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別れ

『興味があるものに対して、ワザとそっけない態度を取るってこと』

学校からの帰り道も、陽斗の言葉が頭から離れなかった。


そう・・・確かにそういう面があることを否定することはできない。

そして、何に対しても、どこか一歩下がってしまうことがあるのも分かってる。








もう2度と、大切なもの、大好きなものを失いたくなかったから。


必要以上に好きにならなければ、あんな想いをしなくていいはずだから。







私のことを、幼馴染の陽斗が心配してくれてるのも知ってる。

周りは、私たちが付き合ってるものだと思ってるらしいけど

陽斗は家族同然だから。

陽斗だって、私のことは妹の陽奈ちゃんと同じ扱いだし。

今更、恋愛感情なんて持てるわけがない。







「結菜ちゃん?」


玄関を開けると、奥からいつもどおりの優しい声がした。



「ええ。ただいま」


「お帰りなさい。遅かったのね。すぐにご飯でいいかしら?」


「あ・・・はい。何かお手伝いしましょうか?」


「ううん、大丈夫よ。すぐに出来るから、着替えてらっしゃい」



ニッコリ笑って戸棚からお皿を何枚か取り出す美奈子おばさんにお礼を言うと

私は自分の部屋のある2階に上がって行った。






「ただいま」


部屋に入ると、机の上の写真に声を掛ける。


「今日ね、担任の原口先生の代わりが来たんだよ。それがね・・・」


今日あったことを、心の中で報告する。

あの日まで、学校から帰って来ると毎日していたように。





母さんは、きっと荻原センセイに興味を持っただろうな。

父さんは、母さんの横で全然関心ないって顔で、知らん顔するに違いない。

特にイケメンの若い先生だなんて言ったら、無関心を装うに違ってる。


早紀は・・・早紀はなんて言うかなぁ。

羨ましい?それとも会って見たい・・・かな。

私と同じ高校に通うんだって言ってたから

うちのクラスまで覗きに来たかもしれないな。













あの日―――私は、出発間際になって少し熱が出て

楽しみにしていた旅行を諦めて、一人留守番をすることになって。




「本当に一人で大丈夫?旅行、伸ばそうか?」


「ヤダなぁ、私だってもう春から高校生なのよ?留守番くらいできるんだから」


「そうだけど・・・もし、具合が悪くなったら・・・」


「大丈夫だって。もしもの時は、美奈子おばさんも、陽斗のお母さんも来てくれるって

 言ってたでしょ?」




・・・・そう言って、家族を送り出したのは私。

まさかそれが、最後の別れになるなんて、思いもせずに。












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