プロローグ
処女作です。
気になることがあれば何なりと質問してくださると幸いです。
私は幼かった頃、毎晩のようにお母さんにあるお伽噺を聞かされていた。
内容は魔人族の少年と人族の王女が恋に落ちるというありふれたものだ。
未だ種族同士の争いごとが絶えなかった時代に、平和を願う人族の王女と奴隷だった魔人族の少年が出会い、仲間を増やしながら国を統一するのだけど、そんな中で2人は少しずつお互い惹かれ合っていく。
これだけでも面白いのにこの話には続きがあって、
国を統一した矢先に少年は魔王に、王女は勇者に選ばれ、人魔大戦が起きてしまう。
愛する人や仲間を害してしまう前にと少年は自殺しようとするけど、王女はそんな少年を抱きしめこう言うのだ。
―――たとえ貴方が自分を見失ったとしても私は貴方の側を離れない、貴方が心配する必要は無いわ。だって皆を救うのが勇者ですもの。魔王も含めてね。――― と。
同性の私ですらキュンと来ちゃうのに男の子がこんなこと言われちゃったら結果は言うまでもないわよね。
このあと少年は魔王の力を制御出来るようになって、王女達と共に人魔大戦の元凶だった神様を倒し、めでたしめでたしとなる。
まだ大戦は無くなってないから皆はフィクションだって言うけど、私は本当の話だと思っている。
なぜなら本当に当事者に聞いてきたんじゃないかと思うくらい生き生きとした顔をしてお母さんはこの話をするからだ。
私はお母さんのあの顔が大好きだったから、毎晩この話を聞かされても飽きることはなく、気付いた時にはこの話を好きになっていて、私の夢は魔人族の男の人と恋をすることだった。
そう、だったである。
所詮、魔人族との恋など幻想に過ぎないのだ。
そう血まみれで動かなくなったお母さんを見た時に思った。
私には幸い勇者の力があったからそれを復讐の為の原動力にする事が出来たけど、なんの力も持たない普通の人は一方的に大切な人を奪われることしか出来ない。
だから私は皆を守る盾ではなくて、この悲しみの連鎖を断ち切る剣として魔人族を滅ぼさなければいけないと思う。
私一人で、ではない。
お伽噺と同じように沢山の仲間たちと、だ。
だけれど、
お母さんを殺した魔人は必ず私が殺す。