家族小景「冬至」
今日は冬至だ。柚子の実を浮かべたお風呂の中で、ショウとお母さんが話をしている。
「おかあさん、どうしてきょうはこれがあるの?」
お湯の上にぷかぷかと並んだ柚子をすくい上げ、首をかしげるショウ。お母さんはにっこり笑って「今日はね、一年の中で一番お日さまが当たる時間が短くて、寒いでしょう? それが今日、冬至と言うの。柚子湯に入ると、風邪を引かないそうよ」と答えた。
柚子の効果は科学的にも明快で、柚子の成分は体に良いことが証明されている。加えて、冬至と言う日は、昔は太陽の力が一番弱まる日で、この日から太陽が再生すると考えられていたようだ。お風呂に入る風習のなかった昔の人々にとっては、柚子湯は禊の意味もあり、厄払いのために入っていたという。
冬至といえば柚子湯にかぼちゃ。かぼちゃの起源も興味深い。自然に寄り添って生きていた昔の人々にとって、冬は食べるものが無い大変な季節だった。そこに、夏に収穫したかぼちゃを、時間をかけて熟成させ、冬に食べることで飢えをしのいでいたことが始まりになるそうだ。かぼちゃも栄養満点の食べ物だ。お母さんは今日のごはんにかぼちゃの煮物を作ってある。
「百数えたらあがろうねー」
「はーい」
お風呂のなかで二人はのんびりと温まっていた。