First mission
愛する彼との出会いは、最悪だった。
その日、私は酷く酔っていた。
飛行機に3時間ほどゆられたのも原因だけど、実際は飲みすぎで。
飛行機に乗る前から飲んでたから、ゆうに5時間は飲み続けていた。
しかも、私は酒を飲むと喧嘩っぱやくなる。所詮絡み酒ってやつ。でも、酒自体には強いから飲み続けるから、たち悪いってみんなに言われる。
そのことを、あれほど後悔することになるとは、その時はもちろん思ってない。
さて、そんな私(機嫌最悪)に、その時声をかけてきたツワモノがいた。
まぁ、私の怪しい格好が原因だけど。
だって、相手にしてみれば、ほんの前まで戦争していた敵国の軍服を着てたからね。
あ、ちなみに平和条約が3日前に結ばれた。
普通に入国できたのが疑問。
だいじょうぶなの?この国??
まあ、私がいたトコロは3日前の敵国さんでした。
そのときの私は気づいてなかったけどね。だって、
酒飲んじゃってるし〜。
その上、目の前の人、軍人さんのしかもかなりお偉い格好だってことにもね。自分が前敵国にいるの認識出来てないからきづくわけない。
まー、アホの子です。
何はともあれ、その出会いが私の幸か不幸かわからない、二つ目の人生のはじまりだった。
☆☆☆☆☆
「お前、何をしている。スパイか?」
そんなことを急に言われ意識がふと、前の影に移った。
いつの間に立ってたんだろう。
うーん・・・・・
意識若干とんでいてわかんない。
そんな感じで、ボーッとしている私に、その影(男)は、おんなじ言葉をゆっくり繰り返す。
「お前、そこで何をしている。何が目的だ。」
正直言ってうるさい。ただ、座ってるだけなんですけど。何でごちゃごちゃ言わないといけないんだ。
イライラして、私はその影を睨んだ。
「お前、何か言いたそうだな。言ってみろ。」
高飛車な返答が・・・
うわ、ムカつくなこの人。
止める心の声を聞きつつも、腐っても軍人、売られた喧嘩は買いましょう。あれ?軍人って喧嘩してよかったのか?
「さっきから、ごっちゃごっちゃうるさい。何か御用でござりまするか?」
と、小馬鹿にしたように挑発してたちあがった。
つもりだったが、それは酔っ払いの定めか足元がふらついた。支離滅裂です。はい。
そのまま床とこんにちは♡するはずが、なぜか衝撃がこない。
不思議に思って目を開けると、綺麗なお顔とこんにちはだった。
私が発狂したのは言うまでもない。
☆☆☆☆☆☆☆
いやいやいや、何なんだこの無駄に綺麗な顔は。幻覚か、いや幻覚に違いない。私、酔っ払ってるのかしらん。
うん、酔っ払ってるなこれは、今変な奴いたし。
「おい、お前・・・・・」
困惑している私に、声がかけられた。
声の主はとても、困惑した顔でこちらを見ていた。
その表情をみて、私は一瞬で覚醒した。
「わっ・・・・すみません。今、どきますから。」
そう言って、離れようとする私に、体を支えてくれていた腕が絡まってくる。
最初はなんかの間違いだと思い、もがいて離れようとするが離してくれる気配はない。
ジトッとした目で見るがどこ吹く風のようす。
さりげなくおかしな所に手がある気がするんですが。
うん、確定。
こいつ、女たらしだな。オンナの敵っていう人種だ。
顔がイイからってふざけやがって。
NO、オンナの敵。Come on 心の友よ。
いや、今、私男装してるから、男好きの間違いか。
「お前、今、変な想像してるだろう。言っておくが俺は女一筋だ。男に手を出すほど飢えてはいない。」
頭上から降ってきた声に私は不満タラタラだ。
うるさいなぁ〜重要なこと考えてる最中だよ。
........あれ、今、女一筋とか言いってませんでしたか?というか、私の考えていたことを読まれてるではないか。こいつまさか.......
「お前、全部口に出てるぞ。考えどころか、全部がダダ漏れだ。」
そう言って、ニヤリとニヒルな笑みを浮かべるその表情をみて、思わず赤面してしまっていた。
オンナの敵に対して何たる失態。
だって、顔は超逸品級だよ。そんな国宝級が、超絶至近距離なんですが。
抱きかかえている体も、いい感じに鍛えられてるし。
なんか、いい匂いもするし。色気ダダ漏れで水溜りが出来そうなぐらいのいい男だよ。
そりゃ、少しは役得俺得みたいな??
頭から邪念を振り払うと、取り繕うように、私は、目前の彼に声をかけた。
目を伏せたまんまだけど。目が色気で焼ききれないようにね。
「ねぇ・・・・離してくれないかな。名前も知らない人とのこの状況はいただけないよ。」
「倒れてきたのはお前だろ。第一、名前を教えればいいのか。」
思わず顔を上げて、彼の顔を見上げた。
はぁっ??何をおっしゃるんだこの人は。
私は、離してくれって暗にどころか、はっきりと言ったつもりだったのですが。
「名前を教えたらいいんだろ?それが礼儀だもんな。俺が悪かった。」
慌てる私をみて楽しそうに目を細める彼。
だから、色気がフェロモンがぁ〜。
「いや、そう言う意味じゃなくて......」
「俺の名前は、フィリップ・ゼノン・クラリス。さぁ、名前は教えたからな。何してもいいな。」
そう言って、真っ黒けっけな笑顔を浮かべて、強く抱きしめてくるフィリップ。
そのことに、免疫のない私はもう、恥ずかしさで死んでいしまいそうだ。
いや、その前に圧死する。
「お前の名前はなんて言うんだ。」
耳元に唇をあてて、そんなことを囁かれる。
頭がくらくらしてきて、何も考えられない。
フェロモン中毒か?酸欠か?
私は、抵抗することもなく、名前を教えてしまっていた。“本当の"名前をだ。
「エリザベスよ。........私の名前は、エリザベス。」
久しぶりに言う名前を噛み締めるようにつぶやく。
この名前を使ったのは10年ぶりぐらいだろうか。
きっと、彼にしか聞こえなかった。
そのぐらい、小さな声だった。
「........エリザベス。そうか、お前の名は、エリザベスと言うのか。」
彼にそうつぶやかれて、私は、はっと大きな失敗を犯したことに気づいた。
彼に、私の本名を、家族しか知らない名前を教えてしまった。やばい、これは、本当にやばい。
いろいろ、支障が出るレベルの問題じゃない。
そう、気づいてから私の頭はいつものように、いや、いつもの倍も回転し始めた。
よく考えてみる。ある意味の拷問っていうか、自白させられているよね私。
がっつり、言っちゃいけないこと言ったよね。
まずい。絶対的に、まずいぞ。
そして、そこで私は最悪なことに、さらに重要なことを思い出してしまった。
“フィリップ・ゼノン・クラリス"
確かに、彼は自分の名前をそう言った。
酔っ払っていて気づかなかったけど、クラリス家って言ったら、それって、確か.......
この国の皇太子様じゃね?
え、マジか。ワカラナイ。