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本心

昼休み。お弁当を鞄から取り出しながら

今日はどこで食べようかと思案する。


前は陽斗と食べてたんだけど、いろいろと噂されるのが嫌で

最近ではほとんど一人で食べていた。


陽斗は「噂なんか気にするなよ」っていつも言うけど

そういうのも煩わしいし。






陽斗は、幼馴染の私の目から見てもカッコいいから。

180近い長身。スポーツ万能。街を歩いててスカウトされるなんてこともしょっちゅう。

そんな彼がモテないわけがなく、中等部の頃から、告白する女の子が後を絶たなかった。



「どうして彼女、作らないんだろ」


陽斗なら、選り取りみどりだと思うのに。

本人に言うと


「手のかかる幼馴染の世話で精一杯だからな」


なんて答えが返って来る。ま、陽斗なりの優しさだと分かってるけど。





事故以来、私を守らなくちゃと思ってるんだよね。

そんな義務感、持たなくていいのに。









屋上のドアを開けようとした私は、聞こえてきた声に思わずドアノブを回すのを躊躇った。


場所、変えなくちゃ・・・そう思った瞬間、自分の名前が聞こえてきて

つい、聞き耳を立ててしまった。






「島崎さんと付き合ってるの?」


「あいつは・・・・幼馴染だよ」


「じゃあ、どうして・・・・」



陽斗と・・・同じクラスの田口さん?

田口さんが陽斗のことを好きらしい・・・そんな噂を耳にしたことがある。

陽斗は「田口は、サッカー部のマネージャーだから」って言ってたけど。





「どうして、私じゃダメなの?」


「別に、お前がダメだって言ってるんじゃ・・・」


「だって、陽斗くん、誰とも付き合ってないって言ったじゃない。

 じゃあ、私じゃダメだってことでしょう?」



見えないけど・・・陽斗は唇をグッと噛み締めてるんだろうな。

幼馴染の表情が、手に取るように想像できた。




「お前だけじゃない。俺は・・・結菜を守ってやるってそう決めてるんだ」


「島崎さんを守る?それって、彼女を好きだってことだよね?」




違う!陽斗は義務感からそう思い込んでるだけ。

そんなの間違ってる!



勢いよくドアを開けると、中へと入っていく。



「私は、誰にも守ってもらう必要なんてないんだからっ」



「結菜?」「島崎さん!?」



驚いた陽斗と田口さんが同時に振り返る。



「陽斗は、事故で家族を失った私を可哀想に思ってるだけ。

 そんなの、間違ってるよ!」



「お前、本気で言ってるのか?」



「え?」




陽斗の顔色が変わる。こんな陽斗、見たことがなかった・・・。




「くそっ、勝手にしろっ!」



私を押し退けるようにして、陽斗はその場から走り去ってしまった。





「あなた・・・陽斗くんの気持ちに、本当に気づいてないの?」




田口さんの言葉が耳に響く。




「陽斗の・・・気持ち・・・・・?」





何に気づけって言うの?

陽斗は、いつだって優しくて、傍にいてくれて

でもそれは、家族と同じだって





・・・・・・そう思い込もうとしてたのは・・・・・私?








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