家族紹介①
男は俺を持ち上げると走り出した
いきなり目線が2m以上上がると結構ビビる
「走るぞ!」
「あ、ちょ!俺どこに連れていかれるの?!」
——
俺は男に連れられ(誘拐され)、戦地から結構離れた場所にある小屋に入る
「紹介するぞ、妻のリーレだ!」
ジャーン!
というセルフ効果音と共にリビングっぽい部屋にいた女性を紹介された。
俺はそして紹介された後も暫くは「ぽかーん」としていた
(いや、嫁の紹介よりもまずは自分の紹介をしろよ!)
「ん?どうしたんだ?」
ふと我に返って見ると妻のリーレは俺をじっと見ている
当然ながらリーレは女性だ、そして俺はゴブリン
俺には分かる、リーレの心には今恐怖と殺意が渦巻いているだろう
「まぁ、可愛らしいゴブリンさんね」
リーレは口を開き言った
だがそれは恐怖から来たものであり俺が暴れ出さない様にとの気遣いだろう
「そうだろう!この澄んだ目を見た瞬間俺は、あぁこいつは悪いやつじゃ無いな。と思ったんだよ!」
(こいつは…何だろう
見た瞬間殺しにかかってきた癖に…)
思っていた事が顔に出たのかリーレは目を丸くしている
「どうしたの?お腹減ったの?」
「あ、いえ大丈夫です」
咄嗟に答えた
ここに来て初めて喋った
「キャー!何て愛らしい声なの!」
俺は理解らないでいた
リーレの心には恐怖が支配していると思っていた
だがリーレからは俺に対しての敵意が感じられない
「あなた名前は何ていうの?」
(名前か…
俺には前世の名前がある
だがこの姿で人であった時の名前を名乗るにはまだこの姿を受け入れきれていない)
考えが纏まらず唸っているとカトルが助け舟を出した
「そうだそうだ!こいつは産まれたばかりなんだ!」
「まぁ!、可愛らしいと思ったらまだ赤ちゃんだったのね!」
「あ、はい」
「子供なのに敬語なんていいのよ〜」
「う、うん。分かった」
ニコニコと微笑むリーレ
なんだろう優しいお母さんって感じだな
「よし決めた!ガスト!お前の名前は[ガスト・クレイマン]だ!」
「ガスト・クレイマン?」
ガスト・クレイマンってなんだ?
ファミレスか?それだけかともモブか?
「そうだ気に入っただろう!」
「うふふ、強く逞しい子に育ちそうねー」
産まれてくる子に名前を付ける親みたいだな
いや、実際に夫婦なんだからそう見えても当然か
「ふー、取り敢えずガスト!飯にするか!」
「あれ?貴方の名前は?」
「ん?」
「え?」
「あら?名乗っていなかったか?」
まじかこいつ
「俺の名前は[カトル・クレイマン]だ」
「クレイマン?」
「あぁそうだ!お前もクレイマンだな!」
「クレイマンってファミリーネームじゃ…」
いやミドルネームという可能性も…
「何を言っている!お前も家族だろう!」
「俺がおかしいみたいに言うな!おかしいのはお前だ!」
「父親に向かってお前とはなんだ!」
ダメだこいつ…
会話が成り立たない
「もう、豪快さは貴方の魅力だけど大雑把な所は貴方の悪い所よ。
ガスト?もしかして何の説明もせずに連れてこられたの?」
「説明どころかほぼ拉致されてきました」
「カトル?」
おっと、優しい顔しか出来ないと思ったらこんな怖い顔も出来るのね…
いや、正確にいうと顔はにこやかだ、顔は
だが目が全くもって笑っていない
とにかく怖い
「いや違うんだ!こんな子供を1人森に放置なんて出来るわけないだろ?!」
ジー、っとカトルの顔を見つめるリーレ
「そういう事なら早く言ってよね!」
えぇ…
「ガスト!貴方は今日からうちの子よ!
私がお母さん、カトルがお父さん、リカがお姉さんよ!」
何か変な方向に話が進み出したな
「リカとは?」
「ん?そういえばリカはまだ帰っていないのか?」
「そうねぇ、もうすぐ帰ってくると思うけど…」
この場にはいないのか
姉って事は女の子か…
ゴブリンと同じ家に住むとか普通に嫌だろ?
いやこの親から産まれてくる子供きっと大丈夫だろう!
『帰ったよ〜』
楽観視していると
入口から可愛らしい女の子の声がする
「おっ!話をすれば」
ドタドタ
騒がしい足音
子供らしいとも言うのか
「見てみて!今日は鳥を落とした……よ?」
リビングに入ってきたリカと目が合った
目が丸くなっている
と思ったら
「なんでゴブリンが家の中にいるの?!」
「どうも、ガスト・クレイマンです!
不束者ですがお世話になります!」
出来るだけ愛想よく見えるよう笑顔を作ってみる
「お父さんとお母さんから離れろー!」
だが逆効果か…
リカが殴りかかってくる
記憶のカトルの拳よりは遅い
だが能力未使用時の俺の動きより遙に早い
リカの拳は俺の顔面に吸い込まれていった
ポカンッ…
「…えっ?」