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幼馴染

「ホントにもう大丈夫なのか?」


「何回同じことを言わせるのよ。大丈夫だからこうして学校へ行くんでしょ?」



結局、熱がなかなか下がらなくて3日も学校を休んでしまったけれど。

先生は、あの後1度も様子を見に来ることはなかった。

でも、毎晩届くFAXが私を喜ばせた。

例え、A42枚にびっしり、その日の数学―先生の担当教科―の授業内容が書かれていて

「ちゃんと寝て、早く治せよ。」なんて一言が添えてあるだけだったとしても。




「ねぇ、陽斗。学校に着いたら数学以外のノート、見せてくれない?」


「なんで数学以外なんだよ。ああ、そっか、苦手な数学はパスってワケだな?」


「違うわよ。数学はバッチリだからいいの。」



確かに私の数学の成績は壊滅的で。

それをよく知ってる陽斗は私の答えに更に怪訝そうな顔になった。



「バッチリって、なんだよ・・・」



その時、後ろから嬉しそうに私の名前を呼ぶ声が響いた。




「おっ、結菜!熱、下がったんだな?」



先生の声を聞いただけで、こんなに嬉しいなんて。

それでも私は、努めて平静を装うとゆっくりと振り返った。



「荻原先生、おはようございます」



「おはよう」



先生は陽斗にも同じように微笑んだが、陽斗は「ああ」と呟いたきり

そっぽを向いてしまった。変な陽斗。




「聞こえたぜ、結菜。数学はバッチリなんだって?」


「えっ・・・あの、それはっ」



慌てる私を見て、先生が楽しそうに笑った。



「次のテストが楽しみだな」



「・・・・・意地悪ですね、先生」



そりゃ、FAXはすごく分かりやすかったけど、3日分だけで成績上がるワケないじゃないっ。

私の考えてることが分かったのか、先生が笑顔のまま付け加えた。



「分からないところがあったら、ちゃんと聞きに来いよ?」


「分からないところだらけだったら、どうします?」


「はは、分かるまで・・ちゃんと教えてやるよ」



その一瞬の間と、私を見つめる瞳にドキッとする。

先生は、出来の悪い生徒を指導してくれるって言ってるだけなのに。

なんでこんなにドキドキするんだろう。




横で私たちのやり取りを黙って聞いていた陽斗が

不機嫌そうに割り込んだ。




「そろそろ行かないと、遅刻するぜ?」


「あ、うん。そうだね。じゃ、先生・・・」


「ああ、後で教室でな」






結局、教室に着いてからも陽斗の不機嫌はそのままで。

でも、先生のことばかり気にしていた私は

そのうちに機嫌も直るだろうくらいにしか思っていなかった。






ただの幼馴染。

陽斗がそれ以外の感情を私に対して抱いてるなんて

この時は夢にも思っていなかったから。





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