表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

45/54

第45話 再会

「そのような話は聞いておらぬ」

「命令書がこちらに」


 宮廷兵の姿をした銃剣士の仲間が、あらかじめ用意した命令書を差し出す。ザファルから受け取った別の命令書に手を加えたものだ。

 守備兵は羊皮紙を受け取り、丹念に調べ始めた。


「どうも本物らしいが……」

「しかし、隊長殿から特に命令の変更は受けていない……」


 二人は小声で相談し、トビィたちのほうを向いた。


「委細を確認して参る。この場で少し待て」


 今にも歩き出そうとする護衛兵に向かって、銃剣士の一人が慌てて言った。


「急ぎの命令だ。そんないとまはない」

「急ぎの命令、だと?」


 守備兵の声には、反感と疑念の響きがあった。

 動きを止め、トビィたち五人をジロジロと眺める。 


「宮廷警護の……所属はどこだ?」


 トビィを含め、銃剣士団の4人はほとんど同時に視線を交わした。

 一瞬の視線の交叉で4人は意識を共有し、思考するよりも早く共有した意識に従い行動を起こす。

 4人は二人ずつに分かれ、守備兵に飛びかかった。


「な、何を……っ!」


 一人を気絶させ、大声を出そうとするもう一人の兵を床に押さえつける。


「トビィ」


 兵士を押さえつけていた一人が叫んだ。


「部屋の中に抜け道があるかもしれん。急げ! 絶対にミライカを逃がすな」


 トビィは反射的に頷き、両開きの扉に手をかけた。後ろから仲間の一人がやって来て、一緒に扉を押す。

 開いた扉から、トビィは室内に駆け込んだ。

 扉の奥は、さらにいくつかの部屋に分かれている。

 侍女の控えの小部屋、客人を迎える応接の間、身なりを整える衣裳室、次々と部屋と廊下を抜けていき、一番奥の扉にたどり着く。

 取っ手に手をかけると、予想に反して扉は簡単に開いた。

 何か考えるよりも早く、トビィは部屋の中に飛び込んだ。


 ※※※


 室内には青年貴族の装いをした細い人影があった。小柄で華奢な体つきをしており、黒く艶ややかな髪に囲われた顔は、驚くほど美しかった。

 生きることに倦んだような暗く翳った金色の瞳が、トビィたちのほうへ向けられる。

 瞬間、金色の瞳がわずかに驚愕を映し出し、軽く見開かれた。

 トビィは、信じられない思いでその姿を見つめた。

 目の前に立っているのは、既に大人として成熟しつつある19歳の青年だった。三年前のミカが持っていた、少女のような容貌に似合わぬ傲慢な雰囲気、それとは裏腹の見る者を惹きつけるいたいけさはなりを潜め、代わりに人を否応なく深みに引きずりこむような、蠱惑的な美しさを身にまとうようになっていた。


 あれから三年も経つのだ。

 変わっていて当たり前だ。


 そう頭ではわかっているのに、再会したミカが自分の記憶の中にある16歳の姿ではないことに、トビィは強い衝撃を受けた。

 そしてその強い胸の痛みとはまったく別に、初めて出会った目の前の青年に心を奪われ、目が離せなくなっていた。


 ミカも、にわかに自分の目が信じられないかのように、食い入るようにトビィの姿を見つめている。

 形のいい唇が開き、何か言葉を象ろうとした。

 だが声を放つ寸前、ミカはハッとした。

 トビィの顔から引き剥がすようにして強引に視線をそらし、隣りにいる銃剣士の男のほうを向く。

 その口から、感情のこもらない声が漏れた。


「公爵の銃剣士か」


 独り言のように呟いたあと、ミカは皮肉な笑いで口許を歪めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ