表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神々の遺伝子爆弾 ――「最後の審判」で選別された144,000人の魂が織りなす新創世記――  作者: 如月妙美


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/12

第5章:楽園の影 —— 争いと調和の間で

「見よ、人はわれわれのひとりのようになり、善悪を知る者となった」(創世記3章22節)

 仮想世界の人口が1万人を超えた頃、最初の大きな試練が訪れた。資源の分配を巡る対立が、二つの都市国家間で深刻化していたのだ。

 ニューエデンは技術革新を重視し、効率的な社会システムの構築を目指していた。一方、ハーモニアは自然との調和を重視し、伝統的な共同体生活を維持しようとしていた。

 問題は鉱物資源の採掘権だった。ニューエデンは高度な技術開発のために希少金属を必要とし、ハーモニアは環境保護の観点から採掘に反対していた。

 隆明は住人たちの議論を上空から見守っていた。双方の主張には理があり、簡単には解決できない複雑な問題だった。

「介入すべきだろうか?」隆明が玲子に相談する。

 玲子は慎重に答えた。「でも、それは彼らの学習の機会を奪うことになる。私たちは見守るべきよ」

「すべてのことについて、適当な時がある」(伝道の書3章1節)

 しかし、対立は激化の一途を辿った。ニューエデンの急進派が夜陰に乗じて採掘を強行し、ハーモニアの環境保護団体と衝突。初の死者が出る事態となった。

 玲子は住人の苦痛を直接感知し、涙を流した。「もう我慢できない...助けなければ」

「待って」隆明が制止する。「今介入すれば、彼らは永遠に僕たちに依存することになる」

 その時、予想外の展開が起こった。両都市の若い世代が立ち上がり、「調停委員会」を設立したのだ。彼らは144,000人の記憶に含まれる平和構築の知恵を活用し、創意工夫で対立解決を図り始めた。

 委員会のリーダーとなった青年エリアスは、こう宣言した:

「私たちは同じ空の下で生きる兄弟姉妹です。争うために創造されたのではなく、共に成長するためにここにいるのです」

「見よ、兄弟が和合して共におるのは、いかに麗しく楽しいことであろう」(詩篇133章1節)

 調停の結果、画期的な解決策が生まれた。採掘は環境に配慮した最新技術で行い、その利益は両都市で公平に分配する。さらに、自然保護区域を拡大し、持続可能な発展を目指すという合意が成立した。

 隆明と玲子は感動していた。住人たちが自らの知恵で問題を解決したのだ。

「彼らは僕たちが思っているよりもずっと賢い」隆明が感嘆する。

 玲子も微笑んだ。「144,000人の叡智が、確実に受け継がれているのね」

 しかし、この成功は新たな課題も提起した。住人たちの科学技術が急速に発展し、やがては旧世界と同じ危険な兵器を開発する可能性があった。

 ある日、ニューエデンの科学者が核分裂技術の基礎理論を発見した。それは平和利用の可能性と同時に、破壊兵器への応用も示唆していた。

「これはまずい」隆明が緊張する。「歴史は繰り返されるのか?」

 玲子は深刻な表情で答えた。「私たちの介入が必要かもしれない。でも、どこまで許されるの?」

「平和をつくり出す人たちは、さいわいである」(マタイによる福音書5章9節)

 二人は慎重に検討した結果、最小限の安全装置を仮想世界のシステムに組み込むことにした。大量破壊兵器の製造には技術的制約を加え、同時に平和利用技術の開発を支援する仕組みを作った。

 この決断は、創造主としての最初の大きな介入だった。住人の完全な自由を制限することになるが、文明の存続のためには必要な措置だった。

 夜、二人は仮想世界の星空の下で語り合った。

「僕たちは正しい選択をしたのだろうか?」隆明が問う。

 玲子が彼の手を握る。「完璧な答えはないと思う。でも、愛に基づく選択なら、神様は受け入れてくださるはず」

「愛は隣人に害を加えることはない。だから、愛は律法を全うするものである」(ローマ人への手紙13章10節)

 創造主としての責任の重さを実感しながら、二人は新たな段階へと進んでいく決意を固めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ