パチンコの裏側 その1
それは、紫雀が結婚したての頃、だんな様に聞いた話です。
「うーん、パチンコかぁ……入ってもいいけど……。」
諭吉様は、住んでいるアパートの隣に聳え立つパチンコ屋をながめながら言った。
「パチンコ屋はちょっとね……。」
どうにも歯切れの悪い返事。
「じゃ、一回だけ。1000円でやめるから」
「んっ、じゃあ、一回だけね」
別にパチンコが好きだったわけじゃなく、ただ入ってみたかっただけ。
一人ではいる勇気もなかったので、だんな様を誘ってみた。
だが、この、渋りよう一体なんなんだろう……。
自動ドアを通って中に入るとうるさいほどの軍歌とパチンコを打つ音が耳に響く。
一体何ホーンあるのか。
働いている人は、難聴なっているだろうなと思いながら、打つ台を選んで千円投入して打ちはじめた。当然、あっと言う間に玉は底をつきゲーム終了。
面白いわけがない。
パチンコってこんなもんなんだ……。
一人納得して回りを見ると近くで打っていた30代の男の人がフィーバーになっていた。
ドル箱を三つ重ねて得意そうだ。
台の近くにあったライトがパトカーのようにピカピカと点滅し、マイクとドル箱を持った店員が一人駆けつけてきた。
「ついに出ましたフィーバーです!!ついにやりました。おめでとう!」
この店、特有の盛り上げ方なのだろうか……。
同じく千円すった諭吉が迎えに来たのでまだ、何か叫んでいる店員を尻目に店を出た。
続く