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第133話 魔法石学 冬の特別編2

 



 項垂(うなだ)れていた顔を上げると、サラは腹を括ったような表情で、石をグッと握りしめた。


「オッケー、やってみる」


 そう気合いを入れると、フワッと素早く魔力を纏って、魔法を唱えた。



『硬き守り、祈り捧げよ 防御(ディフェンス・)(ウォール)



 サラの魔法は石にスムーズに吸い込まれていき、魔法を入れ終わった時には、輝きを増していた。


「うん。赤は余裕だな」


「ん。じゃあ僕も防御魔法、このループタイの石にかけるね」


 私達は、その様子をしっかりと見学させてもらった。ユス君は先程と同様に、難なく魔法石を完成させる。


「ポイントは、反発させないように」


 自分の魔力を色に置き換えて、石本来の色に、自然に溶け込む様にするイメージらしい。私達はふむふむと、ユス先生のアドバイスを真剣に聞き入った。


「石に無理は、させちゃダメ」


 魔力を入れ過ぎたら、石は壊れて元に戻らなくなってしまう。なら、効果が得られる最低限の魔力でもいいんだって思うようにした方が、よいという事だろう。


「私達も自分の魔力量に各々気をつけながら、練習してみましょ」


 属性に合わせた色の石、次に色味を少し変えた石、徐々に色味を変えていきながら、バレッタの石と似た色に挑戦していく。


「アリスお姉ちゃん、どう?」


「うーん……多分そろそろ大丈夫かな」


 感覚は掴めたと思うから、挑戦してみよう。私はピンク色の天然石を手のひらに乗せ、もう片方の手の指先に魔力を(まと)って、魔法を唱えた。


 入れ過ぎ注意……入れ過ぎ注意……と、頭の中で復唱しながら、ゆっくりと魔力を注いでいく。


「……よっと!」


 私はここでストップ! と思ったところで、パッと魔力を止めた。防御魔法を吸収した石は、キラキラと光り輝いている。うん、バッチリ成功した証だ。


「うん、問題なし」


 ユス先生からのオッケーも出て、思わずにんまりもしてしまうものだ。


「えへへ。ありがとうございます」


 ミレーユとシェリも問題なく成功したようである。2人とも流石だ。


「……残すはサラね」


「どんな色でも、黒が混じれば黒に染まれるから大丈夫だよ、サラ!」


「ア、アリスのアドバイスは独特だな……」


 ……私の脳内で、ブラックホールをイメージしてますとは、絶対言えない。私はスッと目を逸らした。


「でも、なるほどな? その発想なら上手くいきそうだ」


 サラが魔法を唱えてから、少しシンとした時間が流れる。


 ちょっと時間が掛かってる気がするけど、出来たのかな……? 私はヒョイッとサラの後ろから覗き込んだ。


「……っ出来た! と思う!」


「ほわっ、ビックリしたぁ……! あれ? サラ……何かこの石……ほんのり赤みが混じってない……?」


「気のせいだろ? だって元々真っ黒だったんだぞ?」


 よっぽど集中していたのか、サラは頬を赤らめて、ジンワリと汗をかいていた。



 ユス君が、完成した魔法石をサラから受け取ると、太陽の光に透かしたりしながら、小首を左右交互に傾げている。


「……魔力、結構入れた?」


「あー……何となく魔力が反発してたのは感じたから、(まじ)われーって、ちょっと戦った感はあったけど……」


「た、戦う……」


 おぉ、こんなにも呆気に取られているユス君、珍しい。そんな事する人いるんだ、の顔をしてる。


「それでも石は割れなかったし、成功したって事は、私の勝ちって事だな!」


 ニャハッと笑うと、そのままサラはフラ〜ッと机に突っ伏した。


「えっ!? サラッ!?」


「らいじょうぶらいじょうぶ〜」


 私の問い掛けに、サラはまるで酔っ払いの様に舌が回っていなかった。


「この症状……多分、軽い魔法枯渇を起こしてるわ」


 サラの様子を確認したシェリがそう呟くと、ミレーユは額に手を当てて、ハァ……と溜息をついた。


「全くもう……魔力量に気をつけてって言ったのに、倒れる寸前まで魔法を使うってどういう事なの……」


 無事完成したっていえるのかな、これ。無事にフラグ回収はしてるけど。


「私、余計なアドバイスしちゃったかなぁ……」


 私は思わずそうボヤキながら、ユス君と顔を見合わせたのだった。




 ────────────────




 フラフラのサラを客室のベッドに運んでもらい、私達はその間にテーブルに広げたままの石や紙を、チャチャッと片付ける。その足で客室に向かうと、サラはスヤスヤと、とても気持ちよさそうに眠っていた。


 私達4人はサラが起きるのを待つ間、休憩を兼ねて部屋でお茶にする事に。


「先生もいてくれたし、少人数でやると集中出来たわね。思ったより早く完成してよかったわ」


「ね。ユス先生、ありがとうございました」


 私達生徒3人は、揃って深々とお礼をした。お礼を言うべきもう1人は、すっかり寝てるけども。



「そうだわ。はい、お土産」


 ミレーユは持ってきた鞄の中から、可愛くラッピングされた瓶を取り出すと、テーブルにコトンと3つ並べ置いた。


「マシュマロっていうお菓子なの。綺麗な瓶に、可愛い色や形のマシュマロを詰めて贈り物をするのが、帝国で流行ってるのよ」


「ふわふわ……!」


 掴んだ感触が柔らかくて驚いたのだろう。ユス君はマシュマロをプニプニしながら、目を丸くしていた。どれどれと、私も瓶の中に手を伸ばす。


「おいひい」


 モッモッと夢中で頬張るユス君と私。


「小動物みたいで可愛いわぁ……」と、ミレーユがポツリとボヤいていた。


「これ、ホットココアとかホットチョコレートの上に浮かべて飲むと美味しいんだよねぇ」


「そうなの?」


「よく知ってるわね、アリス」


「お菓子の事ならお任せあれ」


 早速デイジーにお願いしてホットココアを持って来てもらい、マシュマロを浮かべて堪能した私達なのだった。




いつもありがとうございます(*´꒳`*)


次回更新日は通常通り、9/10の金曜になります。

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