序章:終末の地と最後の希望
「見よ、わたしは新しい天と新しい地とを創造する。先のものは思い出されることもなく、心に上ることもない」(イザヤ書65章17節)
西暦2072年。人類が築き上げた文明は、まさに黙示録の預言通りに崩壊の淵に立っていた。連続する核紛争、生態系の壊滅的破綻、そして神の裁きのごとき疫病の蔓延——地球という名の楽園は、もはや人の子らが住むには過酷すぎる煉獄と化していた。
かつて80億を数えた人類は、今やわずか数千万の魂が点在するのみ。組織だった国家は瓦礫と化し、都市は死の静寂に包まれている。放射能の雨が降り注ぎ、海は毒に染まり、大地は呪われた如く何も育たない。
しかし、絶望の闇の中にも一筋の光があった。
世界各地に散らばる最後の科学者たちが、人類の叡智を救う壮大な計画を密かに進めていた。それは通称「神々の遺伝子爆弾」——選ばれし144,000人の遺伝子記憶を仮想空間に保存し、新たな創造を試みる前代未聞のプロジェクトだった。
「また、わたしは東から上る生ける神の印を持つもうひとりの御使が上って来るのを見た。彼は地と海とをそこなう権威を授かっている四人の御使にむかって、大声で叫んで言った、『わたしたちの神の僕たちの額に、わたしたちが印をしてしまうまでは、地と海と木とをそこなってはならない』」(黙示録7章2-3節)
そして今、この神の印を受けし者たちの記憶が、地下深くの最後の聖域で永遠の眠りについていた。




