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万年越しのフィーニスと  作者: まろまろまろん
邂逅編
10/10

ミルティオーナ9

――ペルグランデ要塞に到着して6日目



「何か、意見がある人はいないかしら?」



 会議室にてミーナ達は絶賛会議中だった。


 面子はミーナの他に"亡霊"、ルルス、シアーノ、そして尉官以上の軍人達、議題は今後のことだ。

 しかし会議だからといって揉めると思っていたら大間違いで



「「「「「「「「「…。」」」」」」」」」



 誰も手を挙げる者はいない。


 ミーナとしてはどんな意見であれ自分以外の考えを聞きたかったのだが、"亡霊"はまだ部外者のようなものだし、ルルスもミーナの意見に絶対服従、シアーノを含む軍人達は戦えればいいという考えの者が殆どなので、当然と言えば当然かもしれない。


 彼らの役に立たなさにため息を吐きそうになるのを耐え、ミーナはもう一度今の状況を振り返ってみる。



(まだ魔人の襲撃は無いけど、状況はいいとは言えないわね)



 そもそもの話、ミーナ達がここに来たのは魔人襲撃の救援要請によるものだ。

 しかし、蓋を開けてみれば魔人どころか人間の姿すら見えない。



「"亡霊"さん、一つ聞きたい事があるのだけど、貴方この近くに住んでいるのよね?」



 "亡霊"は自分に話を振られることを予想していたのか、特に驚いた様子なく話し始めた。



「はい、ここから北に少し行ったところに住んで()()()()。」

「いました?」

「その、"煉獄"でしたっけ?

そいつが突然俺の家に突っ込んできたせいで住める状態じゃなくなってしまいまして…、」

「災難ね。」

「ここにいたのもそいつを追いかけていたからなんです。」



(嘘、ではなさそうね…、)



 ここ6日間、"亡霊"と過ごして分かったが、彼はその物騒な二つ名に似合わず思っていたより人間味に溢れていて、嘘をつくときに右目を瞬かせる癖がある。

 本人は気づいている様子はないので今後も有効に活用しようと思うミーナだ。



「話が逸れたわね。

今までここに人が居なくなることっていうのはあったのかしら?」

「いえ、ありませんでした。

人が減る、ということ自体は稀にありましたけど、それでもある程度の攻撃には耐えられる数は常に残していましたね。」

「ふぅん、よく見てるのね?」

「はは、これくらい普通ですよ。」



 "亡霊"は右目を瞬かせながら答えた。

 物凄く問い詰めたくなるミーナだったが、契約を交わした手前、余計なことはしない。



「そ、ありがとう、参考になったわ。」



 ここでミーナは一度ぱんっ、と手を叩いて全員の注目を集める。



「分かってると思うけど、私たちの今の状況はかなり悪いわ。」



 ミーナがそういうと何故か軍人達は嬉しそうに頷いた。

 やっぱり分かってなかったのかもしれない。



「貴方達が思っているように沢山戦えるのでしょうけど今回はそんな単純な話じゃないわ。」



 戦うことしか頭にない軍人達に危機感を覚えさせたいミーナは長々しく説明し始めた。



「そもそも上から嫌われてる私達がこんな重要な場所に遣わされるというところからおかしかったのよ。実際着いたとき誰も居なかったし、戦闘の跡もなかったから要請自体が嘘だったということね。じゃあ誰がこんなことしたのかだけれど、こんな大規模なことできるのは軍部に影響力が強いトュルス兄さんしか考えられないわ。何でこんなことしたのかは知らないけど、ここに私達を孤立させるだけじゃ意味がないでしょうから恐らく近い内に何か起こるわね。考えられるのは魔人の襲撃かしら、というかそれ以外に思い付かないわ。

もしもの話だけど、魔人達がこの要塞が無人になるのを見逃すはずがないの、なのに私たちが着いたときには誰も居なかった、考えたくないけれどトュルス兄さんが裏で魔人と通じてるっていうのが一番話の辻褄が合うのよね。

まあそれがどうであれ魔人の襲撃が近いうちにある可能性が高いことに変わりないのよ。私含めて218人…、いいえ、"亡霊"さんもいるから219人ね。そんな少数じゃここを守りきれても大きな被害を被ることは考えるまでもないわ。間違いなく責任をとらされて幽閉よ。だからといって逃げ帰ったら逃げ帰ったで要塞は占領されて人族の負けは確定する、そうなるとベストは要塞から出て戦うことだけど…。その辺りに関してだけは貴方達は一流だから最初はそれでいいのかもしれないわ、でも、それが何度も続けば分からない。」



 まだ一度も人死を出したことがないミーナ達であっても犠牲は二桁の範囲に収まりきらないだろう。



(まあ、それでも魔人ごときに負けるつもりなんてないけれどね。)



「ここに着いた日にティア姉さんに"思念"で伝えたからそんなに長くはならないでしょうけどね。はぁ、トュルス兄さん、お母様が亡くなる前までは優しかったのに…、私そんなに嫌われるようなことなんてしたかしら、いくらなんでも要塞を無人にするなんて度がすぎ……、あら?」



 気づいたときには一同死んだ顔をしていた。



「どうしたのよ、皆そんな顔して?」



 ミーナはルルスに目を向ける。頬を染めてこちらを凝視している。見ていなかったことにした。

 シアーノは…、机に突っ伏している。

 最後に"亡霊"と目が合う。目を逸らされた。



「…、これ、ミルティオーナ様の癖なんですよ。」

「意外でしたね。」

「本人も気付いてらっしゃるんですけど、いつまでたっても治りません。」

「重症ですね。」



 しん、と静まり返っていたせいで"亡霊"と彼の隣に座っていた女性士官の会話が丸聞こえだった。

 ミーナも治したいという気がある分、余計に居心地が悪い。



「と、とりあえず私たちがどれだけ危機的状況にあるかはわかってもらえたと思うわ。」



 ようやく終わったとばかりにシアーノがばっ、と起き上がって言った。



「要するに、いつも通り思う存分戦えばいいというわけですな。」

「…、悔しいけど否定できないわ。」



 おお!と声が上がるのを無視してミーナは"亡霊"に目を向ける。



「"亡霊"さんもやってくれるという認識でいいのよね?」

「ええ、俺はミーナ様の()()ですから。」



 そう言って彼はおどけたように肩を竦めた。


 その何てことない動作ですら無駄に整った容姿によって格好良く見えるのでミーナは無性に腹が立った。



「おい、貴様!軽々しくミルティオーナ様のことを呼ぶんじゃない!万死に値するぞ!」

「まあまあルルスちゃん、落ち着いて、そんな小さいことは――」

「私は小さくなんかない!24歳だ!!

ミルティオーナ様、やはりこいつ今斬るべきです!」



 ルルスの"亡霊"への態度は昨日までよりもひどくなっている気がする。

 彼を油断させる為、と言っていたがなんだかんだで素だったのかもしれない。



「いいのよ、私が許可したから。

ルルス、貴女も"亡霊"さんは仲間なんだから仲良くできるでしょう?」

「で、ですが!」

「ほら、ミーナ様もこう言ってることですし、仲良くしましょうよルルスちゃん?」

「信用なりません!」



 ルルスはがるる…、という音でも聞こえそうなほどに彼を威嚇しだした。

 不覚にもそれが天敵に怯える小動物に見えてミーナは少し笑ってしまう。



「んんっ、まあそういうことだから、各々準備を整えておきなさい、いいわね!」



 会議の締めとしてミーナが声をかけるが、



「儂は50体ほど貰うかの」「私は15いただきます」「僕は10で」「控えめだなおい?40で」「「じゃあ私達は70貰いますね」」「それは多すぎるんじゃねぇの?」「だったら60貰いますね~」「ちょっと待ちなさいよ!ならアタシだって60にするわ!」「ほっほ、若いのは血気盛んですな、100増やしますわい」「シアーノさんいくらなんでもそれは――「折角なんですし競争ってことで、」「「「「「「「「「それだ!」」」」」」」」」」



 その声は誰の耳にも届いてないようだ。



「大丈夫かしら……、はぁ。」



 ミーナはここ数日で一番大きいため息をはいた。

今回の魔術


第2階層特殊系統無属性魔術・思索念慮


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