初めてのガチ戦闘
「ゴブリンに名乗る意味は無い
逃げられると、思うなよ」
振り返るとそこにはこの世界に来て初めて見る人族の男がいた
「駄目です、逃げましょう」
隣に目をやる
するとそこにはガクガクと震え脂汗を浮かべる神託がいた
目の焦点が合っていない
(逃げる?冗談だろ?)
「逃げ切れると思うか?」
俺は自嘲気味に尋ねる
だが神託からは答えが返ってこない
恐らく恐怖のせいで頭が動いていないんだろう
そこで目の前の男がこちらに向かって動き出す
「神託!」
スゥー…
神託の体が歪み、光り、1本の錫杖が俺の手元にくる
自分でも理解してやったわけでは無い
ゴブリンと言えど野生の感は信用できるかもしれない
ゴブリンの巣で見た錫杖が彼女の本来の神託としての姿だったのだ
そして
能力行使↓
神の祝福[七大罪・色欲]発動
種族能力«ゴブリン »[肉欲増加]
こちらの感覚は覚えていた
体から何かが抜け別の何かに置き換えられる感覚
考えるより先にバックステップ
シュッ
先程まで俺がいた地点に真っ直ぐと振り下ろされた片手剣
『私も微力ながら助太刀させていただきます』
頭の中に響く神託の声
「あいつを眠らせることは出来るか!?」
『不可能です』
「じゃぁ何が出来る!?」
能力行使↓
種族能力«サキュバス »[誘惑]
『主様の能力の補助に務めます!』
スッ
迫り来る男の剣
横に薙ぎ払う
「くっ!!」
ギリギリで反応して軽傷に抑える
[七大罪・色欲]の力を意識的に腕に向ける
傷は癒えた
「ほう…」
男はこちらを見て様子を見ている
(どうするか…)
いや、攻められっぱなしに未来は無い
「ウオオアアーッッッッッ!!」
突撃
男は構え直す
「フン!」
錫杖の突き
カァン
男は軽く払い除け俺に蹴りを放つ
『[七大罪・色欲]を全力発動!』
俺は片足で地面を蹴り男の頭上を捉える
(ここだ!)
再び錫杖の突き
神託が[七大罪・色欲]を調整しその一瞬俺は男の意表をつく事ができた
「お前、ゴブリンでは無いな?」
完璧に捉えたはずの男の姿がブレ、俺の目の前から消えていた
ガゴキッ!!
俺はそれが何の音からしたのかが理解出来なかった
景色が何周も回った
遅れて全身にくる鈍い痛み
「お前、ゴブリンでは無いな?」
(…ここはどこだろう?)
先程まで男と戦っていた森では無かった
全身にまだ痛みがある
てに持っていたはずの錫杖も無い
「ぁぁ…」
「そうか、答えられないか」
殺される
そう思ったら男は俺の頭に手を置き
クルッ
回した
普通の首なら絶対に稼働しない、稼働してはいけない方向に回した
どうやら俺の頭は男の一撃で何周も回ったらしい
男は暫く待ってくれた
[七大罪・色欲]のおかげで首の痛みは薄れていった
(便利な能力だな…)
そして気づく、先程まで見ていた景色は痛みから来た幻覚なのか俺がいたのは戦っていた地点からあまり動いていなかった
近くに錫杖は見当たらない
(まずいな…)
「それで、お前は何者だ?」
嘘や誤魔化しは命取りだ
そう思い俺は全てを話した
前世の俺についてを含め神部屋での会話も全てを伝えた
話を聞いている間はずっと目を閉じ、しかし絶えず殺気を漏らしていた男は目を開き「それだけか?」という目で見てくる
コクコク
俺は全力で肯定する
隠している事は無い
だが俺は今ゴブリンだそんな奴を生かしておくメリットは無い
俺がビクビクしていると男は深く息を吸った
殺される!!
傷は治りきっていない
[七大罪・色欲]も万能では無いらしい
逃げ切れる気がしない
「よし分かった!お前俺の家に住め!」
能力行使↓
神の祝福[七大罪・色欲]発動
種族能力«ゴブリン »「肉浴増加」発動
男が声を発した途端に俺は男に背を向け全力で走り出した
男が変な事を言った気がしたが気のせいだろう
神託は先程から黙りだ
逃げるしかない
「おいおい!逃げる事はないだろう!?」
ガシッと肩を掴まれた
そこで先程男が言った言葉を思い出す
「……え?殺さないのですか?」
「ガハハッ!お前の話は難しく全く理解出来んかったが、お前は子ゴブリンながらにして邪悪な心を持っていないのは戦ってみて分かったからな!」
えぇ…
こんなの性格だったっけ?
戦闘中はめっちゃ達人みたいな気配出してなかった?
「おっと!もう日が暮れ始めている!
話は後だ!取り敢えず帰るぞ!」
さっき戦っていたいなかったらただの元気な親父だ
「帰るってどこにですか?」
「説明なんかしてられるか!」
「うわぁ!!」
男は俺を持ち上げると走り出した
いきなり目線が2m以上上がると結構ビビる
「走るぞ!」
「あ、ちょ!俺どこに連れていかれるの?!」
誤字脱字、質問文句感想なんでも聞きます
(`・∀・)ノ