第21話 初めての魔法学 実践編 2
「②の紡ぎ言葉と③の魔法古語が2つで1つみたいな所があるのは、もう座学で学んだな? でだ。魔法を発動させる時に、魔力量ってのが重要になってくる。属性検査の時に言われた、自分の魔力量を覚えているか? あれはあくまで大体の目安だから、今後自分で自分の魔力量を把握していく事になる」
まぁ体感するのが1番だからな、とにかく実践実践、と言いながら、グレイ先生は私たちを見渡してニカッと笑った。
「そしたら、俺が横で付き添うから、1人ずつ魔法発動に挑戦していくぞ。使ってみたい魔法があるやつは、それを試しても構わないが、魔力量の少ないやつは無茶しないように。魔力がゼロになると数時間は倒れて動けないから、疲労困憊ぐらいのギリギリを攻めていけよ〜?」
……先生、スパルタです。
なんならイキイキしてますよね……
「あと、複数属性持ちは、まずは1つの属性魔法からスタートするように。応用魔法といって、複数の属性を組み合わせた魔法があるんだが、それは発動させる難易度が高いからな。また今度だ」
グレイ先生は、持っていたバインダーの名簿らしき物をペラペラとめくりながら話した。特Aクラスは複数属性持ちが結構いる為、先生は最後にそう忠告をする。
「じゃあやる順番は席順でいいか。あ、それから魔法を発動させる時は、必ずあの防御壁に向かってだぞ。人に絶対向けるなよ」
50m程先にある、先生がさっき魔法を放った防御壁は、壊れず、しかもヒビ1つ入っていないみたいだ。
どうやらこの防御壁は、魔法石でそういう仕様にしている、特別な訓練用のものらしい。
「シェリはやっぱり、まず水魔法に挑戦?」
私は隣にいたシェリに聞いてみた。
「そうね、水で魔法の発動のコツを掴みたいわ。アリスはどの属性魔法にするの?」
「どうしようかなぁ……目に見えて分かりやすいのは、先生みたいに火だよね。でもあんな攻撃的なの、出来る気がしない……」と、私は教科書をめくりながら答えた。
そう話している内に、シェリの順番がやって来た。
シェリは防御壁の前にさっと立つ。魔力をまとい、手を前にそっとかざして、少し小さな声で言葉を紡いだ。魔法が発動するかどうか分からないのだから、さすがのシェリも不安に思っているだろう。
『降りしきれ 恵みの雨』
シトシトと、防御壁を上から囲うように雨を降らせた。私はやったね!という思いを込めて、シェリに向けてパチパチと拍手を送った。
「よし、カルセルクも問題ないな。速く発動出来てるし、範囲を広げたらこの魔法、中々便利そうだぞ。このまま水魔法の練習を進めて、慣れてきたら光魔法に挑戦していったらいい」
グレイ先生からもお褒めの言葉をいただき、シェリもホッとした様子で頷いた。
その後、順番がきたのはサラである。サラは背筋をピンと伸ばし、落ち着いた様子で、銃に模した手の構えをした。
あれ、この構えをするって事はもしかして、グレイ先生と同じ火魔法?
『狙撃せよ 火炎狙撃銃』
パンッパンッパンと数発連続で、勢いよく火の玉が防御壁に向かって飛んでいった。クラスの皆も、その威力に驚いた様子で、サラに注目が集まる。
サラってば、そこそこ魔力量を消費するって教科書に載ってたやつを、楽々こなしてる……!
しかもこの火魔法、先生が発動した火魔法より上の、中級レベルのやつだ。
グレイ先生は「ナースズ……お前中々いい性格してんな……」とちょっと引くついてました。
サラは、そんな先生の言葉を特に気にしていない様子で、しれっとしていた。戦闘力も精神力も強いとは、恐れ入ります。
その後も順番は巡り、皆思い思いの属性魔法を試している。留学生のサリソン様はシェリと同じ水魔法を、同じく留学生のルネ様は風魔法を試していたようだった。
そろそろラウル君、そして次に私の番である。ラウル君は何魔法にするんだろう? 自分の順番もすぐ次なので、私は側で見学する事にした。
ラウル君は両手を、中に何か包み込むような形にしたかと思うと、腕を真っ直ぐ伸ばし、その両手を前に広げて言葉を発した。
『創造 錬金羊』
両手から土で出来た羊が生まれたかと思うと、防御壁に向かってタッタカ駆け出して、消えていきました……ええぇ、可愛い。
羊のクオリティが高いのは、きっとラウル君の動物好きがイメージに干渉しているからなんだろうな……
「……ポトリーはなんだ、あれだな……動物のクオリティが高いな……お前、今後クオリティにこだわって魔力を使いすぎないように気を付けろよ」
先生はちょっと呆れた様子で、そうアドバイスする。ラウル君は「はい!」と笑顔でいい返事を返していた。
「次はマーク。ほれ、ポトリーと交代して、前に立て」
いよいよ私の番である。
いつもありがとうございます(*´꒳`*)
次回はアリスが頑張ります。