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タイトル間違ってたので、変更しました


一枚羽の紋様が塗られている小箱の形のした火鉢に火をつけて、二人には、椅子に座らせて火鉢に当たらせた。

 「温い・・・」

レベッカが呟いた。もうじき冬に入る。木枯らしが吹き、狩人は鍬や鎌から鉄砲と弓矢を持って冬支度を始める。

 バスケットの中のお菓子だけじゃ足りないだろうと、

エレノアは森から獲って来たややしなびている果物を出した。このパーティを開くために食べ物を買ってきた二人に対してこのような物しか出せないということをエレノアは詫びた。


「ごめんね、今こんな物しか出せないの・・・」

レベッカは首を振って言った。

「いや、これは昼間のお礼のようなものだから。ほらエレノアさん、あなたは座って。自分でコップは自分たちのがあるから」

バスケットからお酒を取り出して机に置く。瓶の中の酒は波のように揺れていた。

「でも・・・」


エレノアは浮かない顔をしていた。自分のコップはもうトランクケースに詰めてしまった。エレノアが複雑な顔をしているのに気づいたイリーナは、ひょっとしたら彼女はコップがないのかも。と思って諭すように


「お姉ちゃん・・・」

と押える様にして言ったら、レベッカも、ひょっとしたら彼女がここにいるのは貧乏で宿舎に通えないほどお金がないのかもしれない、と察してエレノアに気遣うために

「あー、わ、私は別にのどかわいてないから、ほら、二人で飲んで、ね?」

と言った。本当はここまで来るのに寒い上に空気が乾いていて喉はもうカラカラなのだけれど、彼女のために我慢する事にしたレベッカ。

一方、妹のイリーナも姉だけのそんな不憫な事をさせるわけにはいかない、私たち姉妹は二人で一人なのです、と考えて、姉と同じような事を言った。

「わたしのどかわいてないしー」

「そうなの?なんだか悪いわね」


エレノアは自分だけ飲むのは気が引けたが、しかし折角だからいただこうと思ってトランクケースを開けて、木のコップを取り出した。ここに来て最初に手作りしたコップには童話に出てくる魔女の箒の絵が彫られている。

姉妹は、あれ?と顔を見合わせた。

エレノアはコルクを開けて、コップに注いでどこかで聞いたティスティングをするために軽く注ぐ。それから、味と匂いを確認するためにコップに鼻を近づけて嗅いでからから飲む。


・・・まぁはたしてこれが大人にとって美味しい代物なのかどうかはともかくとして子供にも十分飲めそうな親しみやすい味ではあるようだ。

 エレノアは一つ頷いてから姉妹に言った。

「・・・本当にいいの?」

姉妹は目を真ん丸くした表情そのままに頷いた。そして、レベッカは木の実を一つまみして口に入れた。

「・・・甘い!」

レベッカの頭が混雑した。エレノアが出した果物の砂糖漬けは母の滋養のために奮発して買ったもので、これはその余り物である。

 レベッカは砂糖を中和するための何かを所望したが、生憎パンはあげパンである。というか純粋に水分が欲しい。

「・・・み、水ってどこ?」

「水差しならトランクの中に」

トランクから水差しを引っ張り出すレベッカ。包み紙を解いて水をそそぐ。もちろん中は空っぽ。

「ないじゃん!」

「そりゃあ、まぁ・・・」

エレノアは日用品は皆トランクに詰めた。あたりを見渡して気がついた。

「あ、でも花瓶のなかに、水が入ってるかも?」

「か、花瓶?」

「うん。酒瓶に花を詰めたの」

変な趣味あるな、こいつとレベッカはエレノアに対して思った。

「・・・どこにあるの」

「返して小銭にした」

「じゃあないんじゃん!」


いよいよ激しく地団駄を踏んで悶絶しだしたレベッカ。家が揺れてぽろぽろと粒がふってきたので、エレノアはコップにお酒を入れてレベッカに差し出した。

レベッカは、受け取る前、一瞬躊躇したが、脳が沸騰しだしたのでそのまま分捕って一気に飲み干した。


「かんぱーっ!」


レベッカは幸せな気持ちになった。そして続けてもう一杯!

とエレノアにコップを差し出したので、エレノアは言われるがままに瓶を傾けて注いだ。

時々、おつまみを食べながら、レベッカはエンドレスにその動作を繰り返して、

レベッカはすっかりぐでんぐでんに酔っ払った。

いや、お酒自体はさして強くもないのだが、何しろ間を空けずに飲んだために悪酔いをしてしまった。


「^^^^^^――――!ooo~~~」


そしてレベッカは外で物を吐いた。

「あーあ、もったいない・・・」

ブランコに乗ってゆらゆらゆれるイリーナ。

「だからお酒なんてやめたほうがいいよ、って最初に言ったのに。私たちは元々お酒に縁のない家系なんだってば」

エレノアは苦しそうに放出をしているレベッカの背をさすっていた。

「ううう、め、面目ない・・・」

とレベッカは袖で口をふき取る。エレノアは井戸から汲んできた水の入ったコップをレベッカに渡した。レベッカはそっと受け取るとゆっくりと飲んだ。

レベッカはエレノアに手を携えてもらいながら近くブランコの近くにある切り株のベンチに一緒に腰を下ろした。レベッカはため息をついて、切り株を撫でる。

切り株には布が敷かれていていた


「・・・ありがとう、あんたはいい人だね」

「ううん。」

「これもあんたが作ったの?」

「うん。切り株だったのを加工してすわれるようにしたの」

ふふふとレベッカは微笑んだ。

「あんた、やっぱり変わってるね」


エレノアは困った顔で答えた。

「そうかな?」

「うん。薬を持ってたり、離れの小屋に住んでたり。・・・そこに綺麗な庭を造ったり。」

エレノアは庭を見て話した。

「・・・別に、この庭はただお母さんを喜ばせたくて造っただけだから」

「そうなの?」

「・・・ま、まぁ、ちょっと趣味もはいってるけどねっ」

時々手を入れる庭は「小島」をテーマに作っていて、エレノアはこの小島を希望の岬と呼んでいた。希望の岬の周りは小川が流れていて、桟橋である板を架けなければ通る事はできない。小島は低い垣根で仕切られていている。小島に入るときは門の屋根に釣り糸で釣られている鈴を鳴らす。家までの道は花で彩られていて、途中で二又になっている。そのまま行けば家に行って、

もう一方の道はこのブランコと切り株につながっている・・・。

 

「この庭は全部、あなたのお母さんのために一人で造ったの?」

「・・・うん。」

「あなたのお母さんは喜んでた?」

「多分喜んでた、と思う。」

「そう・・・」

「でも、お母さんもういないから、この庭も壊さなきゃいけないの」

エレノアは腰を折って、月の影にある花を撫でた。


続けて投稿します。

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