ニュース
「ねぇ、聞いた?」
「聞いた、聞いた!ショックだよね~!」
なんだろう、朝から騒がしいな。
久しぶりに陽斗と一緒に登校した朝
教室に着くと、なんだかいつもと様子が違っていて。
自分の席に座って、鞄の中身を取り出していた私の耳に
信じられないニュースが飛び込んできた。
「荻原先生、ペルーに行っちゃうんだって!」
「向こうの、日本人学校に赴任が決まったらしいよ」
「早ければ3月の頭にいなくなっちゃうって本当!?」
荻原先生が・・・・・いなくなる?
目の前が真っ暗になるというのは
こういうことを言うんだって、分かった気がした。
陽斗が、私の手をギュッと握ってくれたけど
なんだかそれすら他人事というか
別の世界の出来事を見てる・・・そんな感じで。
「大丈夫か、結菜?顔が真っ青だぜ?」
「・・・・・真っ青?おかしいな。風邪でも引いたかな」
心配そうな陽斗に、なんとか笑ってみせる。
「ごめん・・・私、やっぱり保健室行ってくる」
「付いて行ってやろうか?」
「ううん、いい。もう授業始まっちゃうし・・・
・・・先生に、伝えておいて」
「分かった」
何か言いたそうだったけど、それ以上何も言わない陽斗を置いて
私は教室を出て行った。
一人にならないと。
涙が勝手に目から溢れ出してしまう前に。
誰もいないところへ、行ってしまいたかった。