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芽生え

「荻原佳祐、25歳独身。血液型O型。他に何か聞きたいことあるか?」


さっきの呼び捨て男が自己紹介してる。

男子からは「なんだよー。男かよ」なんて呟きが聞こえてくるけど

イケメン教師の登場に、案の定女子たちが色めきたっていた。



「はいはいはいっ!先生、身長何センチですか?」


「彼女、いますか!?」


「好みのタイプはっ?」





「はは、みんな元気がいいな。よし、ひとつずつ答えるから待ってろよ」


爽やかな笑顔を向けられたコたちが、早くもポーっとなってるのを見て

なんでムッとしてるんだろ。私には関係ないのに。




なんとも形容のし難い気持ちを持て余した私は、窓の外に目を移した。

『荻原センセイ』を皆が見つめている中、その行動が余計に彼の目を引くなんて

考えもせずに。





「結菜・・俺の好みのタイプなんかに興味ないかもしれないが

 もうちょっと我慢してくれるか?」



「なっ!」



いきなりの名指し、しかも呼び捨てに、クラス中が騒然となる。



「なんで!?島崎さんと荻原先生って知り合いなの?」


「『結菜』だって~!いいなぁ、私も名前で呼ばれたい~」




大体、クラスメイトだって幼馴染の陽斗以外、私を名前で呼んだりしないのに。

言い訳の言葉すら出てこない私に荻原センセイがニヤッと笑いかけると

皆に説明を始めた。



「今朝、職員室まで案内してもらったんだよ」


「なーんだ。そうなんだ~」


明らかにホッとするコやしたり顔でこちらをチラっと振り返るコたちの視線が

私から離れて行く事にホッとしたが、クラスで1番の美人の優華の次の一言が

どうしてこんなに気になるんだろう。




「じゃあ、先生は女子のことは名前で呼ぶんですか?」



「別に、女子だけじゃないけどな」


先生の言葉に男子が茶々を入れる。


「野郎に名前で呼ばれてもなぁ」


「はは、そりゃ、そうだよな。どっちでも良いぜ。お前は・・・」


「石田陽斗。俺もどっちでもいいぜ」


「ハルトってカッコいいな。お前のことは名前で呼ばせてもらうかな」



先生と陽斗のやり取りをジリジリしながら見ていた優華が会話に割り込む。



「先生!私のことも名前で呼んでくださいね?」


「ああ、えっと・・・」


「優華。立花優華です」


「よし、覚えたぜ。優華だな。」



その後は、チャイムが鳴るまで名前の申告が続いた。














「なかなか面白そうなヤツじゃん」


「・・・・・そう?」


まるで関心がない・・・そういうつもりで答えたのに

親同士が仲良しで、赤ん坊、いや、生まれる前からの付き合いの陽斗は

『俺の目は誤魔化せないぜ』と言わんばかりにニヤニヤしていた。



・・・・すっごく癇に障るんだけど。




「なによっ?」


ムッとして陽斗を睨むと、相手は怯むどころか、笑いを堪えていた。


「結菜ってさ、いつもそうだよな」


「そうって?」


「興味があるものに対して、ワザとそっけない態度を取るってこと」



私が?あの先生に興味がある?



「そんなハズ、ないじゃない」



自分自身にも言い聞かせるように言った言葉は

まるで説得力に欠けていることに、私自身気づいていた。

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