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第14話 襲来

 



 先生が教室から出て行った後、皆はガヤガヤと話しながら、思い思いに帰り支度を始めた。


 私は折角だから、シェリにラウル君を紹介したいなと思い、ラウル君にちょこっと時間をもらって、一緒にシェリの席へ向かった。



「シェリ、お友達になったラウル・ポトリー君。ほら、入学式の前に会ったって話してた子。ラウル君、知ってるかもだけど、この子がシェリーナ・カルセルク。私の小さい頃からの友人なの」



 シェリはラウル君をじっと見つめると、あぁ、と思い出したようだった。


「特待生の挨拶をされてましたよね。初めまして、シェリーナ・カルセルクと申します。これからよろしくお願い致しますね」



「はわっ、こちらこそよろしくお願いします! ラウル・ポトリーです。カルセルク様の挨拶もとても素敵でした!」


 アワアワとしながら話すラウル君も、可愛くて大変癒されます。



「というか、アリス様ってカルセルク様とお友達だったんですか? すごいですっ」



「うん? そうだよ。やっぱりシェリは目立つよね」



「え? いえ、アリス様も充分目立つとは思いますけど……まさか公爵令嬢の方と、初日からお話しする事になるとは思ってもみませんでした」


 普通に平民として暮らしていたら、有り得ない事ですよねぇ、とラウル君は微笑んだ。



 私はそんな中「目立つ……ってもしかして悪目立ちしてる?」と1人不安になっていた。え、気をつけよっと……


 私が思考を飛ばしている間にも、2人は仲良く会話を続けていたようだ。



「ね、私の事もアリスみたいに、気軽に呼んでくれて構わないわ。だから私もラウル様と呼ばせてちょうだい?」



「わわわ、ありがとうございますです! 勿論です、というか僕に様付けは勿体ないです。僕もシェリーナ様と呼ばせてください!」



 女神と天使の会話は心が休まります、とほのぼのしていたら、廊下がやけに騒がしくなった。なんだろう? と思っていると教室の扉が開き、心休まらないアイドル達が襲来してきたのである。そう、アイドル殿下の登場だ。



「シェリ、迎えに来た。案内も兼ねて寮まで送らせて?」



 シェリに向けた、殿下のキラキラ王子様スマイルを直視した、教室内の女子達は「キャアァッ!!!」と黄色い悲鳴を上げた。新入生にはちょっと刺激が強かったようです。


 しかも殿下と共に、フォルト様とエヴァン様もいらしたものだから、皆さらに大騒ぎなのだった。



「ひぇぇ……殿下と氷の騎士様、それに補佐様のスリートップに、こんな間近でお会いできるなんて……」



「ひゅ〜、シェリーナ嬢ってば愛されてるねぇ〜」



 ラウル君は恐縮しっぱなしの様子だったので、私はなんだか、初日からびっくりさせてごめんね、と申し訳ない気持ちになった。


 後者は恐らくパタナーシュ様の声だったようだけど、冷やかしは放っておこう、そうしよう。



 教室内を見渡すと、令嬢たちの中には殿下の事を諦めてない子もいるのだろう、羨望や嫉妬の目でシェリを見つめている子もいる。女の子の嫉妬は怖い。ひぃ。



 はたと気がつけば、殿下から少し離れて後ろに控えていたフォルト様が、私の横にいた。腕を組んで、殿下とシェリをジッと見つめている。あれ、いつの間に。



「フォルト様、こんにちは」


 私の挨拶にフォルト様は、顔をチラリとこちらに向けたかと思うと、また視線を殿下たちに戻して、話し続けた。



「ん。クラスはどうだ? 馴染めそうか?」



「はい、もうお友達も出来たんですよ」


 ふふーっと手で口を押さえ、自慢げに笑う私を見て、フォルト様はまたほんのちょっとだけ、小さく口角を上げて「そうか」と微笑んだ。皆は気づかないくらい、ほんとにちょっぴり。


 フォルト様に報告ができて、私はそれだけで満足なのだ。



「こんにちは、アリスティア嬢」



「あっ、エヴァン様」



「騒がしくしてごめんね。殿下がどうしても初日は迎えに行きたいって言うからさ」



 私達のそばに寄ってきたエヴァン様は、苦笑いを浮かべながらそう話した。エヴァン様もあざとい王子様の為のスケジュール調整、大変なんですね。



「アリスティア嬢も、よかったら一緒に寮に戻らない?」


 私はエヴァン様のお誘いを有り難く受ける事にした。1人で寮に戻れる自信もないしな……


 ラウル君にまた明日ね、と告げて教室から出た。




 殿下とシェリは2人並んで、仲睦まじい様子で会話をしながら歩き、私達3人はその少し後ろを歩いていた。


 教室棟を出て、中庭を通り過ぎようとした時。



「……ん?」


 ふとなんだか不思議な視線を感じ、立ち止まって後ろを振り返る。



「アリスティア?」



「あ、今行きます!」


 フォルト様に声をかけられ、慌てて返事をする。


 視線を感じた場所をもう一度見つめるが、誰も、何もいなかった。



「……んんん? 何か猫みたいな視線を感じた気がしたんだけどなぁ……」


 首を傾げつつも、先を歩く皆の後を、ててっと追いかけたのだった。




 ???「……あれ? あの子ってそんなにカン鋭かったっけ?」


 そう小さく呟かれた声は、私の耳には届かなかった。




ハテナの人は、また今度登場します。


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