第23話 初めての魔法枯渇は誰?
「さて、じゃあ自分たちの魔力量と相談しながらやっていくか」
サラが私たちに、そう声を掛けた。
「サラ嬢とアリスちゃんの魔力量が多いってのは、さっきので分かったよね〜 俺もまぁ普通より少し多いくらいかな?」と、ルネ様が続けて話す。
ミレーユは「私は2属性持ちですけれど、魔力量はルネ様と同じく、普通よりやや多め、といったところですわね」と語った。
「私は大体ですけれど……2属性持ちの標準量だと思います」
シェリは少し考えながら答えた。光属性持ちだから、不可解な点もまだあるのだろう。
「僕は属性数の割に魔力量がそんなに多くないんです。なので少ない魔力で、持続性のある可愛い動物を生み出せるようにしたいです!」
「かわいくて強かったら最強ですわね。私は折角なのでもう1つの土属性を試してみますわ」
ミレーユは、ラウル君の意気込んだ様子を、微笑ましく見つめながら話す。ミレーユはラウル君の母様なのかな。
「ラウル君は動物の事になると、ちょっと人が変わるよね。私は火の初級魔法で魔力制御の練習します〜」
「お、じゃあアリスがやる時に、私も隣で同じ魔法を発動させようか。威力の比較になるだろう?」
「あ〜それ面白そうじゃん〜! 俺も仲間に入れて〜」
そんなサラの提案に、ハイハ〜イと、ルネ様まで乗ってきた。ゆるい。
シェリはそんな私たちの掛け合いを見て、クスクスと笑い「それは画期的ね? 私もアリスみたいに、水の初級魔法でひとまず慣れる事から始めようかしら」と、言った。
「あら、シェリーナ。それだったら私と一緒に水魔法を発動させて、比べてみましょうよ」
水属性持ちのシェリとミレーユも、この方法を試そうという話になったようだった。助け合い、大切ですよね。
そんな中、ラウル君はうう〜ん、と悩みながら、羊以外にもヤギやモルモットなどを創り出して練習していた。あ、この子やっぱり動物のクオリティは諦めてなかったんだ。……にしてもすごい集中力だなぁ。
その内にラウル君はフラフラ〜っとしたかと思うと、ぺしゃんと床に座り込んで、そのまま倒れてしまった。
「わー!? ラウル君大丈夫っ!?」
駆け寄ってあたふたする私の横で、サラは倒れたラウル君の顔を覗き込んだ。
「アリス、大丈夫だ。ただ寝てるだけみたいだぞ?」
「グレイ先生〜 ラウル君が魔力枯渇したっぽいです〜」
ルネ様がは〜いと手を挙げて、先生を呼ぶ。どれどれ、と先生は特に焦った様子もなくのんびりとやって来た。
「最初の魔力枯渇はポトリーだったかぁ。んじゃパタナーシュ、保健室までちょっと運んでやってくれ。あとマーク、お前も付き添い要員な」
私はキョトンとして「私もですか?」と返した。
先生はラウル君とルネ様をチラッと横目で見ると、顔をしかめた。いや、何でですかね?
「保健室はなぁ……危険がいっぱいなんだよ。お前がいた方が少しは緩和されると思うんだ」
「……? 保健室なのに危険なんですか?」
えぇぇ……? 何なんですか、その保健室。じゃあ誰も行きたがらないのでは……
「いや、まぁ腕は確かだから安心しろ。そもそも本当に危険だったら、学園長が許可してないだろ? もう30分もしたら授業も終わりだから、ポトリーを送ったらこっちに戻らず、そのまま教室に行っちゃっていいからな」
ほれ、行った行った、と室内実技場のグラウンドから押し出されるようにして、追い出された私たちである。
どうか、怖い先生じゃありませんように……
そう祈るより他ない私なのだった。
いつもありがとうございます(*´꒳`*)