁際にズラリと並べられていた。


 奥にもまだ部屋があるのだろうかと思っていた矢先に、奥からガチャッと扉が開く音がした。そこから紫色のロング髪の、推定40代くらいのスラリとした美魔女が現れたのである。



「ん〜? まだ授業時間中じゃない。何かあったの?」


「あっ、はい! 魔法学の実践中に初めて魔力枯渇を起こした子を、グレイ先生の指示で連れてきました!」


「あらあら。じゃあひとまず、その子をとりあえずベッドに寝かせましょうか」



 んん?


 意外と普通に会話出来てる……全然怖くないし、むしろ美人で優しそうな先生だ。私がグレイ先生の冗談だったのかとホッとした、のもつかの間だった。


 美魔女先生が、保健室に入ってきたルネ様とラウル君を視界に入れると、途端に目を見開いた。



「やだぁ、ポトリー君もだけど、今年の新入生は豊作なのねぇぇぇッ!?」



 先生はカツカツカツと靴を鳴らして、ものすごいスピードでルネ様に近づく。


「クラスはッ? ポトリー君と同じクラスなのッ? 名前は何て言うのッ?」


 ……恐ろしく早口で、質問攻めにしている。


 ルネ様もまさかの展開に驚いたのか、呆気に取られて固まっている。あれ、珍しい。



 そんなカオスな空間で、私は「先生がラウル君の事を既に知っていたのは、小鳥の件で保健室に来たことがあったからか〜」と思い当たり、1人で納得していた。


 ……はッ!


 そんな事より、これがグレイ先生の言っていた危険か……!



「せ、先生っ! 美少年は逃げないので、ひとまずラウル君の枯渇状態を診てあげてくださいっ〜!」



 私は先生の腕を両手でギュッと掴んで、ぴーぴー言いながら必死に止めた。ん? 先生ってスラッとしてるけれど意外と腕はしっかりしているのですね。


 先生はハタと我に返ったのか、私に気づくと、マジマジと私の顔を至近距離で見つめ始めた。



「……あら? あらあら? やだ、あんたもよく見たら小動物みたいで可愛いじゃないの」



「ひょえっ」



 美魔女先生の許容範囲、広すぎでは……!? 私が対応に困っていると、ルネ様がようやく通常モードに復活したようだ。



「先生? とにかくラウル君を寝かせてあげてもい〜ですか?」


 その一声で、先生はラウル君に興味が戻ったようだった。ベッドへ誘導し、無事ルネ様はラウル君を下ろせたのでした。大変お疲れ様である。


 美魔女先生は、ラウル君の熱を計ったり、首筋に手を当てたりと確認をしながら、魔力枯渇の説明をしてくれた。



「魔力枯渇はねぇ、単に疲れすぎってだけなのよ。魔法を使う度に体力を消耗するって感じかしらね。だからよっぽどの事がない限り、寝れば戻るの。この分だと1時間くらい寝たら目は覚ますと思うわ。それまでどうする? お茶でもしてく?」


「嬉しいお誘いですけど〜俺たちグレイ先生に、ラウル君を送ったら教室に戻るように言われてるんです〜」


 ルネ様に便乗して、私もうんうん、と頷く。


「私も一旦教室に戻って、ラウル君の荷物を取りに行ってきます!」



「そ〜お? 残念ねぇ……じゃあポトリー君の事は任せて。帰り支度が終わったらまた来てちょうだいな」


 はいっ! と返事をして、保健室から脱出した私達なのだった。



「ふぅ……私、危険緩和できてたのかな……?」


 テクテクと教室に戻りながら、思わずボヤく。


「アリスちゃんのおかげでバッチリだよ〜? ありがとね。俺より保健室に残したラウル君がちょっと不安ではあるけど……さすがに寝てる子にちょっかいは出さないか。でも、アリスちゃんもあの先生には気をつけた方がよさそうだねぇ」



 ルネ様は「あの先生、可愛い女の子も好きなんだねぇ。何なんだろう、どっちなんだろう」と、私を横目で見ながら首を傾げている。


「んん、距離感にはちょっと驚いたけど……でも私は同性だし、大丈夫だよ?」



 意味ありげに微笑むルネ様に、私は「何ですかその怪しい笑顔は」と問いかけるが、結局教えてはくれなかった。


 そういえば先生の名前も聞きそびれたし……


 なんだか謎めいてます、この保健室……!




いつもありがとうございます(*´꒳`*)

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