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小さな白と幼き白の物語  作者: 森護人
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レクチャー2 <序章>

大変遅くなりました、久々の更新です。

楽しんでお読みいたたければ幸いです

「はぁ~~~~~~っ」


主様の部屋から退出し、トボトボと廊下を歩くぼく。

先ほど、主様本人より今日からミーと一緒に寝るよう命令されたぼくは、ただただ重いため息を吐き続けることしかできなかった。


(なんで、ネズミの一種であるぼくが、子猫とはいえ、猫であることには変わりないミーと一緒に寝ないといけないんだろう・・・。

夜啼きをたった一日しなかっただけとはいえ、逆に今日や明日には夜啼きをするかもしれないじゃないか。いや、その前にぼくは咬み殺されているかも・・・。)


ぼく自身の身が今とんでもない危機に陥っていると言ってもやぶさかではない現状にただただ頭を抱えることしかできない。

いや、そもそもミーの修行をするということ自体が、自身の身を危険に晒していると言っても過言ではないんだけど。


知らずにまた、ため息を吐こうとしたその際に、一瞬背筋にくる悪寒を感知する。

すぐさま体が壁際に向かって即ダッシュし、その場から緊急回避すると、ぼくが今さっきいた場所に、ベシンッと大きな獣の手が床を踏みつけていた。


「チッ、避けやがったか。」


「・・・。」


軽い舌打ちの音と、けれどどこか楽しそうな声音。茶色い三毛猫の彼は自分の手元を舌で舐めると、ぼくの方を見て口元をニヤッと笑った。


「なかなかの反応じゃねーか。足音は立てないようには注意したつもりなんだがな~」


「・・・。」


「おい、返答はなしかよ?俺からわざわざ話しかけてやってんだぜ?」


「・・・。どういうつもりですか。李さん。」


目の前にいるこの猫こそ、猫たちの「特攻隊」を束ねるかしらりーである。


どこにでもいる三毛猫のように見えるが、殺戮性は他の猫たちに比べてとても秀でている。

また、カリスマ性も突出しているため、他の猫たちにとって「ワイルドである」ということで、もっぱら憧れの的でもある。

弱いものには眼は引かないそうなのだけど、なぜか弱小種族であるはずのぼくには度々このように、ちょっかいを出してくる。


「あん?なにがだよ。」


「仲間内での暴力、及び殺生は禁止のはずですが。」


「はっ、こんなのは殺生って言わねーだろ。ましてや、俺としては後輩にちーとばかし活を入れに来ただけだって。

あぁ、お前にとっては、俺の活は死にかけるようなもんか。ワリーワリー。」


「・・・・。」


(活どころか、間違いなく「狩り」をする気配でしたけどね。)


目の前でケラケラと笑って言う天敵を目に捉えながら、臨戦態勢を整える。

この獣は、いつ、どういったタイミングで仕掛けてくるかわからない。気まぐれな猫は、いつ本気になるかはぼく自身にもわからないからだ。


その様子に、相手も目を細めて威圧的に言う。


「んだ?ヤルってのか?」


目の前の相手も、臨戦態勢に入ろうとした・・・その時


「へぇ~、何をやるの?」


突然入り込んできた声に、ぼくと相手は同時に、一瞬で体が硬直するのを感じた。


存在を主張するとように、ゆっくりと、でもしっかりとした足取りで、その人は近づいてくる。

顔は、前髪で見えないけれど・・・・。


「妙な気配がこっちの方でしたから、ちょっと覗きにきたんだけど。」


その人の声を聞きながら、ぼくと、目の前の猫はお互いに顔色が徐々に悪くなるのを見ていた。ぼくなんて、背中に冷や汗が吹き出ているのが分かるぐらい・・。


「そしたら、お前たちがいたんだけど。

なにを、しようとしてたのかな。」


声量は、普段通りで、別段声を張り上げているわけでもないのに、妙に声が大きく、はっきりと聞こえる。一歩一歩近づいてくると同時に、心臓の音も均しく大きくなっていく気がした。



「まさかだけど。」


「ここで、「仲間内での決闘」でも、しようとしてたのかしら?」


「ねぇ。どうなの? 李? チーザ?」



口調は優しい・・・けど、見上げるそこには・・・


鬼がいた。


ぼくが見上げる先を見つめ、氷のごとく固まっていると、後ろを向いたまま、李さんがどもりながらも言い訳を口にしている。何気に尻尾を見ると、お腹の方に回って小さく縮こまっていた。


「い、いや・・・その、ちょ、ちょっと、チーザと話したいことがあって」


「へぇ?その話したい内容って?」


「そ、それは」


「まさか・・・決闘?」


「い、いえいえっ!め、滅相もございませんですっ!!た、ただ、チーザにあの白猫のことはどうなったのかなーって気になって!それで、聞こうって思っていただけです!!」


「そう、李もあの子のこと気にかけていてくれたんだね。」


「は、はぃぃ」


(なんだよ、なら先にそう言って声かけてよ。っていうか、あんたさっきまで絶対ぼくを狩るつもりだったろうが、狩る気満々だったろうが!!)


心の中ではそう猛反論していたが、目の前の鬼が、ぼくが口を挟むことを一切許さなかった。


「でもね、李。

いくら、気になるって言っても独断で、一匹で、チーザの元に行くのは感心しないわね。

あんたの能力は買ってるけど、許可もなく、他の種族のもとに行くのは規則違反なんだよね。」


「は、はい。ご、ごめんなさい。ご主人様」


「まぁ、今回はみんなも利用する通路だったから、大目に見るけど。


次、同じようなことがあったら。


あたしにも考えがあるからね。」


ゆっくりと、身を屈めて李さんの頭を撫でると、ぼそっと呟く声が聞こえた



「あんたたちの行動は、逐一観察されているから ね。」



それは、一番ぼくたちにとって知りたくなかった内容だった・・・。


***


「いやー、李のあの顔。一番見ものだったわね。どんだけ怖がってるのよって話よね。」


「・・・あれは、ふつーに怖がるレベルですよ。」


「そーぉ?」


ところ変わって、今は風呂場にぼくと先ほどのお・・・じゃない、主様と来ていた。

李さんはあの後、しばらく放心状態になってしまい、主様が頬をつついても一切反応を示すことがなかったため、そのまま廊下に放置された。


「ま、あんだけ釘を刺しといたんだから、しばらくはこっちの方にはちょっかいは出しに来れないでしょう。

あたしがこっちの様子を気にしてるってのは、あいつ自身も身に染みてわかっただろうし。

まぁ、またわからないようなら・・・いろいろ考えてあるしね~」


「主様、顔が悪人ズラになっています。」


「しっつれーね。誰が悪人面よ。それに、李にも釘は刺したけど、あんたも同罪よ。」


「えっ、な、なぜですかっ?!」


「なぜって、あんたもあいつの挑発にのって臨戦態勢とったでしょう。

あんな態度とれば、相手が仕掛けたって文句は言えないだろ?」


あまりにも理不尽な言い分に、さすがにそれはあんまりだと思って、主様に言う。


「で、でも、ぼくは常に気を張っていないと自分の身も危うくて」


「あんたの身では、一歩遅ければ命を落とす危険があるってことくらいはわかってるよ。」


「ならっ」


「けど、それは「外」の世界での話。

ここでは、殺意や害意がなければそのまま流せれる場所なんだよ。逆に、攻撃する姿勢があれば、相手だってそれに応じて狩りに来る。

あんた自身が、臨戦態勢にならずにいたなら、李が手を出す前に、タカが割り込んで止めに入っていたわよ。」


「あの場に、タカさんもいたんですか?」


「いたよ。まぁ、もっとも、あんたたちはあたしの殺気に当てられて、わかんなかったんでしょうけど。」


主様はそう言うと得意げに笑った。


ご閲覧、ありがとうございました!

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