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第130話 冬の過ごし方2

 



 ……まぁ、いつか皆には言わなきゃなと思っていたし、ここは1つ、覚悟を決めようじゃないか。


 私達は各々、大きめのブランケットを羽織り、ベッドの上で大小様々なモフモフクッションを抱えて、夜更かしの準備は万端である。


 部屋の中が暖かくなっているとはいえ、エタリオルの真冬の夜は特に冷えるから風邪を引かないようにしないとね。


 ベッド横に置かれたオレンジ色の優しい灯りが、私達をじんわりと小さく照らした。


 皆からワクワクとした、期待に満ちた表情を向けられる。覚悟を決めたといえど、そんな目で見られるとちょっぴり尻込みする私なのだった。


「え〜とですね? まずどこから話したらいいのでしょうか……」


「そうねぇ……私は舞踏会の前半、アリスとあまり話せなかったけれど、後半でアリスの髪型が変わったじゃない? あのタイミングでサラとお揃いにしたのには、何か理由があったの?」


 報告会の開始早々、鋭いところを突くシェリである。


「うっ、じゃあその前後の事を話そうかな……」


 私は順を追って、あの夜に起きた事を話していく。心配かけちゃうから、酔っ払いの件はあんまり言いたくはなかったけれど、仕方ない。


 事情を知っているサラ以外の皆が、やっぱり物凄く心配してくれて、申し訳なかった。


「でもね、本当に大丈夫だったの。すぐにフォルト様が助けてくれたから」


 私は早口でそう弁解しながら、ブンブンと首を横に振ったのだった。


「……フォルトお兄ちゃん、かっこいい」


 ユス君の素直な感想に、私は思わず顔が(ほころ)んだ。


「うん。とってもかっこよかったよ」


 これがナチュラル惚気(のろけ)ってやつね、とミレーユが呟いていたのが聞こえたけれど、スルーさせていただく。


「コホン。えぇっとですね……それから、メイドさんに髪の毛とか諸々を直してもらう前に、少しだけフォルト様と、部屋で2人きりになる時があって。で、色々と話していく内に……」


「話していく内に?」


「……私がどうしても今、自分の気持ちを伝えたいって思ってしまいまして……思わず告白、しちゃい……ました」



 キャ〜! と言う歓声と共に皆に抱きつかれた私は、モフモフが重なって、まるで雪だるまの様なフォルムになった。うっかりしたら窒息するよ……!?


「いやぁ、ついにかぁ〜」


「アリスったら、舞踏会中に姿を見かけないと思ってたら、頑張ってたのね」


「聞くまでもないでしょうけれど、フォルト兄様は何て?」


 シェリの問い掛けで、私の脳内にフォルト様の台詞と表情が鮮明に浮かんできて、ボンッと一気に顔が赤くなる。


 こんな恥ずかしい事、い、言えないし、言いたくないかも……!


「ご、ご想像にお任せします……」


「えぇ〜〜〜!?」


 その後も根掘り葉掘り聞かれたけれど、何て言われたかは頑なに言わず、両想いになれたとだけ言って、黙秘を貫く私なのだった。


 これ以上あの時の事を話したら、私の羞恥心が限界で知恵熱が出る、絶対。



「そうだわ、アリスのお父様はなんておっしゃったの?」


 それはもう、大騒ぎだったでしょう、とミレーユかクスリと笑った。


「お父様?」


 何でここでお父様が話に出てくるんだろうと、私は小首を傾げる。


「……? 気持ちが通じ合って、カルセルク様とお付き合いするって事になったのよね? ご家族にその旨をお伝えしたのではないの?」


「うん……?」


 オツキアイ……?


 付き合う……あれ……? そういえば私、フォルト様とそんな話してなくない……!?


「あの時のアリス達って、そういう話になったからソファーでイチャイチャしてたんじゃなかったのか?」


「っわーーー!?」


 私は慌てて、一緒に包まっていたユス君の耳を塞いだ。


 ……サラ、爆弾発言しないで!?


「ユユユユス君、今のき、聞こえた……?」


「ううん?」


 キョトンとした顔でそう話すユス君を見て、私はホッと胸を撫で下ろす。この後の出来事は、何か教育によろしくない気がするから聞かせちゃダメだ……!


「ユス君あのね。フォルト様と私の事なんだけど、今聞いた話も含めてちょっとの間、家の皆には内緒にしておいてくれるかな……?」


 ハッキリしたら、キチンと報告するからね、と言う私に、ユス君も真面目な顔をして頷いた。


「内緒……分かった」


 本当、ユス君には毎回の事ながら、頭が上がらない気がする。




 ────────────────




 (しばら)くしてコンコン、と扉を叩く音がした。


 私が返事をして扉を小さく開けると、扉の向こうには兄様が立っており、ユス君を迎えに来たらしい。


 ……どうやら私の話だけで、結構時間が経っていたみたいだ。どうにかして皆に話を振ろうと思っていたのに、この盛り上がりよう……解せぬ。


「ユス、眠いだろう? 廊下は寒いから、ブランケットに包まったままでいいよ」


 そう言って兄様は、モコモコのユス君をヒョイとそのまま抱っこした。マーク家に来てから分かったのは、案外ユス君は甘えん坊なのだという事である。


「ユス君、また明日ね、おやすみ」


「ん。おやすみなさい」


 皆に手を振られ、兄様の腕の中にいるユス君はだんだん眠たくなってきたようで、コテンと頭を倒してもにょもにょと挨拶をしている。控えめに言ってとても可愛い。



 パタンと扉が閉まると、ニヨニヨした女子3人が私にズイッと近づいて座り直した。


「ねぇアリス? 私、イチャイチャの所、詳しく知りたいわ」


「んぇ!? サラが大袈裟(おおげさ)に言っただけで、そんな別にイチャイチャしてないよ!?」


「ソファーに押し倒されてたじゃないか」


「えぇ!? 本当に!?」


 そうか、アリスにとってあれはイチャつきに入らないのか……とサラがボヤく。


 ちょ、それはそれで私の方が問題発言している事になるな!?


「待って待って、前言撤回しますっ! すみません、イチャつきましたー!」


 ……何でこんな恥ずかしい事言ってるんだろう私、と切に思うのだった。




いつもありがとうございます(*´꒳`*)

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