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平屋の前にあるには一枚のゲラ紙が貼られてある。

ゲラ紙には黒インクで工場の規則が大まかに書かれていた。

週一度にある集会で常に工員の監督役であるハルトマンが朝礼台のうえで音読される。

その内容は、非常に厳格な物で特に始業、再開時間については正確に設定されていた。

しかも、内容を脳みその隅々にまで刻みつけるために単純作業に疲れてぼうっとしている

時に、集会は開かれるのである。そして実際その効果はてきめんであり、

女工たちは休みの日でも規則正しく眼を覚まし、サイレンが聞こえると突然肩を震わせ、

あさっての方向に顔を向け、都市の黒煙を見ると工場の噴かすエンジンの重低音が体の心

を揺らすのである。

そしてエレノアたち三人は、女工たちの会社への従順の再確認のための道具として集会に

突き出された。


・・・事務所の会議室で、燕尾服を着た大人の男たちに取り囲まれたエレノアたち。

ポニーテールの少女、レベッカ・オレンジルとその妹であるイリーナ・オレンジルの二人

は、普段、机に向かっているために近眼で、メガネをかけた男たちに向かって必死に三人

の正当性を訴えた。「私たちはちゃんと届出を出しました!」と。

しかし、工場の売り上げと稼働率ばかりかんがえている会計役の男、

・・・名前はバルトンと言っただろうか?以前どこかでエレノアはその名前を聞いたこと

があった。そう、メガネに天狗鼻のバルトン氏はハルトマンをちらりと見て、ハルトマンが肩をすくめる様子を見て、冷たく言い放った。

「口を慎みたまえ。レベッカ・オレンジル君。君の届出は当事務所では一枚も受け取っていないし、口頭でも聞いていない。申請がない限り、たとえ一分たりとも遅刻などあってはならんことなのだ」

レベッカは叫んだ。

「でも!ちゃんと言ったんです!私・・・」

レベッカの言葉にハルトマンが鞭を叩いて怒鳴った。

「だまれ小娘!」

バルトンが咳払いをすると、ハルトマンは鞭をまとめて後ろ手に隠した。

バルトンは書面に顔を向けて物を書き終え、ハルトマンにわたす。

そして会計士は言った。

「君たちの処分は追って連絡する。今日のところは帰りたまえ。」

そして、翌日の朝に集会が開かれ、朝礼台の上でハルトマンは昨日渡された原稿を一文たちとももらさずにきっちりと読み上げた。

「・・・レベッカ・オレンジル!イリーナ・オレンジル!そしてエレノア・アングレカム!以上三名を永久降格処分とする!」

女工たちがざわめいた。ここの工場は実力によって決められており、成果によって与えられる給与も変わった。指導官クラスのものは、当時の低い階級のものにとっては相当量の金額が与えられた。それは場合によっては地方の中流階級に匹敵するほどのものだった。

そして罰則による違反での永久降格とはたとえこの先どんなに良いできのものが仕上がったとしても、二度と昇給できないこと告げる最悪にちかいの刑罰であった。

レベッカはうめき声を上げながら、その場に崩れ落ちた。

イリーナは姉のそばに駆け寄ってその身を抱いた。

レベッカは顔を覆いながら呟いた。

「もう、おとうさんおかあさんに顔向けできない・・・、この先どうすればいいの・・・?」

しかしエレノアはこの処分に絶望するよりもつよい不快感を覚えていた。


そしてその夜、エレノアが工場の周りを歩いている時に工場の赤レンガの壁ごしにこんな会話を耳にした。

「話があるのです」

男の声だった。エレノアはその声に耳を傾けた。

「実は昨日、届出は提出されていたのです」

「なんだと?」

「しかし、こちらの都合でそれをお伝えする事ができませんでした」

「貴様、自分がした事が分かっているのか?」

「は、はい。しかし・・・重要な書類を整理していて・・・」

「・・・わかったもういい。この件については不問としておく。いまさら取り消しにすることはできない。今日のところはかえるがいい」

「はい・・・」

「明日の会議を楽しみにしておくんだな」


翌日、三人の降格処分取り消しの連絡が掲示板に貼られたが、エレノアがそれを読むことはなかった。


突然ですが次回急展開。

やはり週一じゃだめかなぁ?

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