第150話 エピローグ
──あれから2回季節が巡り、再び春の花が咲く頃。
「アリス〜! もうそろそろ式に向かわないとマズイんじゃないか?」
「うわぁぁぁ、サラ、ミレーユ待って!」
卒業式当日に、ようやく馬車に積む最後の荷物準備を終えた私は、バターンと寮の扉を思い切り開けた。
「もう。シェリは卒業生代表の挨拶があって、ラウル様と玄関で待ち合わせてるからって、先に行ったわよ?」
「えへへ、ごめん。荷物が思ったより全然まとまんなくて……」
「アリスは荷物を実家に送る事にしたのか」
「うん。ひとまずはクリス兄様やユス君と同じように、家から研究所に通おうかなって。家でユス君とも一緒に過ごしたいし」
「結局私とアリス以外は皆、進路がバラバラになったわね」
「まぁ……女子4人は同じ職場みたいなもんだけどな?」
そう言ってサラはニカッと笑った。
確かに王宮と、私とミレーユの職場になる研究所は隣同士だから、あながち間違いじゃないかも。
シェリは勿論殿下の婚約者として王宮に。卒業してからは王宮に本格的に住んで、結婚式の準備やら色々と忙しくなると話していた。
王宮騎士試験に無事受かったサラは、王宮に併設された騎士寮に住みながら、王宮で勤務する事になった。ゆくゆくはシェリの専属騎士になると、今から意気込んでいる。
ラウル君はというと、卒業後も学園に残り、ローラン先生の元で助手として仕事をするらしい。魔法薬学や動物についてもっと学びたいんです、と話していたラウル君。いつかは魔法薬学の先生になるのかな。
ルネ様は、なんだかんだでリバーヘン帝国の高位貴族の子息なので、卒業後は帝国に帰り、フィリップ殿下の手伝いをするらしい。「アリスちゃんに会えないのは寂しいから、定期的に遊びに来るよ〜」と冗談を言っていた。
1番驚きなのは、ミレーユ。紆余曲折あって、最終的には帝国に帰らずエタリオルに残る事になった。私と同じく、研究所で魔法石や魔法の研究に取り組む。
私達は足早に卒業式の会場へと向かう。この見慣れた景色とも、いよいよお別れなんだよね。
こうやって、3年間皆と過ごした学園を卒業するのは寂しいけれど……また新しい世界に踏み出す事に、ワクワクしてる私がいる。
少しは成長、できたかな?
「そういえばアリスは、氷の騎士様との今後についてはどうなってるんだ? それこそ結婚とか」
「んぇっ!? いや、私の研究所での仕事が落ち着くまで、ゆっくり待ってくれるって話でして……」
「ふぅん……卒業したらすぐにでも結婚したそうな雰囲気があったのに、意外と理解のある方なのね」
「あの人は誰よりもアリスの気持ちが最優先で、尚且つ溺愛してるからなぁ……」
「アリスといる時の氷の騎士様、もう氷だなんて言えないわよね」
「そうだな……でも騎士団にいる時は、恐ろしい氷の騎士様はご健在だからな……?」
「んんん、私の事よりもっ! ミレーユは研究所に行ったら、本格的にアタック頑張りなよ? クリス兄様を狙ってるご令嬢、最近急増してるんだから」
たちまち顔をボンッと赤らめたミレーユを見て、私とサラはニヤリと笑った。この3年間の学園生活で私達の心の変化も、忘れられない思い出も、沢山出来たのである。
その話はまたいつか、どこかでゆっくり皆と語れたらなぁ。
会場に到着すると、先に着いていたシェリやラウル君、相変わらず女の子に囲まれているルネ様の姿も見えた。来賓席には王族の方々、保護者席には家族。そしてフォルト様も見に来てくれていた。
フォルト様とパチリと目が合って、私は思わず笑って手を小さく振った。殿下の護衛も兼ねているから手は振り返されなかったけど、小さく頷いて微笑んでくれた。
式典が始まり、1人ずつ名前を呼ばれて壇上へと向かう。
あっという間に私の順番となり、学園長に卒業証であるピンバッジを制服に付けてもらった。
ルルクナイツ魔法学園の紋章に、小さな粒の宝石がキラリと光る。このピンバッジの宝石は、1人1人のイメージにあったものを先生方が選んでくれているらしい。私のは多分、ピンクダイヤモンドだと思う。
「マーク君、卒業おめでとう。君の志が希望に満ち溢れん事を、この魔法学園から祈っておるよ」
「はい……! ありがとうございます!」
今なら私、前世の自分、陛下に向かって宣言した時の自分……そしてこれからの自分にも、胸を張って言える気がする。
私、特別な力を持って、この世界に生まれてよかったよ。
これからも、その先も。
大切な人達と今を生きていくから。
「魔法の世界でサポートします!」
それが私の世界を守る、私だけの魔法の紡ぎ言葉だ。
──終──
「魔法の世界でサポートします!」本編は、これにて完結とさせていただきます。
本編はここで終わりますが、番外編を数話掲載予定です。(時が少し遡って、2年生の修学旅行で友好国である水の都市アヴィニョンに行くお話です)
11/5(金)から、変わらず毎週月・金の更新をしていきます。
又、完結設定は、番外編が終了した後にさせていただくつもりです。
最後に、ここまで読んでくださった読者の皆さま。
本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
ありがとうございました!




