水溜りの過去
ある雨が多い日のこと
僕はとても憂鬱だった
といっても
毎日憂鬱な日々だけれど
僕は皆から軽蔑され
ひとりだ
水溜りに石を投げてやる
さらに踏み付ける
こんな僕を産んだ人を一生僕は恨むだろう
なんて
産んだ人など見たことない
ましてや育てた人も知らない
そう、僕の親は交通事故にあった
もうこの世にいないのだ
その出来事は僕が物心つく前に起こった
だから僕は何も知らない
全て叔母や叔父から聞かされた
「もう戻って来ないんだよ」と。
親がいない。それだけで皆に変な目で見られる
そんなのはもう散々だ
なんて雨の日はどうもマイナス思考になる
僕の家の1本行ったところに叔母や叔父は住んでいるので
ご飯などは用意してくれる
それ以外は自由だ
水溜りがピチャと音を立てる
なんか水溜りに自分じゃない誰かが映ったような気がしたが自分の目が霞んだだけと思い、
気にせず家に着いた
家に着いて早々背負っていたカバンを投げ
風呂に入った
叔母が用意してくれたご飯を口に入れながら
いつものようにテレビを見る
いつものように10時に寝る
そんないつもの日常だった
悪夢のような夢を見た
僕にとてもよく似ている赤ん坊を叔父と叔母に預けている若い母親と父親
その若い母親と父親は2人で車に乗り笑顔を見せていた
デートのようだ
その2人が乗った車は元気よくエンジンが鳴っている
だんだんとスピードにのっていき
車がその場所からだんだんと遠ざかっていった
2人は買い物に行く予定らしく
車通りの多い道を行った
その時だった
中央分離帯から飛び出した車がその2人の乗った車に衝突したのだ
こっちもスピードを出していたので向こうは軽傷で済んだが
その2人は重傷だったのだ
少しした後
叔父と叔母が病院に向かい
医師から結果が告げられて
音も立たず人の目から水滴のようなものが落ちていた
それはきっと涙だろう
その途中で夢は切れた
僕は3時に目が覚めた
いつもは夢を見ないのになと。
僕の目から何か落ちた
水だった
涙だった
よくわからない感情に僕も驚いた
その後も寝付けなかった
だから寝不足だった
次の日の朝がきた
そうだ
今日は父親と母親が亡くなった日だった
だからといって
僕は何も思い入れもないけれど
今日も外に出た
今日も雨は泣き止まなかった
特にすることもなくぶらぶらと。
水溜りをまた見つけた
今度は鮮明に見えた
今の僕の姿じゃない
これは小さい頃の僕だ
この人達は...
夢で見た母親と父親だ
きっと僕の母親と父親だったのだろうか
僕の頬を伝って涙が落ちて光る
母親と父親の優しい言葉だ...
「あなたはいつか誰かを好きになって
大人になって私達を忘れていって...。
でも私達はあなたを一生忘れられないと思う...。
でもこれだけは忘れないで。精一杯残された人生を生きること」
何処からかそんな声が聞こえてきたような気がする
水溜りをずっと見ていた僕は上を向き
目を閉じて深く息を吸い込む
空に光が差し込んできた
知らなくていいなんて嘘
勝手に自分で自分を苦しめてた
本当は苦しかった
誰にいなくて寂しかった
この日の温もりが誰かの温もりな気がした
僕を優しく包み込む
一滴の水滴が僕の頭上に落ちてきた
誰かの涙が落ちてきた気がした
母親と父親の分も僕は精一杯生きていくよ
そう僕は母親と父親の亡くなった今日
何年間も興味のなかった今日
誓った
会ったことは覚えてないけど
きっと見守っていてくれるよね
初投稿です。
なのでとてもとても短いです。
暮空と申します。
アドバイスや意見など良ければ
お願いします。