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タイトル未定2024/08/05 22:11




 しばらく暁人さんと話し、食事を終えた私は、アパートに帰った。すっかり外は暗くなり、空には星が見えている。


 いつものように自分の部屋の階までたどり着いたとき、柊一さんの姿が見えた。


 彼も丁度今帰宅したばかりのようで、ポケットから鍵を取り出すところだった。こちらに気づいた彼は、私を見てふわりと微笑んだ。


「おかえり、遥さん」


「あ、ただいまです! 柊一さんも今帰られたんですか」


 私は彼に歩み寄りながらそう話しかける。それと同時に、柊一さんが何やら紙袋を持っていたことに気が付いた。確か、ファミレスではなかったはずだ。


 これを買うのが用事だったのだろうか。


「うん。同じタイミングだったね」


「暁人さんとデザート食べてました」


「あはは、そっかー」


 そう笑った彼が持つ白い紙袋。じろじろ見るつもりはなかったのだが、つい目に入ってしまった。


 中に薄い桃色の花びらが見えた。


……お花?


 柊一さん、お花を買ってきたんだ。


「いつもファミレスだから、今度は三人で美味しいご飯にでもいかない?」


 柊一さんは、すっと紙袋を体の後ろに持ち直して私にそう言った。その何気ない動作が、私に見られたくないものなのかもしれない、と察し、すぐに笑顔で答える。


「いいですね! そうしましょう。おにぎりあるところがいいですかね」


「あはは! 遥さんのおにぎりが一番だけどね」


 そう笑いながら、柊一さんが鍵を開ける。そして扉をあけながら、私に言った。


「仕事、一緒にしてくれて本当に感謝してるよ」


「いえいえとんでもないです!」


「遥さんみたいな人は貴重だからね。これからもよろしくね」


 そう言って小さく手を振ると、柊一さんは部屋の中へと入って行ってしまった。なんとなく閉じたドアをぼうっと眺めながら、私は暁人さんが言っていた言葉を思い出す。


 いじめを受けて凄く辛い日々を送っていたなんて……想像もつかない。


 今、彼がこんなに優しく明るく育ってくれて本当によかったと思う。できれば、食べるなんて辛い方法以外で働けたらいいのに、とは思うけれど。


「少しでも苦しんでほしくないな」


 私は呟いた。





 一人帰宅した柊一は、無言で持っていた紙袋を置いた。中から小さなブーケを取り出す。

 

 それを花瓶にいれると、部屋の隅にある小さなテーブルの上に飾った。


 そこには、一枚の写真が飾ってある。


 笑っている若い女性が映っていた。


「今回も無事終わったよ。食べる必要はない事件だったけど……あまりに怒りを感じて、やらかしそうになっちゃった」


 反省するように頭を搔く。ふと、その手が止まる。


「あの子……何も言ってないのに、感づいてたみたいだなあ。不思議な子」


 不安そうな顔で自分を止めたその時の表情が、柊一には他の誰かに見えた。


「君に似てるよ、真由」


 柊一は優しく微笑み、愛しそうに名を呼んだ。




こちら、シリーズ化の予定ですが、次エピソードの再開のめどが立っていないため、一度完結とさせて頂きます。

読んでくださりありがとうございました!

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