パーシバル 2
この気の早い死亡通知は、戦地から返された再現体の全員が受けとる。
軍務を終えた時の説明では、定期メンテナンスは年四回という話だった。
しかし、この居住都市からはるばるメガロポリスまで出かけて行くたび、言い渡される次回の日づけは先へ先へと伸びていった。
「返還個体の増加により、スケジュールの調整が難しくなっています」
とシェルターの向こうの案内音声は言い、ついに約束された次回を保障期限が追いこした。
そしてゴールまでの道のりは、日に日にガタついていく身体か、二度と補充されない内蔵燃料残量のどちらか悪い方によってカウントダウンされるのだった。
パーシバルは、印刷された企業のロゴを感慨なく眺めた。
順当な手続きが自分にも訪れただけのことだ。
彼は足もとの小さなボール箱に封筒をおさめ、いつもジャケットの胸ポケットに入れていたIDカードも一緒にしまいこんだ。
巡視艇のはばたきが遠く消え、乾いた風が砂ぼこりを運んでくる。パーシバルは目の前の掲示板に意識を戻した。
小さな紙片に視線がとまる。
「治療薬受取、A区画まで」
目を引かれたのは、その求人がしわだらけだったからだ。一度にぎりつぶしたものを根気よく広げたように。
パーシバルはわずかのあいだ居場所を忘れた。かしいだ細い文字は粒のそろった傷を思わせ、そこから発生する不思議な引力が彼だけに感じられるようだった。
諦めかけたのは依頼か、それとも生だろうか。
手を伸ばし、ピンから紙をはずす。これには少し苦労した。合成素材の腱が損傷しはじめてから右の握力はめっきり弱くなっている。
あたりには大男のほかに数名が集まっていて、彼のぎこちない動作が終わるのを無表情に待っていた。求人票をつかみ離れていく最中、パーシバルは、
「リプロだな」
というしゃがれ声を聞いた気がした。
人間の形をうつした再現体、リプロダクション。
国をささえる軍事輸出品目である彼らは、ごく簡単にリプロと呼ばれていた。そこにはたいていマイナスの響きが含まれているか、もしくはなんの感情も込められていなかった。