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第102話 黒幕は誰だ

   


 フォルト様の分かりやすく口説く宣言を受けた私は、もう既にベッドに突っ伏して、枕に向かって叫びたい気持ちでいっぱいだった。


 ……が、まだまだそれは叶えられなさそうである。


 手を添えられたまま、再びジッと見つめられた私は、「次は一体何が……!?」と言わんばかりの顔だったに違いない。


 そんな私を、フォルト様は仕方がないなという表情で見ると、スッと(おもむ)ろに手を離して立ち上がった。


「……惜しいが、今はこれ以上しない」


 一度身なりを整えてもらうといい。そう告げると、メイドさんを部屋に呼んでくれ、入れ替わりに部屋を出て行かれた。私は、はふ……と息を整える。


「マーク様……? あの、お顔が赤いようですが……」


「あ、いえ、あの、体調不良ではないですっ……! ちょっと知恵熱がですねっ!?」


 メイドさんの生暖かい微笑みを受けつつ、髪の毛やメイクの手直しをしてもらう。その後、扉の外で待機してくれていたフォルト様とともに、再び夜会の会場へ。


 会場に着いた私の元には、すぐにラウル君とミレーユ、それにステファニー様が駆けつけてくれた。心配していた、よかったと、安堵の表情を浮かべてくれた皆に、お礼と謝罪をしたのだった。




 ────────────────




 交流会という名の夜会をひとまず終えた私達は、夜も更けていたが、応接室に再び集った。


 ラウル君やミレーユ、ステファニー様を抜いた先程のメンバーに、エヴァン様だけを足した形である。


 応接室の3人掛けのソファーに、フォルト様、エヴァン様、ルネ様の3人、シェリとサラと私の3人が分かれて座り、1人掛けのソファーに殿下とフィリップ王子がそれぞれ座ってテーブルを囲む。


「ニャーさん、詰めて座りますか?」


「あーさんの後ろの背もたれに寄りかかってるからいーよ」


 ……との事で、何故か私の真後ろにはニャーさんがいるのだった。



「えっと〜、フィリップ王子? 知らない人もいるだろうから、俺一度ご挨拶した方がいいよね〜?」


「そうだな。彼女達は全く知らなかったはずだ。巻き込んでしまったからには、一から説明しないと」


「じゃ、改めまして。リバーヘン帝国王家直属のお手伝い(・・・・)をしております、ルネ・パタナーシュと申します」


 胸に手を当てて、ふわりと微笑んだ。


 ルネ様がそう言うと、きな臭いお手伝いをしてる感が満載だな。


 ニャーさんも、胡散臭さがすげぇ……と、後ろで同じような感想を口にしている。声に出さなくてよかった。


「元々ルネは父上……陛下直属の者でね。私もルネの存在は、表の貴族社会では知っていたけれど、陛下の裏の手伝いとしては、顔も名前も全く知らされてなくて。この立場で顔を合わせたのは、つい最近なんだ」


「陛下のご命令で、双子の王子様方の観察をさせてもらってたんだけど、シルヴィオ王子の行動は、ちょっと目に余るものがあったんだよね。側近として味方のフリをしつつ、裏ではシルヴィオ王子のお目付役として、陛下やフィリップ王子に情報を流したりしながら、ちょこちょこ動いてました〜」



「でも、何でルネはわざわざ留学までしてエタリオルに来てたんだ? シルヴィオ王子は今回来国はしたけど、留学してた訳じゃないし……」


 サラが不思議そうにしていると、それについては私が説明しよう、とフィリップ王子がスッと片手を挙げる。


「シルヴィオの交友関係を調査をしていて、掴んだ事があった。それが、シルヴィオと帝国のザクナ公爵、エタリオルの研究者でフィゾー家嫡男である……」


 フィリップ王子は、そう途中まで言いかけて、ぴたりと止まった。


 名前、忘れてしまったんですね……私もステファニー様のお兄様ってずっと呼んでたから、ぶっちゃけ分からなくもない。


「……あー、ダニエル、だったか。この3人の関与が認められた為、ルネにはエタリオル内で調査をしてもらっていた。帝国の外の事は正確な情報が入ってこない時もあるからね」


「そ〜なんですよ〜。隠れて動くより、留学生として過ごしていた方がエタリオルに溶け込めるし、堂々と動けて都合がよくって。あと闇属性持ちって事は、申し訳ないけれど隠させてもらっちゃってた。学園長には言ってあったけどね?」



 あ、頭がこんがらがってきたけど、つまりは二重スパイみたいな感じの認識でいいのだろうか……?


「そして、事態が動き出したのが国境付近の森での魔獣出現からだ。それから首都の魔獣出現と続くんだが……レベッカ嬢が狙われた辺りから、シルヴィオ側についていたルネがようやく最終的な計画を知る事になった。そこで途中からは婚約者候補であり、光属性持ちでもあるシェリーナ嬢にも危険があると判断して、エタリオル王家にも相談し、密かに協力してもらっていたんだ」


「夜会のタイミングで向こうが動くと分かっていたから、炙り出したくてね。まさか事情を知らないシェリとアリスティア嬢が、予想外の動きをするとは思わなかったけど」


 苦笑いを浮かべる殿下に合わす顔がない私は、サッと身を縮めた。余計な事をしてすみませんでした……!


「う〜ん、もう少し証拠になりそうな事を割り出したかったんだけどね? あの研究者が思ってた以上に精神をやられてて、あんな騒ぎになっちゃった」


 2人とも、巻き込んでごめんねと、ルネ様がシュンとした様子で謝ってくれる。


「ルネ様は私達を守ってくれてたよ?」


 ね、とシェリに顔を向けると、ええ、と大きく頷いてくれた。


「はぁ……ありがとアリスちゃん、シェリーナ嬢。そもそもシルヴィオ王子とそのダニエルとやらを(たぶら)かした黒幕ってのがいるんだけど、ソイツが中々帝国でも尻尾を出さなくて〜」


「こんなに大事(おおごと)なのに?」


 まぁ……と、不安そうなシェリが帝国側の2人を見比べた。


「あぁ。ザクナ公爵は……実に強欲で狡猾(こうかつ)な男だよ。分かっているのは、エタリオル王家に個人的な怨みがあるという事。エタリオル王国内で、魔獣出現の実験をするよう(そそのか)したのも、ザクナ公爵だろう。そして将来的には、シルヴィオを丸め込んで裏で操り、帝国の政権を事実上、自分が握るつもりだったと思う。今もその野望は叶えるつもりでいるだろうね」


 フィリップ王子は、そこまで一気に話すと、溜息をついた。


「確実に黒なのに、物的証拠がない」


 確かにあの時、ダニエル様の口からザクナ公爵の名前が出ていたのは、私も耳にしているけれど……確固たる証拠にはならないだろう。


「いっそ闇の魔法陣で、そのザクナ公爵の家の中に転移して、粗探ししちゃうとか……」


 何なら禁忌魔法だし、前世でいうと、思いっきり住居侵入罪になるけど。


「アリスって本当、思い切りがいいよな」


 クスクスとサラに笑われたので、私は恥ずかしさを誤魔化しつつも、ブゥ、と口を尖らせた。


「だって、向こうが禁忌魔法でズルばっかりなのって、フェアじゃないしズルいと思って……ちゃんと陛下に許可貰ってから使えばいいかなと……」


「確かに。使える切り札は使った方がいいな。正攻法で駄目なら、こっちも手段は選んでいられない」


 どうやって乗り込むか、確実に証拠を掴むにはどうしたらいいか、そんな話が飛び交う中、私は顎に手を当てて考え込んでいた。


「アリス、どうしたの?」


 急に静かになった私を心配して、シェリが声を掛けてくれる。


「いや、あのね? ステファニー様が話してくれた内容の中で、『お兄様は何らかの魔法で、地下倉庫の空間認識を阻害していた』っていうのが、個人的にちょっと気になってて……」


 うーん……と唸りながら、私は自分なりの見解を、ポツリポツリと独り言の様に述べていく。


「もしそれが研究によって生み出された、禁忌魔法に値するレベルの闇の新魔法であれば、ザクナ公爵もそれを使って屋敷の中で何か(・・)を隠しているんじゃないかなって……」


 そんな美味しい隠蔽の魔法。悪い事を企む人間にとっては、あると知れば喉から手が出る程、使いたくて仕方ないだろう。


 何かやましい事を隠しているなら、尚更、だ。



「でも浅はかな考えで……ひぇっ!?」


 皆の視線が自分に向けられていた事に気付き、ビクッとする。


 こ、怖いんですけど……!?



 

いつもありがとうございます(*´꒳`*)

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