3個目:濃縮だけな異世界体験
前回:彼の家が北欧神話の世界になってました。というわけで異世界に行きました。
今回は長いのでダイジェスト版です。適当です。
もったいない。この話だけで長編かけますよ?
皆さん、私は今、世界樹ユグドラシルの根本にいます。
「で、君のアテは何処にいるのさ?」
彼は薄く笑って、肩をすくめた。
「アスガルド。この木の真ん中」
私は思わず傍らの木を見上げた。
どうやって昇っていけばいいでしょう?
「ああ、言い忘れたけど、この木の周りには大蛇が眠ってるから」
そう言うことは先に言え。あれですか。ここはお約束ですか。
「君が知らないとは意外だな。ミズガルズオルムぐらい、知ってそうなのに」
ミズガルズオルム? あの自分の尾っぽ咥えてなんかラブリーな。
「そうだよ」
この木の周りでしたっけ? あれは正確には分け分かんないとこにいたようなー。
「ラグナロクまで起きないだろうからお約束はないと思いたい」
ヴァルキリーがー。襲撃ですかー。
ロキだ。
フェンリルとかもいるの?
「何でそんな期待に満ちた眼をしてるかな?」
だって本物ですよ? 滅多にない機会なんですよ。ミーハーになるってものでしょう!
「ははは。歪んでるけどね」
どっちがかな?
「この世界」
ぴしっ
「どういう事ですそこの彼」
「言わなかった? 僕らの世界と、この世界を無理矢理つなげた存在が居るって」
つまり?
「似て、非なる。向こうの能力反則だね」
君がそれを言いますか。あー、なんかいろいろ否定された気分ですよ?
「ともかく行こうか。ウルドの泉から伸びている根からアスガルドにはいけるから」
鷹の襲撃がー。
「フレースヴェルグ。何でこんなところに」
どうでも良いから早く何とかしなさいそこの彼。
「わかった」
そう言うと彼は何かを取り出し、鷹と話し始めた。
「さて皆さん」
一人と一羽しかいません。
「衣服や、毛、特に羽毛に汚れが染みついてどうにもならない! そんな時ありませんか?」
商売人の口調だー。利ざやで稼いで大もうけ。取り出したるはクリーナー。
なにやら売りつけ追っ払いました。
「待て!」
ワルキューレ! 戦乙女ヴァルキュリア! 凛々しいが、愛らしさの残る顔立ち。
美しい白銀の鎧を身に纏い、鋭い鎗を構え、こちらに向けています。
でも、そんなことはどうでも良いくらい可愛いんです。
だってちまっちゃいんですよ! 小さな白い羽がラブリーです! マスコットですかぬいぐるみですか!
ホッペなんてぷにぷにしてそうで突っつきたいくらいですよ!
「な、なんだお前・・・・・・」
あれ? 何で怯えてるんですか? 後退ってますヴァルキリー。
どうしてですか、そこの彼。
「君の顔がなんかやばい」
失礼な。私は可愛い物を愛でてるだけだと言うに。
「ふぇぇぇぇ。目ぇ血走ってるよう。鼻息あらいよう。こんなの勝てないよう」
めそめそするワルキューレ。ああ、可愛い。どう、こっちにおいで? 大丈夫。痛いのは最初だけだから……。ってうわぁ!
「なんか危ないことしそうだったから」
だからって叩かなくて良いでしょう。
彼はワルキュ−レを優しく宥めている。そんな趣味があるとは意外ですよ?
「君の目は1回変えるべきだね」
何ですかそれ。ていうか、手なずけてるし。しかも私を置いていきますか!
「彼女が怯えてるからね。紳士にしないと」
せめて淑女とー。
私は慌てて彼らを追いかけた。
とまぁ、イベント豊富でここまで来ました、アスガルド。目指すは一路ヴァルハラです。
気付けばわっちゃんがついてきてます嬉しいです。
「わっちゃん、て誰かな」
彼は黙って聞いてりゃいいです。
「もしかして私のことでしょうか」
わっちゃんがキョロキョロ辺りを見回してから聞いてきます。可愛いです。
「他に誰が居ますかワルキューレ。愛称わっちゃん」
「私にはウルドって名前があるんですが」
「可愛くないから却下で」
しくしく泣き出しました。ああ、素敵。愛らしい。
「ちょっと暴走気味だね」
察せ。ついてきなさいそこの彼。わっちゃんはお持ち帰り決定です。
ともあれ、わっちゃんを連れてきたのは正解です。
何せ地理に疎い私たちですから道案内が必要です。おかげで迷わず進めます。
「エインフェリアルになるおつもりですか」
わっちゃん声が沈んでます。なんか異様にイヤそうなんですが。
「安心して良い。誓ってそんなことはあり得ない」
「お持ち帰られるのか……」
「君の協力次第だね。罠にかけたら彼女に引き渡すから」
「判りました。こっちです」
何故即答なんです? お姉さん悲しいよ?
わっちゃんが非常に協力的になったおかげでついに来ましたヴァルハラです。
「はい、どうもどうもー」
「お邪魔しまーす」
わっちゃんはちょっと小さくなってます。ちゃんと挨拶しないとダメなんですよ? 彼のは軽すぎですが。
「で、何処に行くんですか」
オーディンの所ですよ、もちろん。そうでしょう、そこの彼。
「ミーミルの首のもとへ」
無茶言うな。ていうか何でこっち来たんですかそこの彼。
「ミーミルっ? 首って。誰なんですか、それ」
て、えええええ?わっちゃんなに言ってますか。心底不思議そうに言わないでー。
「ほら、歪んでる。歪みの元はミーミルの首のようだね」
それをどうにかすれば元に戻って帰れるんですか?
「一つ訂正。僕らはいつでも帰れる」
あれ? そうだっけ。
「第一、帰れなくなるなんて言ってない。君でさえ」
おや。そうでしたっけ。で、どうするんですかそこの彼。
「探す。どうでも良いけど、そのうち其処野さんになりそうだなぁ」