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第二章 破れた誓いと、黒い覚悟
婚約破棄の手紙を受け取ったその日。
父は怒り、母は涙を流してくれた。
「セルジュヴィア、あの男のことは忘れなさい。他にも良い令息はいるわ……」
しかし、私は静かに首を横に振る。
「いいえ、お母様。私は忘れません」
鏡に映る自分の顔を見つめた。
かつては優しく微笑んでいた碧い瞳が、今は硝子のように冷たく光っている。
「オリヴァー・ルネド・プレアリー……あなたが私を裏切り、私の名を踏みにじった。ならば、私はあなたをこの手で破滅へと導きましょう」
そう誓った夜、私は屋敷の地下にあるドラシェン家の隠し倉庫へと足を運んだ。
そこには百年以上も封印されていた『黒の魔導書』──禁忌の魔術を記した書物がある。
「──復讐の魔術、開眼」
私は血を捧げて魔導書に触れた。
瞬間、体中を黒い炎が駆け巡り、魂が引き裂かれるような痛みが走る。
だが私は笑った。
「ようこそ私の新たな力よ。あなたと共に私は悪役となる。そして、皇太子を地獄へと突き落とす」