第13話 特Aクラス
式が終わり、私たち2人は講堂を出て、クラスが貼り出されている掲示板の確認に行った。10クラスもあるからか、掲示板のある渡り廊下は大混雑だ。ちなみに渡り廊下を通り過ぎると、教室棟に繋がっている。
先生たちは「自分のクラスの確認が終わった者は速やかに移動をしなさい」「名前が見つけられなかった者は名簿で確認するからこちらに」など、新入生たちに適宜声を掛けている。
「ほら、アリスの名前もあるじゃない」
「あ、本当だ。よかった〜!」
背伸びしながらクラス表を覗き込むと、私も無事に特Aクラスだった。勿論、ポトリー君、パタナーシュ様、サリソン様の名前も確認したら、見つかったのでよかった。
クラスに着くと、座席は名前(苗字)順。偶然にもポトリー君が前の席だったので、ちょいちょいと背中をつついて話しかけた。
「ポトリー君! さっきはお疲れ様でした!」
「マーク様、ありがとうございます! やっぱり少し緊張しちゃいました」
えへへ、と話すポトリー君。流石は特待生、中々肝が座っている。
「あの、マーク様じゃなくて名前でいいですよ? 同級生だし、折角同じクラスになれたから仲良くしたいなって」
そう、世間的には侯爵令嬢だから当たり前の事なのだが、どうも苗字に様を付けて呼ばれると、堅すぎてムズムズしてしまう。せめて名前に様で妥協させてほしいと思うのは、前世と今世の折り合いの末なのだ。
そもそも思考が貴族っぽくないのも、ある意味問題だが。まぁきちんとオンオフを切り替えれば大丈夫だと信じてる。
「いいんですか? 僕もお友達になりたいと思ってました! それなら僕の事も名前で。あと敬語は普段からこうなので、そこは気にしないでください〜」
「分かった、じゃあラウル君って呼ぶね。私はアリスでもアリスティアでも、ラウル君が呼びやすい言い方で大丈夫」
「はい、分かりました。よろしくお願いします、アリス様!」
ニコニコ笑顔の天使に、私はキュン死に寸前である。
天使が過ぎるよラウル君……いっそ私の事は呼び捨てでもいい。もし身分の事で虐められたりでもしたら、私の数少ない侯爵令嬢の威厳を使って、絶対助けるからね……!
そんな事を脳内で思っていた私なのだった。
「そうだ。小鳥って、無事に運ばれたのかな?」
「あ、はい。さっき受付にいた先生に会って、今日このオリエンテーションが終わったら、保健室に行くようにって言われました」
ほうほう。ラウル君、小鳥どうするんだろう。飼うのかな……?
私の脳内思考をまるで読んだかのように、ラウル君はこう続けた。
「小鳥が治るまでは先生に許可を貰って、部屋でお世話をしようと思ってたんですけど、この学園ってどうやら動物のちょっとした飼育場があるみたいなんです。なので、空いた時間にそこにも行ってみて、相談してみようかと思って」
「へぇぇ、そんな癒しの場があるんだ。私も今度お邪魔したいなぁ」
「アリス様も動物好きですか!? じゃあ今度一緒に行きましょう〜!」
きゃっきゃと話が弾んでいたところで、先生が教室にやって来た。おぉ、ガタイのいいワイルド美形な先生だ。
「おーい、皆席に着いたか? 始めるぞ。まぁそうは言っても今日はもうメイン(入学式)も済んだし、終わったようなもんだけどな。俺はこのクラスの担任になったテランス・グレイだ。科目は魔法学の、実践の方を担当している。よろしくな」
まず席順に、簡単な自己紹介をした。その後はグレイ先生から今後についてや、準備する物の説明、時間割や配布物などが配られた。説明によると、今日はひとまず終了し、明日から本格的に授業が開始となるそうだ。
「……という事で、今日はこれで解散な。この後は各々自由にしていいぞ。寮に戻ってゆっくりしても構わない。ただ明日は特別に、1限の時間を使って学園の案内をするからな。……遅刻したら置いていくから、寝坊しないように気を付けろよ」
遅刻、というワードに私とラウル君はピャッと背筋が伸びた。気のせいかな、先生のニヤニヤした視線を感じるのだが。
え、グレイ先生って私たちが入学式の到着ギリギリだった事をご存知で? 受付の先生経由で知ったのか……もしくは見てたのかなぁ……
「そうそう、分かってるとは思うが、この学園内では身分は関係ないからな。身分と魔法の力は比例しないから、きちんと自分の能力を伸ばす努力をするんだぞ。あと、先生の事はきちんと敬えよ?」
先生こう見えて強いからな〜? と軽快に笑うのであった。
最後の一言二言がなければ、すごく先生っぽい言葉だったのに。
勿体ない、残念美形な先生なのでした。(失礼な思考)
いつもありがとうございます(*´꒳`*)