序幕
プロローグですがネタバレ要素があります。
そういうのがあれな方は次の2話の日常からご覧ください。
◇◆◇◆◇
娘は何とか悪戦苦闘しながらイモを二つに割る。
「はいっ、お父さんの分」
少しだけ大きい方を私に差し出した。
「えっ? 父さんはいいよ。全部お前が食べなさい」
私はそういうものの娘は手をひっこめる気がないようだ。
「ううん、お父さんと一緒に食べた方が美味しいから。はいっ」
「そうか、ありがとう。じゃあ父さんはこっちの小さい方を貰うよ」
私は娘から少しだけ小さい方のイモを貰うことにした。
――「日常」より――
「あたしね。怖かったんだぁ」
「なにがだい?」
「お父さんが私を置いていったまま帰って来ないんじゃないかって」
「そんなわけないだろう」
「うん、わかってる。わかってるけど一瞬だけ考えちゃったんだ。あたし、今動けないし。もしお父さんに要らない子だって思われて置いていかれたらどうしようって。
そしたら胸がギューって苦しくなって、悲しくって悲しくって怖くなったの。
でもっ、お父さんはちゃんと帰ってきたからもう大丈夫だよっ」
私は黙って娘を抱き締めた。娘も抱き返してくる。
――「異変」より――
「なんで、なんで? どうなってるの? あたしの体どうなってるの?」
娘はそれでもなおスプーンを拾い上げようとするが掴みきれない。
もうそこまで体力がなくなっているのか……。
私にも一瞬戦慄が走った。
「やだ、こわい。こわいよぉ」
娘の感じる恐怖は私の比ではない。
私はすぐに娘を抱きしめる。
――「旅立」より――
「いつもいつも、お父さんはあたしに勇気をくれるんだ。だから、今日はちょっとだけ返すね」
そういうと、娘はわずかに私を抱く力を込める。
そうか、抱きしめられているのは私なのか……
「お父さん、……大好きだよ」
「う、……ぐっ」
言葉を返したかったが、口を開くと嗚咽が漏れそうだった私は娘を抱き寄せて声を殺して泣いた。せめて娘に泣き顔だけは見せたくなかった。
私もね、私もお前の事が大好きなんだよ。
――「勇気」より――
『……今度生まれ変わったらお父さんのお嫁さんになりたいな。……いや、やっぱりまた、娘がいいな。
……またね』
娘の声が途切れると風の精霊は姿を消した。
娘の寝顔は、うっすらと微笑みを湛えている。
――「花の冠と冒険、そして幕引き」より――
◇◆◇◆◇
ある世界での娘と私の足跡をこの世界に残す。
……そして、また――