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√1の地獄

作者: 民間人。

 目を覚ます。歯を磨く。朝食を摂る。支度をする。出勤をする。昼にパンを食べる。残業する。帰宅する。夕食を摂る。歯を磨く。お風呂に入る。寝る。毎日はこうして繰り返される。


 寝癖を直す私の顔を見ると、決まって笑顔になるのは私だけだろうか。1日の初めは、1日の終わりよりも幾らかひどい顔をしている。かと言って、1日の終わりが、1日の初めよりいい顔をしているわけでもない。ただ、整えた顔が元に戻るだけで、それ以上でもそれ以下でもない。今日もそんな一日だ。


 キーボードを叩いて電子の世界に赴く。電子の世界では表計算ソフトやプレゼンテーションソフトで資料を作り、ワードやソフトウェアで各取引先へ挨拶を交わしたりする。私たちはそれに疑問を抱くことはないが、多くの大学生がそれを見てギョッとする。無理からぬことか、そう諦めきれるはずもなく、私は作業を続けながら、ブラインドを閉ざす。


 ……さて、昼食は、コンビニで明朝に購入したパンだ。ハムとチーズのバターロールが安くてうまい。一番安くてうまいのは、夕食用に購入した二桁の値段の拉麺。そこにもやしがあれば最高や。一人そんなことを考えていると、電子に毒されているかもしれない、と思うようになった。

 午後の仕事は、社用車で走り回る。ビジネスバッグの中身は新商品や目玉商品の資料だ。それを手に、会社から会社、また会社から会社へ。


 その先々で、凡ゆる領域で催される日常の一幕。御局様のご降臨、課長のずれた鬘、役員たちの薄くなった白髪。新入社員は休憩時間に必死にスマートデバイスと睨めっこだ。その姿を咎めるでもなく、先輩社員は苦笑する。すぐに私もつられて苦笑するのだが。


 帰社すると、資料をまとめ、メールをチェックし、返信を返し、詳細を添付して仕事を引き継ぐ。そしてパソコンを閉じると、概ね20時から21時。そこから帰宅するまで、概ね車で10分。ラジオは聞き流すが、信号待ちの時だけはしっかり耳に入れる。天気予報なら特に入念に。


 明日は雨らしいので、うんざりするところだが、舌打ちする間も無く、信号が青に変わってしまう。


 帰宅すると、即席で拉麺を作って掻き込み、歯磨きをしながらニュースを見て、持ち込んだ残業をして、就寝する。


 さて。1日が終わる。


「√1なら1か-1だよなぁ」


 ふと、そんな言葉が漏れた。

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